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DVモラハラ夫
しおりを挟むロマーノ子爵邸にいつものように怒鳴り声が響く。
夫トンマーゾが妻のアネッタを罵る声だ、よくも毎日続くと思える所業だ。今日は賭け事に出かける前に金の無心をしているようだ。
「おい!いい加減にしろよ、どこに隠した!?金があるのはわかっているんだ!」
バシンと妻の頬を叩く音が幾度となく鳴り響く、空の金庫の前に仁王立ちする夫は早く出せと捲し立てた。
「お前の価値なんか金しかないんだ!いつも澄ました顔でにくったらしい、蟄居した両親に金を送る暇があるなら俺に寄越せ!聞いているのか!?」
「おやめ下さい、お金ならここに……」
見兼ねた家令が纏まった金を手渡した、初めから素直に出せば良いものをと鼻で笑うトンマーゾだ。彼は大金をせしめると上機嫌で愛人たちを侍らせて出て行った。
「ああ、アネッタ様……なんということだ大怪我をされている」
急遽医者に連絡して入院をすることになった、屋敷内でも治療は出来るがあの夫が大人しく見守るとは思えない。家令の判断は正しかった。
「脳震盪を起こしています、それから右側の腹部に裂傷が机の角にでもぶつけたのですか?」
医者は訝しい顔で対面した家令に質問する、明らかに第三者によって攻撃されたと言い募る。家令は思いつめた様子で肯定した。
古傷らしいものも背や足に残っていた、乱暴は日常的に行われていたと見える。医者は呆れながらカルテを書く。
「夫君が酷いのです……このままでは子爵家は食い潰されてしまう」
「なるほど、それならばそのバカ旦那を追い出せば良いのだろう。簡単なことだ」
しかし、家令は項垂れて「それはできない」と言った。
何故ならば婚姻の際の契約書があるからだと言った。
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