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妹は姉の婚約者を……

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「待って!お願いお姉様!私に婚約者をアドニス様を譲っ……あ!」
「え?カメリア、今なんて?」

姉ルアナの背後で盛大にコケた妹がドタドタと転げたところだ、駆け寄ろうとして足が縺れたらしい。また自分のせいにされると思ったルアナは嫌そうな顔をした。

「ああ!カメリアちゃん!なんてことかしら、誰か誰か!手伝って頂戴、ルアナのせいで倒れてしまったわ!」
母親のペネロペがいつもの調子で姉を悪者に仕立てた、ルアナは唇を噛みしめてブルブルと震え拳を握った。非難を浴びるのは慣れたとはいえ許せないことだ。

侍女たちはルアナを撥ね退けてカメリアの元へ走り寄る、「私は何もしていないのに」そう呟くのだがその声を拾う者はどこにもいない。後に騒動を聞きつけた父親に小言を食らうのだ。

「どうしていつもカメリアを虐げるのだ!やはりあの女の血を受け継いだせいか!」
「……」

亡き母のことを持ち出してはルアナを糾弾するのだ、かつて結婚していたルアナの母ルイーゼを彼は酷く嫌っていた。所謂政略結婚である。彼女を産み1年と持たずに儚くなった。その後、愛した女性ペネロペと再婚してカメリアは生まれたのだ。

「なんとか言ったらどうだ!」
「何もありません、失礼します」
「ルアナ!」

姉のルアナはこうして家族に疎まれて生活してきたのだ。


***

「う、ううん……あぁ私は一体……」
「まあ!カメリアちゃん、良かったわぁ!お医者様がすぐに来ますからね!」
キャンキャンと犬のように叫ぶ母親の声に「煩いわ」と言って起き上がる。そうしてカメリアは頭をブルブルと振り晴れない気分に陥った。

「はあ、気分最悪……どうして私は、ああ頭を打ったのね」
彼女はこれまでの事が頭を過る、姉を虐げ欲しい物をなんでも奪ってきた。その度に悲しい顔をするルアナの表情を思い出す。

「ああああ……私ったらなんて事をしてきたのかしら!」
机に置きっぱなしにしていた宝石を見て彼女は蒼くなった。それは姉から奪ったばかりのものだった。




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