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反抗

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あれから放った密偵が調査の一部を持ってルアナの元にやってきた。漸くかと彼女は固唾を飲んで待機した。はたして彼女は望むような醜聞を目にする事は出来るのだろうか。

「ご報告申し上げます、カメリア様の一週間分の調査結果でございます」
「え、ええありがとう」
ルアナは薄い報告書を受け取るとさっそく捲った、どのように奇抜な事が書かれているのだろうと期待して。

ところが、取り立てて変わった項目がない。授業態度も申し分なく、交遊関係が乱れている様もなかったのだ。
「どういうこと!?これは本当に妹の日常だと言うの!」
「はい、そのようでございます」

紙面に魔法でもって写された彼女の姿は勤勉そのもので、模倣すべき優等生徒そのものだった。信じられないものを見せられたルアナは「あり得ない事だわ」と呟く。
魔法で写された写真は御学友と微笑む姿が幾度も繰り返し動いていた、悔しいが認めざるを得ない。

「……ありがとう、引き続き調査を続行して、もし代り映えしないようなら中止してかまわないわ」
「御意」

まさかこのような結果になるなど思ってもいなかったルアナは、ほんの少しだけカメリアを信じてみようと思った。
その後、品行方正な彼女の態度は変わらず、2週目にして調査は中止となった。



***

「え、お茶会ですか?」
侍女がルアナからお茶の誘いが来ていると言った、面白くなさそうな侍女の態度はともかくとして、とても嬉しいことだとカメリアは思う。

早速色よい返事をカードに認めてルアナとの茶会を心待ちにしていた。
「ああ、嬉しいわ!お姉様から正式なお茶会のお招き!何を着て行こうかしら!」
心躍らせるカメリアはなるべく落ち着いた印象のドレスを選ぶ、華美な服装はルアナは気に入らないだろうと踏んでの事だ。

茶会は二日後の週末に行われた。カメリアはドキドキとさせてその場に向かう。場所は東の四阿で行われる。
「お姉様!お招きありがとうございます、とっても嬉しいです!」
「……ええ、いらっしゃい。さぁ座って頂戴な」
「はい!」

花の香りが薄っすらする紅茶を出された、所謂フレバリーティーというものだ。彼女はそれをゆっくり嚥下してニッコリと微笑む。

「とても優雅な香りがします、美味しいです」
「そう、良かったわ」
カメリアの様子は上機嫌で終始ニコニコしていた、それから学園でのことなどを色々話した。放課後の勉強会が充実していてとても楽しいと彼女は笑った。

「貴女、ずいぶん変わったのね。我儘放題だったのが嘘のようだわ」
「え、すみません。私はどうかしていたのです、そのお姉様のことも……申し訳ありませんでした」
彼女は立ち上がって深々と頭を下げた、それに驚いたルアナは「もういいのよ」と宥める。

「私は嬉しいわ、貴女が真っ当になってくれて色々誤解が生じていたのね」
「お姉様!」
感涙を浮かべて打ち震えたカメリアだった、ポロリと一筋の涙が落ちた。嬉しそうに微笑みながら泣いていると背後からキンキン声が聞こえて来た。母のペネロペの声だった。

「お母様?」
思わず振り向いてしまったカメリアは泣き腫らして見えた。これは拙い。

「まあまあ!なんてことかしら!カメリアちゃんが泣いているじゃない!貴女一体何をしたの!」
「私は何も……」
「だまらっしゃい!このことは御父様に言いつけますからね!」

それを聞いたカメリアはすっくと立ち上がって猛抗議をした。
「お待ちくださいお母様!一方的過ぎます、私は嬉し泣きしていただけです!お姉様が悪いだななんて決めつけないで!」
「ええ!?カメリアちゃん?」

「お母様なんて!」




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