上 下
4 / 9

あざといモフモフ

しおりを挟む
助けた?狐は彼の周囲をグルグルと歩き回り獣なりに感謝をしているようだ。
「ただ巻き込まれただけだがな……」



朝から出鼻を挫かれたダライアスは狩は諦めて、薬草収集に精をだすことにした。
買い取りは安いが、売るだけが目的ではない。


香草として使う草もある、肉に良く合うゼマリの葉を集める。
「肉にこすりつけて焼くと美味いんだよなぁ、草のくせに解毒にもなるしな」


蹲って採集する横で狐がキュンキュン跳ねまわる、正直邪魔だと彼は苦い顔をした。

「おまえさぁ、助かったんだろ。自由にどっか行けよな。シッシッ!」
「キューン?」


疑問形で返されてもとダライアスは肩を竦める。なんとなくこちらの言葉を理解している様子。
ならば「どっか行け」というのもわかっているはずだ。



「魔獣を飼う気はないからな!お前よく見れば尻尾が3本じゃないか、魔獣丸出し!無理!ムーリ!」
「きゅ……きゅ~ん」


突き放す言葉に傷ついたのか、狐はションボリと耳と尻尾を垂れた。

「ぐぬ、……お前その仕草はずるくねぇか?俺が虐めてるみたいじゃないか!」
「く、くきゅ~ん……」


盛大に溜息を吐くダライアス。
「生き物は嫌いじゃないが世話をするのは好きではないんだ……諦めてくれ!」

彼はガバリと立ち上がると脱兎の如く小屋へと走りだした。
獣の足は速いが行先を知らなければ辿り着けまいとふんだのである。



だが、甘かった。

全速力で辿り着いて早々、背後から「キュン」という声がした。
ダライアスは酸欠になるほど走ったというのに、狐の魔獣はケロリとしてそこに佇んでいた。


「……ぜぇぜぇ……は、も……もう好きに……しろゲッホゲッホ!くそが!……ベッドに粗相したら追い出すからな!」
「きゅーん」


こうして無骨な男と狐のモフモフ生活が始まった。



しおりを挟む

処理中です...