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後日談
不敬罪
しおりを挟む「王女殿下、我が家の庭園は王族に引けをとらない見事なものでして、そりゃあ素晴らしいものなのです」
パチン……。
「是非とも我が家へ来てください、ああそうだ流行のナントカ菓子が」
パチン、ギシッ!
「ねぇ、王女殿下!クリスティナと呼んでいいかな?ボクの事はぜひアゴスと呼んで欲しいな!」
バキンッ!
「バキン?」
突然の破壊音にキョロキョロとするフラメール侯爵令息だ、まさか目の前のクリスティナから発したとは思っていない。どうしたことだと狼狽していると彼女はさっさと行動する。
「ロイ、邪魔なものを片付けて頂戴」
そう彼女が呟くと何処からともなく現れた男子が「御意」と一声あげてフラメールをアッと言う間に簀巻きにした。彼は声もだせずに気絶して泡を吹いていた。
「まったく躾のなっていない、さっそく抗議文を認めなければ、それと不敬罪で二年間の拘留、50%の増税が妥当かしら」
「いいえ、姫様。我が国ではさらに去勢が加わります」
「去勢?」
「金的の除去でございます」
「まああ!?それは……とっても素敵だわ」
彼女は不敵に笑い去勢とは実に面白いと言った。
「そうよね、下心丸出しで擦り寄ってきたのですもの!当然の処置と言えるわ」
「はい、それでは私は狼藉者を運びますね」
「うん、よろしく~」
***
その後、フラメール侯爵は大層落胆したらしい。
嫡男ではないので去勢されたことには受け入れたが、増税50%はかなり痛い。さらには査定に罅がはいることを恐れた。
「ああ、なんということか、前期の査定は絶望的だ!我が家の階級は伯爵位、もしくは子爵に下がる可能性がでてきたぞ」
「あ、貴方……伯爵位なんて私は嫌よ!大威張りできないじゃない!なんの為にうだつの上がらない貴方と結婚したと思って!?」
散々な言いようにフラメール卿は「ひどい!」と叫んだ。
フラメール夫人はとても美しい容姿をしている、そこに惚れこんだフラメールはあの手この手で求婚した経緯があった。
「そんなことを言わないでくれ!ねぇ新しいドレスを買ってあげるから!」
「はん?増税されるのにそんな余裕があるとでも?離縁の用意はさせていただくわ」
「そ、そんなぁ」
そして、フラメール家の醜聞は瞬く間に広がることになった。当初は火消しに必死だった卿だったが、噂雀たちの口には戸を建てられない。
「う~ん、ご婦人のことは些か可哀そうだったかしら?」
「仕方ないですよ、王女様。それに痛みわけになっているかと」
「え、そうなの?」
影者ロイによればクリスティナ王女に粉をかけた者には極刑が下るという悪い噂がついたというのだ。
「ええー!なによそれは!極刑なんてしていないわ!」
「いいえ、王女様。去勢は男にとって”死”も当然でございますから」
「なによー!んもう、はっそうだわ!他国には宦官制度があったわ、それを利用して我が国でも……アゴスを引き立てるのはどうかしら?」
「姫様……お戯れを」
これが原因かはさだかではないが、意味もなく王女に絡むやからは大分減っていた。
本来なら彼女の性格は至って温和である、それを知るものは少なからずいた。
「王女様、ご機嫌うるわしゅう」
「まぁ、カーラ!こんな所で会うなんて」
彼女達は各省庁が集まる議事堂で出会った、互いに父親に会いに来たらしい。
「私はお父様にお弁当を届けにまいりましたの」
「まぁ、そうなの!偶然ね、私もよ。初めて焼いたクッキーを是非お父様にと思って」
小さなバスケットを片手に微笑み合う少女たちを上から眺めていたロイが「あのまま育てば良いのに」とぼそりと零す。
「だけどまぁ、次から次へと問題を起こすんだよなぁ」
そこに師匠兼父親のドニがやってきて「軽い口を叩くな」と言って現れた。彼は大慌てで「すみません!」と平謝りだ。
「なってないぞ、背後にきても気が付かないとは緩み過ぎだ。気を付けなさい」
「は、はい!父上」
ドニはそれだけ言って素早く去っていく。
彼はアリーチャに付いてきてそのままこの国に居付いてしまった。母はこの国の城に勤める侍女だ。
「ああ、父上、貴方のようにボクはなりたい」
「ロイ~!ロイはいる~?」
「はい、ここにおりますクリスティナ様!」
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