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試験とバカたちの狂演

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特別編入ならぬ入学試験を受ける羽目になったわ。
早めに学園に通える幸運は吝かではないけれど、リスクもあるはずよ、妬みから不正だと騒ぐ輩は絶対出てくると思うわ。

だったら通常の入学のほうが絶対良い、なのでわざと間違える方向で行くわ。
バカ王子に変な恩を押し付けられるのも嫌だもの。

もっとも試験が簡単とも思えないし、普通に受けても満点は無理でしょうね。
そんなわけで本日は学園内の会議室をお借りして臨時試験を受けていますよ。

基礎問題の中に意地悪な引っ掛けが何個かあったわ。
とりあえず引っ掛けに乗って適当に間違えておきましょう、配慮して頂いた学園長には申し訳ないけれどね。
心の平穏をとらせていただきます。



試験を終えて屋敷へ戻ると何故か馬鹿王子が玄関ホールで待っていた……、胡散臭い笑顔がきょうも気持ち悪い。
当たり障りなく挨拶をして自室に逃げようと思ったのですが引き止めてきます。

腕を掴まれたので悲鳴をあげて彼の手を叩き落としてしまいましたよ。
嫌いな異性に触れられれば誰だってそうでしょう?ほんとうに気持ち悪い!毛虫と同等で嫌悪します。

「そ、そんな悲鳴をあげなくても」
腕を摩りながらバカ王子は……もうバカと省略します敬称も不要です、このバカ!

「未婚女子の身体にいきなり触れるなんて見損ないましたわ!」
全身全霊で拒否の意を表せばさすがのバカも少々は懲りるでしょう。懲りない?やっぱりバカですね。

ヘラヘラと謝罪することもなく私を見つめ「なつかない猫を手なずけるみたいで面白い」と言いやがりましたわ。
誰か猟銃を暴発させてコイツの脳漿を飛ばしてくれないかしら?

嫌悪の表情を剝き出しにしてもこのバカには通じないのです。
次代の王はこれで良いのでしょうか。滅ぶ前に亡命しようかしら?

東の帝国が良いかもしれない、そんな計画を立てていればまたもバカが触れようとしてきます。
さすがに我が家の執事と侍女が仲裁に入りました。

屋敷には母と姉がいるはずなのにどうして来ないの!?
私は堪らず護衛騎士を呼びつけました、すると王子に対して不敬だとのたまうバカです。
不敬?意味が解って使っているのでしょうか、敬う対象でないアナタは論外なのですよ。

「敬う相手ではないと判断したまでです、おわかりですか?殿下の行為は婦女子を傷つけているのです、我が姉の婚約者としての立場をどう考えてらっしゃるのですか。こんな愚行をされるなんて軽蔑します」

「う、それは……しかし私の心はデボラにはないのだ!」
「それ以上を言うのならご退去願います。身の危険を感じます」

私の本気の怒りに、バカが漸く己の身の振りが悪評に繋がると察して悔しそうに帰って行った。
私は緊張から解放されると床に頽れてしまい、従者らに心配をかけてしまったわ。



ことが済んでから母たちがノコノコと現れました、今更なにを……。
二人の表情を察するに下品なことを考えているのでしょう。

姉はバカを押し付ける為に2年飛び入学を企てたのだと、この時確証しました。
そして、私とバカをくっつけたい母、利害の一致した彼女らは私の敵になったのです。
おそらく父も……。

身の毛がよだつとはこういうことなのでしょう。
13歳にしてこんな感情をおぼえるなんて、だけど負けませんから。
最期まで抗ってみせます!


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