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遊学篇
お菓子とワンコ王子
益々ゲッソリしたアイリスは完全にフォークが止まってしまう。
それを見たスカーレットは、デザートを持ってきてあげると言って席をたった。
「あぁごめんなさい、ありがとう」
「いいのよ、ここの食堂は味が濃いから飽きるのよ、待っててね」
彼女はそういうとデザートビュッフェの方へ向かう。
申し訳ないとアイリスは思いながらテーブルを見た、スカーレットは食事が済んでいたようだ。
次の講義はいつだったかと思い浮かべていたら、女生徒の視線を一身に纏う王子が近くへ坐った。
アイリスは無関心だったので一瞥もくれない。
セイン王子は従者達に世話をされてノンビリ食事をはじめている。
王子はチラチラとアイリスを見るが無反応をされて肩を落とす。
「おまたせ!ここのデザートはとても美味しいのよ、オススメを全部持ってきちゃった!」
「まぁ凄い!とても綺麗ね。ありがとう、いただきます」
大好きなフルーツタルトに手を伸ばしたアイリスは、甘味が口中に広がる幸せに王子の存在などスッカリ忘れた。
恋より食い気の乙女の春は遠い。
「はぁ~美味しい♪講義がなくても来ちゃいそうだわ!」
「ふふ、アイリスは経営学しかとらないの?」
いつのまにか言葉が砕けた二人、友人に一歩近づいたようだ。
「そうなの、べつに受ける講義に縛りはないのだけどね」
「だったら製菓栄養学をとってみない?栄養学が主だけど、お菓子の開発なんかもするのよ」
製菓も授業で行うと聞いたアイリスは飛びつく。
「素敵!スカーレットと一緒ならきっと楽しいわね!追加申請しとくわ!」
「良かった!実は貴族で受けるのは私だけで心細かったの!」
手を取り合いキャイキャイはしゃぐ女子に「可愛い……」とセイン王子は羨望の眼差しを向けるのだった。
「王子、ソースが垂れてますよ」
「え……しまった!」
白いスラックスにデミグラスソースの花ができていた、悪目立ち不可避だ。
いつもと違う主の様子に従者達は首を傾げた。
***
この日、アイリスは経営学が1コマしかなかったので、食後はスカーレットと別れて学生課庶務へむかう。
新たに製菓栄養学の講義申請のためだ、学務員が淡々と説明をして授業料を提示した。
手続きを終えて振り向くとセイン王子が気まずそうに立っていた。
素通りするアイリスに呼び止める王子。
それでも聞こえないふりで歩くので、つい腕を掴んでしまう。
「触れないでください!」
「ご、ごめんなさい。キミが無視するから」
「そうですか、私が悪いんですね。それは失礼しました、では」
「ま、待って!キミは悪くない!お願いだ話をする時間を与えていただけないでしょうか?」
必死の懇願に「メンドクサイ」とつい本音がでるアイリス。
「さ、さすがに傷つくなぁ」
1分以内に話せとアイリスは突っぱねた。
「ありがとう、その、この間は揶揄ったりしてごめんなさい。勉強の邪魔をして怒らせてしまったのは私が悪いんだ、でもどうか慈悲を」
膝をついて頭を下げる王子にアイリスは「メンドクサイ」と再び言う。
「うぐっ……」王子は胸を抑えて辛そうにする。
「もういいです、胡散臭い演技はみたくないし。普通に接してください、あなたの従者に刺されそうだわ」
「え、ああ。コラ!お前達アイリス嬢に失礼だぞ!謝れ!」
紺地の服を着た従者たちが慌てて礼ををとった。
「それで、殿下はいったいなにがしたいんです?暇つぶしの的にされては迷惑です」
「!?そんなつもりはないよ、仲良くしたいと言ったじゃないか!」
アイリスは不敬に不敬を重ねるように溜息を吐いた。
「勉強の邪魔が仲良くなる作法とは知りませんでした、王族の独特の慣習にはついていけません」
「そうじゃなくてー!気を引きたかった切なさを分かって欲しいです」
「ぜんぜんっわかりません!仲良くしたかったら一緒に学ぼうって言うんじゃないんですか?」
「ソ、ソウデスネ」
正論をぶつける手強い乙女アイリスに王子は情けなく眉を下げる。
1分過ぎました、とアイリスは去ろうとするので王子も縋るように歩く。
「アイリスー、リィお願い!かまって~寂しくて死んじゃう!」
「アンタは兎か!」
「リィそれは迷信だよ、真実の兎はボッチが好きな生き物なんだよ?ナワバリに過敏だから」
「じゃあ殿下もボッチになれば良いと思いまーす!」
「リィ~!勘弁して意地悪しないで!」
停車場まで追いかけてきた王子にとうとうアイリスは……
「……ふ、フハハハハ。おバカさんね、殿下……あなたどうしてそう私にかまうの?」
涙を浮かべて大笑いするアイリスに王子はやっと安堵する。
「良かった、やっと笑ってくれたね。リィ、私は貴女を愛しみたいんです」
「は?」
発せられた言葉の理解が追い付かない、食い気の乙女はポカンとした。
それを見たスカーレットは、デザートを持ってきてあげると言って席をたった。
「あぁごめんなさい、ありがとう」
「いいのよ、ここの食堂は味が濃いから飽きるのよ、待っててね」
彼女はそういうとデザートビュッフェの方へ向かう。
申し訳ないとアイリスは思いながらテーブルを見た、スカーレットは食事が済んでいたようだ。
次の講義はいつだったかと思い浮かべていたら、女生徒の視線を一身に纏う王子が近くへ坐った。
アイリスは無関心だったので一瞥もくれない。
セイン王子は従者達に世話をされてノンビリ食事をはじめている。
王子はチラチラとアイリスを見るが無反応をされて肩を落とす。
「おまたせ!ここのデザートはとても美味しいのよ、オススメを全部持ってきちゃった!」
「まぁ凄い!とても綺麗ね。ありがとう、いただきます」
大好きなフルーツタルトに手を伸ばしたアイリスは、甘味が口中に広がる幸せに王子の存在などスッカリ忘れた。
恋より食い気の乙女の春は遠い。
「はぁ~美味しい♪講義がなくても来ちゃいそうだわ!」
「ふふ、アイリスは経営学しかとらないの?」
いつのまにか言葉が砕けた二人、友人に一歩近づいたようだ。
「そうなの、べつに受ける講義に縛りはないのだけどね」
「だったら製菓栄養学をとってみない?栄養学が主だけど、お菓子の開発なんかもするのよ」
製菓も授業で行うと聞いたアイリスは飛びつく。
「素敵!スカーレットと一緒ならきっと楽しいわね!追加申請しとくわ!」
「良かった!実は貴族で受けるのは私だけで心細かったの!」
手を取り合いキャイキャイはしゃぐ女子に「可愛い……」とセイン王子は羨望の眼差しを向けるのだった。
「王子、ソースが垂れてますよ」
「え……しまった!」
白いスラックスにデミグラスソースの花ができていた、悪目立ち不可避だ。
いつもと違う主の様子に従者達は首を傾げた。
***
この日、アイリスは経営学が1コマしかなかったので、食後はスカーレットと別れて学生課庶務へむかう。
新たに製菓栄養学の講義申請のためだ、学務員が淡々と説明をして授業料を提示した。
手続きを終えて振り向くとセイン王子が気まずそうに立っていた。
素通りするアイリスに呼び止める王子。
それでも聞こえないふりで歩くので、つい腕を掴んでしまう。
「触れないでください!」
「ご、ごめんなさい。キミが無視するから」
「そうですか、私が悪いんですね。それは失礼しました、では」
「ま、待って!キミは悪くない!お願いだ話をする時間を与えていただけないでしょうか?」
必死の懇願に「メンドクサイ」とつい本音がでるアイリス。
「さ、さすがに傷つくなぁ」
1分以内に話せとアイリスは突っぱねた。
「ありがとう、その、この間は揶揄ったりしてごめんなさい。勉強の邪魔をして怒らせてしまったのは私が悪いんだ、でもどうか慈悲を」
膝をついて頭を下げる王子にアイリスは「メンドクサイ」と再び言う。
「うぐっ……」王子は胸を抑えて辛そうにする。
「もういいです、胡散臭い演技はみたくないし。普通に接してください、あなたの従者に刺されそうだわ」
「え、ああ。コラ!お前達アイリス嬢に失礼だぞ!謝れ!」
紺地の服を着た従者たちが慌てて礼ををとった。
「それで、殿下はいったいなにがしたいんです?暇つぶしの的にされては迷惑です」
「!?そんなつもりはないよ、仲良くしたいと言ったじゃないか!」
アイリスは不敬に不敬を重ねるように溜息を吐いた。
「勉強の邪魔が仲良くなる作法とは知りませんでした、王族の独特の慣習にはついていけません」
「そうじゃなくてー!気を引きたかった切なさを分かって欲しいです」
「ぜんぜんっわかりません!仲良くしたかったら一緒に学ぼうって言うんじゃないんですか?」
「ソ、ソウデスネ」
正論をぶつける手強い乙女アイリスに王子は情けなく眉を下げる。
1分過ぎました、とアイリスは去ろうとするので王子も縋るように歩く。
「アイリスー、リィお願い!かまって~寂しくて死んじゃう!」
「アンタは兎か!」
「リィそれは迷信だよ、真実の兎はボッチが好きな生き物なんだよ?ナワバリに過敏だから」
「じゃあ殿下もボッチになれば良いと思いまーす!」
「リィ~!勘弁して意地悪しないで!」
停車場まで追いかけてきた王子にとうとうアイリスは……
「……ふ、フハハハハ。おバカさんね、殿下……あなたどうしてそう私にかまうの?」
涙を浮かべて大笑いするアイリスに王子はやっと安堵する。
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