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帰る場所

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帰路に就く途中でベルナティは浮かない顔をする、ファーレン子爵家のことだ。あの時点で資産はマイナスであり、家屋と子爵領を売り払っても債務は僅かに残る程度だったからだ。

「どうしたんだい?疲れてしまったのかな」
「……あぁ、ライ。元妹が贅沢しているのが気になってしまって」
どう考えても一流ホテルに逗留する予算が捻出できるわけがないと彼女は言う、納税だけでも済ませていれば良いがと慮る。

「なるほど、彼等の資金の出処が気になるか。だが、キミは子爵家を除籍したのだろう、何ら憂慮する必要はないさ」
「ええ、そうだけれど余所様に迷惑をかけているのではと」
真面目な彼女はそんなことを考えていた、子爵家の解体は避けられない。だからこそ残った債務をどうやって返したのか疑問なのだ。

「ふむ、そんなに気になるのならば調べてみよう、だが、調べるだけだ。良いかい?」
「ええ、お願い出来るかしら」
ホッとした表情で彼女は願い出る、縁を切ったとはいえ生家のことが気になるのだ。

「いざとなれば子爵位を買い取っても良い、このまま消え失せるのは忍びないから」
「まぁ、ありがとう!ご先祖に顔向けできるわ」
パァッと顔を輝かせた彼女を見て、デレッとするライモンドである。


***


「は?何よこれは、変な札がたくさん付いているわ」
それは差押札であった、察したのはトンマゾだけでブリジッタとアンブラはビリビリと破いてしまう。家主が不在の間に勝手に他人が屋敷に入ったことに立腹している。

「なんなの気持ちが悪い!泥棒でも入ったのじゃないでしょうね」
「ほんとよぉ、あぁ、嫌だ。戸棚にあった私のコレクションまでベタベタと」
夫人は己の集めたアンティーク茶器を見て困惑する、どれもこれも素晴らしい逸品だ。それらが納められた戸棚に封印するかのように札が貼られている。

「ちょっと待って、それを剥がしたら不味いよ」
「煩いわね!貴方は黙ってなさい」
トンマゾが口を挟むが、元よりアンブラに嫌われている彼は相手にされていない。これは駄目だと判断した彼はコッソリと屋敷を出て行く準備をする。



差押札を粗方取り除いた彼女らは一息吐いてお茶を淹れることにする。だが、メイドなど一人もいない。
「もう!面倒ねさっそく雇わないといけないわ」
「そうね、御髪も整えないといけないもの」
解雇したベルナティを呪うようにブリジッタは愚痴を零す、そもそも何故に使用人たちを全員暇を出したのかいまだわかっていない。

「ああ~面倒……どうして私が下女のような真似をしなければ」
ブツブツと零しながら井戸に向かうブリジッタである、いつもならトンマゾが引き受けるのだがいくら呼んでも来てくれない。

「はぁ~どうすれば良いの?この桶を落とせば良いのかしら」
途方に暮れていると背後から声がした、彼女はドキリとして咄嗟に後ろを向いた。

「だ、誰!?」
「これは失礼御嬢さん、釣瓶つるべを動かさないと水は汲めませんよ」
「えぇ……そんな事、私はやったことがないわ」

そして、その紳士は代わりに水を汲んでやってから名乗った。
「私は国税局から参りました、困りますねぇ勝手に札を剥がされては」
「なんですって?」




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