完結 役立たずと言われダンジョンに捨てられたが好都合

音爽(ネソウ)

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幸運の導きか

小声で「今よ」とアナベラが言う、二人は虫を挟むようにソウッと近づく。小さな虫とはいえ魔物の類である油断するわけにはいかない、僅かに痺れるような毒を吐くのだ。

ついついと手で合図を送るアナベラは『3・2・1』とカウントダウンをした。
「それ!」
「おおう!」
見事に捕まえた二人は大喜びだ、アナベラは両手に収まる程度の虫をなるべく刺激しないように「ごめんね」と囁く。虫はヒラヒラと数度翅をパタパタとして腹部から針を出す。

「痛っ!」
「だ、大丈夫かい?私が変わろうか」
「いいえ、そこまで深刻じゃないわ。毒性は少ないと言われるし」
痺れ毒を少しだけ撒いた虫はそれきり動かない、獲物が痺れて痙攣するのを待っているのだろう。それから少しばかり光を明滅させる。

「なんて綺麗なの、貴方は確かに尊いわ。姿を見せてくれてありがとう」
彼女は小さな羽虫に礼を述べるとふわりと手の平を開けてしまうのだ。せっかく捕まえたタマムシをどうして解き放ってしまうのかと王子は頭を傾ぐ。

「フフッ良いのよ、あの子は私の血の味を知ったわ。これで私だけのタマムシになったの」
「そういうもの?」
「そうよ、それだけで良いの。ただの伝承でしかないけれど私は満足」
綺麗なクルゥタマムシは捕獲されて売り捌かれてしまうが、そんなことをするのは下衆だと彼女は言う。

「自由を奪われるは辛いもの、まぁそんな事を言ったら魔物相手に魔法で屠っているのはなんなのかってね」
そんな矛盾を自虐していう彼女は肩を竦める。
「生きていくためならば仕方ないよ、それにダンジョンの魔物はいくらで誕生するだろう?」
「そうだった、そうよね。枯れることはないのよね」
ふふふっと笑う彼女は年相応の顔をする、大人びてはいてもやはりまだ少女なのである。

「キミはいくつになったの?大人びてはいるがまだ未成年だろう?」
「え、そうね。まだ17歳だもの」
「17!?そ、そうか大分……」
「なによ!老け顔だとでも言いたいわけ?」
そう言ってにじり寄る彼女は少々膨れている、それを宥めて大人びているだけだと苦しい言い訳をするレリアルドであった。



「今日はありがとう、なかなか貴重な体験をしたわ」
微笑んで手を伸ばす彼女はやっと彼を友人として認めたようだ。擽ったいと思いながらそっと手を交わす二人だ。
「名前を教えて無かったわね、私はアナベラ、アナベラ・オジェランよ」
「んな!?なんだって!もう一度言ってくれないか!」
「え、アナベラだけど?」

思わぬ反応に混乱する彼女は「どうしちゃったの?」首を捻るばかりだ。









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