本編完結 堂々と浮気していますが、大丈夫ですか?

音爽(ネソウ)

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「クソ!どういうことだ……このままでは、いやまだ好機はある!」
テリウスは焦り苛立っていた、それもそのはず、順調だった賭け事が最近は不調気味だったからだ。最近ではヴァンナさえ伴わず一人で賭博場へ足繁く通っていたくらいだ。それほどにのめり込む価値があるらしい。

「ねえ、テリー。今日も紳士倶楽部へ顔をだすのでしょ?私も連れて行ってよぉ!」
相も変わらずしな垂れかかるヴァンナは魅惑的な胸の空いたドレスを着飾っていた、スリットの入ったスカートが艶めかしい。
「……ちょっと露出が激しくないか?そのスリットというやつ」
「あらあ、このくらい普通よぉ、チラ見せするのが今どきのトレンドだわ」
「出来たら控えて欲しい、他所の男に見られたくない」

「キャー!なにそれヤキモチ?うふふ、嬉しいわ」
「か、揶揄うなよ、好きな相手が他所に晒されたら誰だってそうなるんだ」
急にテンションが上がったらしい二人は馬車に乗り込み、目当ての場所を指定した。馴染みになっていた馭者は”またか”と思いつつ手綱を操作した。後ろでは破廉恥な行為をする二人を乗せて。


「よし、先ずはルーレットで小手調べと行くか。赤と黒どっちが好みだい?」
「ん~そうね、赤かしら」
早速とルージュの7、16、36にベットするテリウスだ、回転する球を見つめる顔は真剣そのものである。普段からそれくらい覇気があって欲しいものだ。
「黒31」
「チッ!次だ次!赤の3、18、25、30でどうだ!」
「いっけ~い!テリー!」

その後も5回ほど回したが3rd 12が当たっただけだ、配当は3倍である。彼は熱くなってきて3回ほど回すもすべて吸収されてしまった。愕然とする彼は「いったいどうしたら」と悄気かえる。
「まぁまぁ、こんなこともあるわよ。資金なら私に任せて!お小遣い二カ月ぶんよ」
「ああヴァナ!さすが俺の女神だ!」
ふたりは衆目も気にせずに熱くキスと抱擁をして賭博の醍醐味を味わうのだ。


***

「は~やられちゃったねぇ、ポーカーの最後の勝負は惜しかったわぁ」
素寒貧にされたヴァンナは悔し気に唇を噛む、フルハウスを出した時は勝ちを確信したのだが相手は4カードを出して来たのだ。
「もうもう!腹立つったらないわ、ねぇテリー!」
「……あ、ああ、なんていうか申し訳ない」
意気消沈したテリウスは虫の息の状態でヴァンナに詫びを入れる、次こそは勝ってみせようと意気込むが果たしてどうなるやら。

下半身の熱も湧いて来ず若干不満気味の彼女は「ぷぅ」と膨れた顔をして「しっかりして頂戴」と下腹部をツンツンと突く。
「勘弁してヴァナ……勝たないとこっちの疼きがこないんだ」
「もう!仕方ないわねぇ、休憩は別々にしましょう」
「ああ、済まない」

燻ぶる気持ちを抑え込みながら彼は仮眠を取る、だが、一向に眠気はやって来ずイライラと上手く気持ちを操作できずにいた。
「もっと、資金があれば……そうさ後少しだけで良いんだ、そうすれば負けた分を回収して勝ち誇れるのに」
ブツブツと取るに足らない勝敗の行方を模索してテリウスはカッと目を見開いた。

クラバットをきちんとつけ直し、身なりを整えると王子然とした姿形を取り繕う。

紳士倶楽部は地下のほうへ向かうと秘密の小部屋があった。
そこは訳ありの者が出入りする所である、けっして踏み入れてはならにとされていた。そこに入ったら最後、沼に沈むまで這い上がることはできやしない。一階二階と下がっていくうちにやがて陰鬱な最下層に辿り着く。

扉らしいものはない、壁には小窓らしいものがポッカリと空いていて暗い空間へと続いていた。
「頼む」たった一言だけ呟き相手の出方を待つ。
すると小窓から仄かな明かりが灯り「身分証を」としわがれた声が聞こえた。

「俺は第四王子テリウス、テリウス・サトゥルノである、身分証はないが王家の指輪を提示する」
「おやおやぁ、珍しいお客人だ。指輪を拝見させていただいでも?」
「良いぞ」
男か女かわからない正体不明の人物に指輪をそっと差し出した。この時の彼はドキドキと鼓動が早鐘の如く煩かった。

「ようがす、扉を開けて差し上げる速やかに入ってくださいませ」
「っ!ああ、わかった!ありがとう」
そこは地下貸付業者の窓口だった、つまり闇金融である。裏社会に通じる最後の砦に彼は足を踏み入れたのだ。
ゴトリという重厚な音と共に壁が回転して通路が現れた。
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