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恋とお菓子
一方で、ベルナティは僅かな資金を元手に商売を始めていた。それは小さな雑貨と菓子の店である。彼女が特に力を入れたのは海外の珍しい菓子だった。
かつて子爵家で培ったノウハウを棄てるのは勿体ないと考えたのだ。
早速開店した彼女は試食品を持って街頭にたった。
「如何ですが~とても美味しいお菓子です!無料で提供しています~」
まばらだったが興味を示したご婦人方が幾人か集まり試供品を食べてくれた。
「なんて甘いのかしら、これはいつから販売するの?」
「はい、明日からの予定です。よろしくお願いします、もひとつ如何?」
「まあ、嬉しいわ!」
彼女はにこやかに挨拶する、そして驕ることなくその品を宣伝した。そこに一人の紳士が現れて試供品を所望する。
「やあ、お嬢さん。面白いものを売っているね」
「え!?あらまぁ……ライモンド様……お久しぶりです」
それはかつて婚約していたライモンド・ガルボリーノ伯爵令息だった。立ち行かなくなった子爵家に資金援助して貰っていたが、父が儚くなってご縁も消えていた。
彼女は負債を弁済して婚約の白紙を申し出た。当初はそれを受け入れないとライモンドは言ったのだが、共倒れにするわけにはいかないと遠慮したのだ。
「ふぅ、キミはなんでも一人で抱え込むのだね。噂で聞いたよ、ファーレン子爵家を追い出されたとね。どうして相談してくれなかったんだ!」
「そ、それは……貴方様にご迷惑をかけると……」
しどろもどろのベルナティは目を伏せて悲しい顔をした。
そこでガバリとベルナティを抱擁するライモンドは「そんな事はない」と強く言った。
「離して、お願いです」
「ダメだ、私は二度と離さない!キミを手放してからというもの私は辛い日々を送った。もう勘弁してくれ」
「うぅ……ライモンド様」
最初こそは政略的な要素が色濃かった間柄だったが、彼女の聡明さにライモンドは心奪われた。父親が病に倒れた時も気丈に振る舞い「こんな事でへこたれません」と笑ったのだ。
その健気さに彼も応えようと必死になったものだ。
「ライモンド様……良からぬ噂が立ちます、どうか離れて」
「そんな事は気にしないと言っている!私の事は嫌いかい?どうかこの手をもう一度取ってくれないか」
「……迷惑じゃないのですか?」
ライモンドは迷惑などではないとハッキリ答えた。いまでも愛していると彼女に口づけた。
「あぁ、ライモンド様。もう少しだけ甘えて良いですか?」
「もちろんだ、少しとは言わず、ずっと甘えていてくれ」
ガルボリーノ伯爵家では父母も大歓迎するはずだと彼は笑う、勤勉で賢い彼女を評価しているらしい。彼女は心苦しいと思いながら彼の腕を解けなかった。
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