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愚か者

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その後、惜しげもなく散財するブリジッタは気分が良いと思っていた。
「どう、お母様。このホテルで最上のディナーよ!海老もアワビも食べ放題よ!」
「ええ、悪くないわ。この白ワインの追加をして頂戴」

至福の時を過ごす彼女達は贅沢三昧だ、この調子で食い潰していたらあっと言う間に資金繰りは悪くなるだろうとトンマゾは考えた。

すべては姉に対抗しての事だ、ガルボリーノがクルーザーを手配すれば負けじと借りたし、海辺の町を散策すれば必要もない装飾品を買い漁る。
「オーホホホッ!お姉様に勝ったわ!いくら伯爵だってこんな豪快な買い物はできないでしょう!」
「……使い過ぎだよブリジッタ、少しは計画的に」
「煩いわよトンマゾ!貴方は私の要望だけ聞いて動けば良いの!」
「はぁ……」


それから1週間後、ホテルから請求書が届いた。長期に滞在するものは週間ごとに請求されるのだ。その請求額を見たブリジッタは呆気に取られる、その額三千5百万ほどだ。一泊数百万するのだから当然と言えた。

「な、なによこの巫山戯た金額は!?まだ1週間しかいないのよ!」
「だから言ったじゃないか、単純計算でも数千万は消えて行くんだ、それだけじゃない外で散財した額は三千万を超えているよ」
「そんな……たった1週間で六千万以上を使ったというの!」

ルームサービスを使い放題していたのだから当たり前である、母アンブラはさきほど届いたフルーツの盛り合わせをぼたりと落とした。
「な、なんですって……この果物が一つ1万かかっているの!?」
「お母様!勿体ない食べ方をしないで!」悲鳴に近い声を出してブリジッタは発狂する。




直ちに契約を打ち切り部屋を飛び出したのは言うまでもない。滝のように汗を流すブリジッタ一行はホテルのロビーに出てぐったりしていた。すぐにでも立ち去りたいのだがショックで動けない。
身の丈に合わない事をした代償はあまりに大きかった。予定を大幅に切り上げた彼女は悔しそうだ。

そして、そこへ七日間の新婚旅行を楽しんだガルボリーノ夫妻が降りて来た。憔悴しきったブリジッタと違って姉の顔は晴々としている。

「あら、ブリジッタ貴女も帰るのね」
「お、お姉様……」
今の彼女は嫌味を応戦する気力もない、ただ虚ろな目を向けてきて「放っておいて」と言うのが精々だった。ベルナティはファーレン子爵家の負債額を思い出して眉を顰める。

「余計なことを言うようだけれど、負債のほうは整理はついたの?」
「え?負債ってなんの事よ」
こちらの方を向くのも面倒らしいブリジッタは姉の進言を右から左に聞き流した、何も考えていないようだ。呆れたベルナティは「責任の取り方はちゃんとしなさいね」と残して去って行く。

その横にいたライモンドは胡散臭いものを見るようにジロリと一睨みして立ち去った。

「ふん!何よ偉そうに!まだ2億近いお金があるんですからね!」
「ほんとよね!伯爵だからなんだというの!」
母子揃って花畑発言をするものだからトンマゾは「うへぇ」と肩を竦める。

「そろそろ潮時かなぁ」



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