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しおりを挟む「なぁ、二回目の茶会はいつ頃になる?」
「え、そうですね。予定では二週間後となりますが、それが何か?」
「いや、なんでもない。そうか二週間後か……」
どうしたことかクラウディオ王子は待ち遠し気にしているように思えた、だが、あの人間関係に疎い王子がそのような事を気にするはずがないと従者は思い、いつもの仕事に没頭する。
いままでも人との関りを極力避けてきた彼が、アレシア・ビスカルディ侯爵令嬢のことを気遣っているなどと想像できようか。
”あぁ、変だな……どうして彼女の事ばかり思い浮かべるのだろう……いまキミは何をしている?この暑い青空の下で花を愛でているのか、それとも……ダメだ!仕事に集中できない!”
彼は執務室を出て気分転換をすることにした、入違うように書類の束を持って来たチェルソと会う。
「おや、お手洗いですか」
「いいや、気分転換に外へ出てみようかと」
「はぁ?気分転換ですって!?どういう風の引き回しですか」
チェルソは信じ難いことだと彼の顔をマジマジと見た、薄っすらとだが頬が赤い。もしや病気なのではと驚く。
「病気……あぁそうなのかも知れない、私は熱病に犯されているかのようなんだ」
「なんと!それは宜しくないです、隣の部屋に参りましょう。簡易なベッドの用意がございます」
「いやそれには及ばない、きっと散策していれば自然と落ち着くさ」
「はあ?んなバカな」
***
急遽、医務室に連行された王子は「なんでもないと言っている」と抵抗をした。だが、その顔は真っ赤でただ事ではないとチェルソは言う。
「何がなんでもないですか!そのように赤くなって、以前から思っていたのですよ、貴方は休息が必要なのだと」
「だ、だからそれは……」
うまく伝えられないもどかしさを抱いて苛立つ王子だ。そして、とうとう医者の前に突き出されてしまうのだ。
「で、どのような症状なのですか?」
「う……それはあることを考えると熱が出てしまうのだ、だが病気ではない!断じて!」
「ふうむ、よくわかりませんな。とりあえず熱を測りましょうか」
医者は王子の熱と脈を測った、確かに鼓動が早い気がしたが何か可笑しいと気が付く。
「うーむ、熱はありませんな。ですが、頬は紅潮しておりドキドキしておられる」
「う、うむ……そうなのだ」
意を決して王子は医者に近づきコソコソと耳打ちをする。
チェルソは耳を攲てたが聞こえない、不服そうにどうして聞かせてくれないのだと膨れた。
しばらく聞いていた医者はニッコリ微笑み、「これは不治の病ですな、医者の私ではどうすることも出来ない」と言った。
それを聞いたチェルソはそれでは困るじゃないかと怒鳴り散らす。
「まぁまぁ、落ち着きなさいな。不治の病には違いないですが命に別状はございませんよ」
「え?どういうことだ?わけがわかりませんぞ」
すると医者はチェルソの耳に近ずくと囁いた。
「恋の病ですから、処方箋はだせないのですよ」
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