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後日談
しずかな怒り
しおりを挟む「たあ!」
大きな掛け声が会場に響いた、クリスティナの対戦相手であるアボット・ブルセンが応戦して剣を一振りする。彼は一回戦から快勝している兵だ。
彼は武人として礼遇を尽くすタイプのようだ、彼の身分は平民だったがそれを覆すほどの実力を持っていた。
「スゴイね……ちっとも掠りもしない、骨が折れるわ」
「それはどうも」
アボットは体制を整えて次の一手に備える、クリスティナは迎え撃つよりも攻撃を仕掛けるタイプなのだと看破されている。そして懲りない彼女はまたも仕掛けて行った。
観戦しているハンナとカーラは冷やせを搔いて見守った。
「ああ、またそんな無茶を……」
「ひぃ!怖いわ……見てられない」
カーラはとうとう目を伏せて「神様」と祈りだした。
「うん、出鱈目だなぁ。剣筋がなってない」
アルフォイは気難しい顔で試合を見守っている、カミラ戦で敗退したとはいえ彼も腕に覚えがある。そんな彼のクリスティナの評価は芳しくない。
「はぁああ!」
力任せになってきたクリスティナの剣戟は相変わらず激しいが決定打に欠ける。体力より気合で負けているようだ。
「たしかに威力は素晴らしい、だけどそれだけではボクに勝てないよ」
「んん?」
斜めに構えた体制でアボットが仕掛けた。
***
「はああああ負けたぁ……悔しいな」
悄気るクリスティナの元にアルフォイが駆けつけた、無茶をし過ぎた彼女を叱咤するためだ。
「キミは無茶をし過ぎる!なんだいあの剣はメチャクチャだよ!」
「だってぇ、ちっとも当たらないのだもの……対戦してみればわかるわ」
「はぁ、たく……早めに負けて良かったよ、見ていられない」
「ぶぅ~」
コツンと頭を叩かれた彼女は「痛い」と言って抗議する、アルフォイは知った事かと彼女を抱きしめた。突然のことにクリスティナは固まってしまう。柔らかな彼の温もりがじわりと身体を巡る。
「あ、あの」
「もう勘弁してくれクリスティナ、あぁキミが大怪我したらと気が気ではなかった」
「え、ああ……うん、ごめんなさい?」
疑問形で答える彼女にハンナとカーラは「きゃあ」と頬を赤らめる、そんな関係だなんて知らなかったとカーラはハシャグのだ。だが、したり顔のハンナはこう言う。
「あら、私は知っていたわ。だってあからさまだもの」
「ええ!狡いわハンナ!情報は共有してくれなきゃ!」
「ふふふ」
そして、アボット対カミラだったが、判定の結果カミラが優勢を取り優勝を果たした。
「負けたよカミラ、素晴らしかった」
「いや、キミこそさ。判定で私が勝ったが、延長していたらどうなっていたか」
新たな友情が芽生えたふたりは互いに手を取り合って鼓舞し合うのだ。
「あのぉ……アルフォイさん、いい加減に放してくださらない?」
「いいや、ダメだ!キミは仕置きが必要だ」
「はあ」
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