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焼け付くもの
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瘴気と呼ばれる腐った大気が大陸から風に乗り流れてくる。セントリブ国はそれなりの対策を行い国全体を庇護下に置いていた。
だが、それでも流れて来る醜悪な瘴気は収まらす、唯一人浄化魔法を駆使できる少女に押し付けた。
それがソフィニアの重責である、彼女は皮膚が爛れ堅い岩のようになっても従事しなければならなかった。
醜女になっていく過程で家族や民に忌み嫌われるようになっている。それでも彼女は懸命に神へ祈りを捧げ今日も命を削るのだ。
「あぁ、どうか怒りを抑えてくださいませ……」
その日は特に瘴気濃度がこいのか、朝から城周辺を取り囲みジュゥジュゥと焼け付く。
その瘴気溜まりを一身に見受けしてソフィニアは祈るのだ。
「うぅ……辛い、どうしてこのように荒ぶるのか」
彼女の耳に届くのはひたすら瘴気の轟音と焼け付く皮膚の音だけが苛む、苦しくても抜け出すことは許されやしないのだ。
それを城の奥より眺めているのは国王夫妻と王子の姿だ、彼らは只一人の禊の巫女として彼女を飼い慣らす。
「瘴気が濃いな、大丈夫なのか?」
「ええ、そのように慣らしておりますもの。出来ないからと投げ出すことは許されないわ」
王妃はばさりと扇に付けた鳥の羽を薙いでクスリと笑った。
「……もうすぐ終わる頃合いだ、侍従らを迎えに走らせよ」
第一王子ガルディは側近のひとりを顎で使って彼女の元へ使いを宛がう。彼女の功績を称えての事だ。”御意”と答えた側近だったが瘴気を一身に纏う彼女に近づくのは嫌のようだ。
「すまないな、私は別件で忙しい。そのうように伝えておくれ午後には謁見できよう」
「わかっております」
***
「うぅ……あぁ苦しい、ゲホゲホ……ぐぅうハァハァ……」
のた打ち周る彼女は身を清めると言われる蚕の衣をどす黒く染めていた。彼女は必死にそれらを搔き集め胸もとへ掬う。だが、それでも苦しいのは変わりはしない。息も絶え絶えというところへ嫌味な客はやってくる。
「お姉様。ご機嫌麗しゅう、あらやだぁグチャグチャじゃないの」
「……ぜぇぜぇ……」
虚ろな目でその人物の顔をみようとしたが、通常よりも濃い瘴気を浴びたせいでか焦点が見定まらない。どうやら見当違いの方向を向いていた。
「ふふ……ざまぁないわ、皮膚はいつもより腫れあがってまるで赤い岩だわ。ねぇお姉様?今ならば庭園に点在する大岩と遜色がつかなくてよ、ゴツゴツで不格好なんだものキャハハハッ!」
「ヒュゥ……ヒュゥ……」
未確認のままあらぬ方向を向いたまま返事もままならない姉を見て「つまらないこと」と吐きすてた人物は散々な嫌味を残し立ち去っていった。
どれほど時が経っただろうか、少しばかり息が楽になっていた彼女はふと目を覚ました。
「やぁ、目を覚ましたのかい。今回はすこしばかり気になってたんだ」
「……あ、う……」
言葉にならない声がもどかし気に動いた。愛してはならない、でも誰よりも愛しいその声を聞き漏らすはずがない。
「ああ、そのままで。聞いておくれ、私は立太子することが決定してね。明日の午前中に発表することになった」
「あう……?」
重い瞼から垣間見えたその顔は酷く歪んで見えたが、間違いないくガルディのものだとわかった。包帯まみれらしい己はそれがせいぜいらしい。それでも安堵と相まってホッと息をはいた。
「おえでと……ございあす……」
「ああ、ありがとう。頑張るからね、私は国を背負う人物となるのだから」
彼はそれだけいうと暇していく、部屋に残ったのは彼女を介護するメイドが一人だけとなった。
”あぁ、良かったあの方は漸く立太子されるのね”再び襲ってきた眠気に彼女は微睡むのだ。
だが、それでも流れて来る醜悪な瘴気は収まらす、唯一人浄化魔法を駆使できる少女に押し付けた。
それがソフィニアの重責である、彼女は皮膚が爛れ堅い岩のようになっても従事しなければならなかった。
醜女になっていく過程で家族や民に忌み嫌われるようになっている。それでも彼女は懸命に神へ祈りを捧げ今日も命を削るのだ。
「あぁ、どうか怒りを抑えてくださいませ……」
その日は特に瘴気濃度がこいのか、朝から城周辺を取り囲みジュゥジュゥと焼け付く。
その瘴気溜まりを一身に見受けしてソフィニアは祈るのだ。
「うぅ……辛い、どうしてこのように荒ぶるのか」
彼女の耳に届くのはひたすら瘴気の轟音と焼け付く皮膚の音だけが苛む、苦しくても抜け出すことは許されやしないのだ。
それを城の奥より眺めているのは国王夫妻と王子の姿だ、彼らは只一人の禊の巫女として彼女を飼い慣らす。
「瘴気が濃いな、大丈夫なのか?」
「ええ、そのように慣らしておりますもの。出来ないからと投げ出すことは許されないわ」
王妃はばさりと扇に付けた鳥の羽を薙いでクスリと笑った。
「……もうすぐ終わる頃合いだ、侍従らを迎えに走らせよ」
第一王子ガルディは側近のひとりを顎で使って彼女の元へ使いを宛がう。彼女の功績を称えての事だ。”御意”と答えた側近だったが瘴気を一身に纏う彼女に近づくのは嫌のようだ。
「すまないな、私は別件で忙しい。そのうように伝えておくれ午後には謁見できよう」
「わかっております」
***
「うぅ……あぁ苦しい、ゲホゲホ……ぐぅうハァハァ……」
のた打ち周る彼女は身を清めると言われる蚕の衣をどす黒く染めていた。彼女は必死にそれらを搔き集め胸もとへ掬う。だが、それでも苦しいのは変わりはしない。息も絶え絶えというところへ嫌味な客はやってくる。
「お姉様。ご機嫌麗しゅう、あらやだぁグチャグチャじゃないの」
「……ぜぇぜぇ……」
虚ろな目でその人物の顔をみようとしたが、通常よりも濃い瘴気を浴びたせいでか焦点が見定まらない。どうやら見当違いの方向を向いていた。
「ふふ……ざまぁないわ、皮膚はいつもより腫れあがってまるで赤い岩だわ。ねぇお姉様?今ならば庭園に点在する大岩と遜色がつかなくてよ、ゴツゴツで不格好なんだものキャハハハッ!」
「ヒュゥ……ヒュゥ……」
未確認のままあらぬ方向を向いたまま返事もままならない姉を見て「つまらないこと」と吐きすてた人物は散々な嫌味を残し立ち去っていった。
どれほど時が経っただろうか、少しばかり息が楽になっていた彼女はふと目を覚ました。
「やぁ、目を覚ましたのかい。今回はすこしばかり気になってたんだ」
「……あ、う……」
言葉にならない声がもどかし気に動いた。愛してはならない、でも誰よりも愛しいその声を聞き漏らすはずがない。
「ああ、そのままで。聞いておくれ、私は立太子することが決定してね。明日の午前中に発表することになった」
「あう……?」
重い瞼から垣間見えたその顔は酷く歪んで見えたが、間違いないくガルディのものだとわかった。包帯まみれらしい己はそれがせいぜいらしい。それでも安堵と相まってホッと息をはいた。
「おえでと……ございあす……」
「ああ、ありがとう。頑張るからね、私は国を背負う人物となるのだから」
彼はそれだけいうと暇していく、部屋に残ったのは彼女を介護するメイドが一人だけとなった。
”あぁ、良かったあの方は漸く立太子されるのね”再び襲ってきた眠気に彼女は微睡むのだ。
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