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抗う者たち
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外交名目で使節団を送ったセントリブの愚王は未だ朗報が届かない事に痺れを切らしていた。その一方で病に倒れた王妃に頭を悩ませていた。己自身も皮膚病に侵されており、黒い斑点で覆い尽くされていた。
「おお、なんということか……この斑の醜さと言ったら。近頃は瘤状になってきて岩のように硬い」
それは且つて、この地に居て清浄化していたソフィニアのそれと同じであった。
症状に思い当たりがあった愚王は酷く恐れて近頃は側近ですら側に置かない。包帯でグルグル巻きにしたその姿はまるで醜い岩のようだ。
「なんとしてでもソフィニアを連れてこないと……余は破滅する、そう破滅なのだ!」
瘴気などと言って鉱山からの悪影響を見誤ったままの彼らには、何一つ解決に動いていなかった。なんと愚かなことか。
そこへ側近がひとり、宰相がやってきてドア越しに報告へやってきた。
「セントリブ王よ、防衛大臣が先ほど亡くなりました。原因は巌と聞いております、恐らくですが王と同じ症状かと」
「なんと!?あああああ!やっと病巣が掴めたと思ったら……余は!余は死ぬわけにはいかぬ!」
「王よ……」
王は世継ぎを失い気が滅入っていた、女王マルベルを置き、王配に亡きガルディ王子の従兄のアドニスを侍らせる計画が霧散した。マルベルが死産した後に、すぐさまアドニスを王にと押したが肝心の本人が辞退してしまう。
瘴気の正体に気づいていた彼等はさっさと亡命を果たして、いまは遠き場所に住み付いている。
「あぁ……どうしてこうも上手くいかない、鉱山の運営は順調だと言うのに」
欲深い王は鉱山を停止することを辞めたりはしない。
金銀財宝が眠る山を削り、日々私腹を肥やしていた。その鉱山こそが病の原因であるのも関わらず愚王は止めようとしないのだ。なんと愚かなことだろう。
それとなく病の原因について説いた者がいたが、王の逆鱗に触れて失脚していった。恐れた者達は「鉱山が原因だ」ということを言えなくなった。秘密裡に出奔するものが増えていた。音信不通になった者は後を絶たない。
それでも王は国を棄てずに踏ん張るつもりなのだ。
***
コレルアーニ侯爵家は陰鬱は雰囲気に気が滅入っていた。
マイーネ夫人の病は益々酷くなり、意識の混濁が見られた。娘のマルベルが戻るまでもつかわからない。
「あぁ、マイーネ……私を置いて行くな」
手を取り滂沱に涙する彼だが、その裏では「ソフィニアが戻れば」などと手前勝手なことを思っていた。意識のない夫人の元を去り、家令を呼びつける。
「娘から、マルベルからの報せはこないのか?」
「はい、さようでございます。遅々として進まないのかと」
「うぅ~む……やはり小娘ひとりでは限度があるのか。こんなことならば私自ら出向くべきだった!」
朗報も吉報もないまま、虚しく時間は過ぎていく、彼は歯ぎしりしてなんとかマルベルが良い報せをもたらすことを切に願う。
そして、彼女が旅立って一月後。
やっと娘から手紙が届く、一目散にそれを鷲掴むと封蝋を解くのもどかし気に開き目にする、しかし卿は目を剥いた。
「あ、あの愚か者が……なにが吉報だ!男漁りするために行かせたわけではないぞ!」
手紙には招待状が添えられており、テンツフィール国のテビィル公爵令息と婚約をしたいと宣っていた。激高した卿は招待状を破らんとグシャリと潰した。
だが、そこは腹黒い御仁だ。はたと気が付いて「ハハハハハッ!」と気が触れたように笑ったのだ。
「良いぞ、マルベルよ。挙式には参加してやろうではないか」
再び家令を呼びつけると彼は言った、出奔の手配をしろと……。
「おお、なんということか……この斑の醜さと言ったら。近頃は瘤状になってきて岩のように硬い」
それは且つて、この地に居て清浄化していたソフィニアのそれと同じであった。
症状に思い当たりがあった愚王は酷く恐れて近頃は側近ですら側に置かない。包帯でグルグル巻きにしたその姿はまるで醜い岩のようだ。
「なんとしてでもソフィニアを連れてこないと……余は破滅する、そう破滅なのだ!」
瘴気などと言って鉱山からの悪影響を見誤ったままの彼らには、何一つ解決に動いていなかった。なんと愚かなことか。
そこへ側近がひとり、宰相がやってきてドア越しに報告へやってきた。
「セントリブ王よ、防衛大臣が先ほど亡くなりました。原因は巌と聞いております、恐らくですが王と同じ症状かと」
「なんと!?あああああ!やっと病巣が掴めたと思ったら……余は!余は死ぬわけにはいかぬ!」
「王よ……」
王は世継ぎを失い気が滅入っていた、女王マルベルを置き、王配に亡きガルディ王子の従兄のアドニスを侍らせる計画が霧散した。マルベルが死産した後に、すぐさまアドニスを王にと押したが肝心の本人が辞退してしまう。
瘴気の正体に気づいていた彼等はさっさと亡命を果たして、いまは遠き場所に住み付いている。
「あぁ……どうしてこうも上手くいかない、鉱山の運営は順調だと言うのに」
欲深い王は鉱山を停止することを辞めたりはしない。
金銀財宝が眠る山を削り、日々私腹を肥やしていた。その鉱山こそが病の原因であるのも関わらず愚王は止めようとしないのだ。なんと愚かなことだろう。
それとなく病の原因について説いた者がいたが、王の逆鱗に触れて失脚していった。恐れた者達は「鉱山が原因だ」ということを言えなくなった。秘密裡に出奔するものが増えていた。音信不通になった者は後を絶たない。
それでも王は国を棄てずに踏ん張るつもりなのだ。
***
コレルアーニ侯爵家は陰鬱は雰囲気に気が滅入っていた。
マイーネ夫人の病は益々酷くなり、意識の混濁が見られた。娘のマルベルが戻るまでもつかわからない。
「あぁ、マイーネ……私を置いて行くな」
手を取り滂沱に涙する彼だが、その裏では「ソフィニアが戻れば」などと手前勝手なことを思っていた。意識のない夫人の元を去り、家令を呼びつける。
「娘から、マルベルからの報せはこないのか?」
「はい、さようでございます。遅々として進まないのかと」
「うぅ~む……やはり小娘ひとりでは限度があるのか。こんなことならば私自ら出向くべきだった!」
朗報も吉報もないまま、虚しく時間は過ぎていく、彼は歯ぎしりしてなんとかマルベルが良い報せをもたらすことを切に願う。
そして、彼女が旅立って一月後。
やっと娘から手紙が届く、一目散にそれを鷲掴むと封蝋を解くのもどかし気に開き目にする、しかし卿は目を剥いた。
「あ、あの愚か者が……なにが吉報だ!男漁りするために行かせたわけではないぞ!」
手紙には招待状が添えられており、テンツフィール国のテビィル公爵令息と婚約をしたいと宣っていた。激高した卿は招待状を破らんとグシャリと潰した。
だが、そこは腹黒い御仁だ。はたと気が付いて「ハハハハハッ!」と気が触れたように笑ったのだ。
「良いぞ、マルベルよ。挙式には参加してやろうではないか」
再び家令を呼びつけると彼は言った、出奔の手配をしろと……。
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