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しおりを挟む「うおおおぉぉ!せやぁああ!」
鋭い剣戟でも持って猛進するクラウディオは騎士隊長に驚かれる、何かに憑りつかれたかのようだと畏怖した。
「王子殿下、なにをそのように荒ぶるのですか?剣は鋭いが粗々しいですぞ」
「ああ……私はその、何かに集中していないとすぐにダラしなくなってしまうのだよ」
「はあ?そうなのですか、よくわかりませんが剣が荒いと怪我をしかねません。ご注意を」
「うん、わかったよ」
彼は滝のような汗を拭うと「ふぅ」と溜息を吐く、それから少し落ち着いたのか穏やかな顔をする。
「チェルソ、悪いが私は先に汗をシャワーを浴びて来る。お前達はゆっくり休憩を取るがいい」
「はい、王子。そのように致しますお疲れ様でございます」
チェルソは医者に『不治の病』であると説明を受けた、だがしかし、チェルソ自身が恋というものに疎い。彼には婚約者はいたが「恋」とはなんなのか分かっていなのだ。
「不治の病か……私にはわからないな」
「なんです、色恋沙汰の悩みですかい?」
騎士の一人が目敏く飛びついてきて「ニタニタ」と笑う。どうにもこのような手合いはどこにでも湧いて面倒である。
「あぁ……私の話じゃないんだ、深く追求してくれるな」
***
そうこうしているうちに二度目の茶会が催された、場所は宮廷の花園だ。やや暑さが引いた庭にはコスモスが揺れている。
「お招きありがとうございます、殿下」
「あ、あぁ!よ、ようこそ、この花束を君に!」
それは小さめのヒマワリにクリーム色のスプレー薔薇などをあしらった可愛い花束だった。やはり彼女は美しく微笑み「素敵」と言った。
ドギマギしている王子に対して余裕顔のアレシア嬢だ。
「ありがとうございます、先日の花束も勿体なくてドライフラワーにしましたのよ」
「どらい?」
「ドライフラワーです、枯れてもいつまでも美しく残るんですよ」
「そ、そうなのか。ではその花はずっと其方のそばにあるのだな」
「はい、ずっと一緒ですわ」
ニコニコと笑うアレシアは眩しくて”目が潰れそうだ”と目を細める、どうにも恋しくてやまないクラウディオはメロメロなのだが、思うように言葉がでないようだ。
時々、会話がぶつりと途切れ困り果てたクラウディオは女性は好まないであろう剣の話をしてしまう。
「――こう騎士団長は斬りかかってくるのだが、それを避けて切り込んだ時は……あ、済まないつまらないだろう?」
彼は悄気て俯いてしまうのだがアレシアは「それでどうなったのですか?」と前のめりに聞いてくる。
「え、この話はつまらなくないのか?」
「いいえ、面白いですわ!私の知らない世界ですもの、もっと聞かせてくださいな」
「そうか!では火力演習にでた時の事を話そうか!」
盛り上がるふたりを余所にメイドや侍女は『なんて色気のない話だろう』と欠伸を噛み殺して呆れていた。
「ねぇ、お嬢様。もっと恋に繋がるような話はしないのですか?」
「ええ、だって面白いじゃないの。剣戟のお話は興味深いわ」
「花やお菓子の話よりも?」
「そうよ!ミュゼはわかってないのねぇ」
「はあ……」
それから数日後のこと。
ずっと幽閉されていたキアラ第二王子が漸く解放された。彼は大きく伸びをすると早速とアレシアへ手紙を認めた。だが、その手紙は検閲に引っ掛かり届けられることはない。
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