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ふたりの過去
ロードリックがソルニエ婦人の優待《強制連行》で騎士団の訓練に参加させらて一か月目。
彼はボロボロになりながらも弱音を吐くことはなかった。
爵位下の先輩だろうと逆らわう事もせず従順に訓練に励む。
その様子に満足したソルニエ婦人こと第二騎士団団長は、彼を侯爵家の晩餐へ招待することにした。
揺れる馬車の中、ロードリックは身の置き場に困った。
「緊張することはあるまい?以前は家同士の交流は定期的にしておっただろう?」
「は、はい!」
「まぁ茶会ではやらかしてくれたそうだが、君は多重人格者かなにかか?」
夫人は目を眇めてロードリックの返事を待つ。
「いいえ、決してそのような……」
歯切れの悪い言い方にソルニエは許すわけもなくピシャリと鞭を振るわれた。
「まだ躾が足りないと見える、訓練項目を増やそう!」
「アイマム!実は彼女を前にすると自分は締まりのない顔になってしまうのです!数年前にそれをアイリス嬢に指摘されまして」
侯爵家への道すがら、拗れた関係の経緯をロードリックは吐露した。
***
<二人の過去 ロードリック視点>
『アイリス今日も可憐だね、咲き誇る薔薇さえ雑草のようだよ』
『まぁ、お上手ね。』
頬を染めて恥じらうアイリスは妖精のようだと見惚れた。
相好を崩してデレデレの俺にアイリスは怪訝な顔をする、どうしたのだろうと問えば。
『褒めてくださるのは嬉しいの、でもお顔が……』
『顔が?』
『ダラしなくて気持ち悪いです!殿方はもっとクールであるべきですわ!せっかくの綺麗な相貌が台無しですの!あぁ、キツイ物言いでごめんなさい。ロードリック様をお慕いしてますよ、でももうちょっと次期公爵家当主としての男らしさをお持ちくださいませ!』
涙目になりながら訴えてくるリィの言葉がグサリと胸に刺さった。
そして俺は……。
***
「その日、彼女の指摘に目が覚めました、ですが俺はすっかり曲解して。間違った振る舞いに気が付ないままアイリス嬢を傷つけてしまったのです」
滔々と告白したロードリック、懺悔話を聞いていたソルニエ婦人は肩を震わせた。
酷く怒っているのだろうと彼は身構えた。
だが降って来たのは重い拳ではなかった。
「ぶっハハハハッ!貴殿はなんと……フハハハハッし、失礼……アハハハハ!」
腹を抱え苦しそうに笑う婦人にロードリックは目が点になる。
しかし、「貴様」「お前」と謗る呼び方から「貴殿」へと昇格したことにロードリックは嬉しく思った。
「私は其方を誤解していたようだ、ふふ、一途が故の過ちだったのだな。だがそれはアイリスに伝わらねば意味がないぞ?失った信頼回復は急いてはいけない。ところでロードリック殿」
「はい、なんでしょう?」
「貴殿は我が娘に、これまでの冷酷な態度について謝ったのか?」
「!?」
自分の熱い思いだけを一方的に捲し立てただけのあの日を述懐して、ロードリックは青褪めた。
己の迂闊さに、今更ながら馬鹿であったとロードリックは項垂れる。
彼はボロボロになりながらも弱音を吐くことはなかった。
爵位下の先輩だろうと逆らわう事もせず従順に訓練に励む。
その様子に満足したソルニエ婦人こと第二騎士団団長は、彼を侯爵家の晩餐へ招待することにした。
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「は、はい!」
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侯爵家への道すがら、拗れた関係の経緯をロードリックは吐露した。
***
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『アイリス今日も可憐だね、咲き誇る薔薇さえ雑草のようだよ』
『まぁ、お上手ね。』
頬を染めて恥じらうアイリスは妖精のようだと見惚れた。
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『褒めてくださるのは嬉しいの、でもお顔が……』
『顔が?』
『ダラしなくて気持ち悪いです!殿方はもっとクールであるべきですわ!せっかくの綺麗な相貌が台無しですの!あぁ、キツイ物言いでごめんなさい。ロードリック様をお慕いしてますよ、でももうちょっと次期公爵家当主としての男らしさをお持ちくださいませ!』
涙目になりながら訴えてくるリィの言葉がグサリと胸に刺さった。
そして俺は……。
***
「その日、彼女の指摘に目が覚めました、ですが俺はすっかり曲解して。間違った振る舞いに気が付ないままアイリス嬢を傷つけてしまったのです」
滔々と告白したロードリック、懺悔話を聞いていたソルニエ婦人は肩を震わせた。
酷く怒っているのだろうと彼は身構えた。
だが降って来たのは重い拳ではなかった。
「ぶっハハハハッ!貴殿はなんと……フハハハハッし、失礼……アハハハハ!」
腹を抱え苦しそうに笑う婦人にロードリックは目が点になる。
しかし、「貴様」「お前」と謗る呼び方から「貴殿」へと昇格したことにロードリックは嬉しく思った。
「私は其方を誤解していたようだ、ふふ、一途が故の過ちだったのだな。だがそれはアイリスに伝わらねば意味がないぞ?失った信頼回復は急いてはいけない。ところでロードリック殿」
「はい、なんでしょう?」
「貴殿は我が娘に、これまでの冷酷な態度について謝ったのか?」
「!?」
自分の熱い思いだけを一方的に捲し立てただけのあの日を述懐して、ロードリックは青褪めた。
己の迂闊さに、今更ながら馬鹿であったとロードリックは項垂れる。
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