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半狂乱
しおりを挟む「面の皮が大分厚いと見られる、いっその事そのまま異国へでも行ってしまえば良かったのに。なぁテベリオ・ドレイタスよ」
のこのこと現れた元王太子を見て彼は細くため息を吐く。鉄格子の向こう側にはしょぼくれた顔をするテベリオが恨みがましく睨む。
「ほお、睨むほどの気概があったのか愚かな」
「……国家転覆を目論むなど正気か?これは反逆罪だ!父上が黙っておるものか!」
いまだ前王の威光に縋りつく男は咆える、それを見たランベルナイトは黙ってひとふさの髪の毛を見せる。
「これが何かわかるか?見覚えがあるだろう」
「っ!?それは……まさか……まさ……か、うわぁああああ!」
テベリオは慟哭した、最後の頼みの綱だった父親の命はとうに消えていたのだと知った。
「なんてことを!父上、父上―!」
「すべてはキミがやらかした結果と言える、キミは自ら王族の身分を手放したんだ。正妃を何故に挿げ替えたのだ、アンドレイナが一縷の望みだったのに」
「な、なぜ?なぜそこて彼女の名が出てくるんだ?」
すると再度深いため息を漏らしたランベルナイトは「無い頭で良く考えることだ」と言って匙を投げる。貴族派筆頭のサンドリーニ侯爵の娘を、娶ることの重要さをわからないなど話にならないとその場を辞した。
「今更分かったところでもう遅いのだから」
***
「ごきげんようベネッタ、新婚旅行は楽しめた?」
「何よ!笑いに来たのかしら!ええそうよ、貴女の企み通りにクソつまらないことになったわ!」
「企みねぇ、まぁ大体あっているわ」
昏い石畳の上でキィーキィーと喚くベネッタを鬱陶しいと思いながらアンドレイナは扇をパタパタする。
そもそもな話、贅沢などしなければもっと楽しめたはずと思うのだ。
元王太子夫妻に長期の旅を提供したのは他でもない、彼女アンドレイナである。法改正と王族の廃止の為には彼女たちは邪魔だった。まんまと旅行に釣られたベネッタを冷笑している。
「何もかもが遅いのよ、テベリオが正妃の指名を違えた時からね。ねぇ知っていて、貴女の御父様じゃどうにもならなかったのよ、なんの権力も持たない男爵ではね」
「御父様の悪口を言うな!ハッ!そうだわ御父様たちはどこよ!」
一向に見舞いに現れない親族を思い出して蒼くなる彼女である、それを一瞥してからアンドレイナは近況を報告してやった。
「断頭台から見る景色はどうなのかしらね、彼は今何を思っているのか。バカな娘を恨んでなければ良いけど」
「な、なんですって?」
「だから、断頭台よ。今頃は夫婦仲良く執行されたことでしょう」
「イヤー!御父様、御母様!貴様ー!許さない許さないんだからね!」
半狂乱になって騒ぎたてるベネッタを置いて、彼女は「さよなら」と言って牢獄から去って行った。
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