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それぞれの末路
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虚言を並べて断罪するために動いた愚者たちは騎士らに連行されていった。王子もヒーナも暴れて抵抗した為に罪が加算された。祝いの場を台無しにした彼らの未来は明るいわけがない。
喧騒で荒れた式場だったが、場にいた宰相の一喝で鎮静化した。
愚王の失脚がほぼ確定した今、国で一番発言力があるのはナディアの祖父で宰相にほかならない。
国が瓦解した今後は王を持たない共和国として変貌していくだろう。
学園長が閉会を宣言すると共に、会場の空気はがらりと変わった。堅苦しさから解放された学生達は”わぁ!”っと歓声を上げた。
会場の端に控えていた楽団が軽やかなダンス音楽を奏でだし、一気に盛り上がる。
誰ともなく踊り始めた卒業パーティーはどんどん盛況になって行く、そして会場の後方に設置された立食スペースには腹を空かせた者達が群がった。
みんなシャンパングラスを片手に祝杯を掲げて「卒業おめでとう」と言葉を交わしている。親睦を深め合う意味もあるこの祝いの席では見知らぬ者同士で語り合い、又はダンスに興じる。
ナディアは壁の花になろうと決め込んでいたので人を掻き分けて動いていた。
すると背後から追って来たらしい祖父が声を掛けて来た、止む無く振り向き礼を取る孫のナディアに祝いの言葉を贈る祖父は好々爺の顔を綻ばせている。
「おめでとうナディア、次は成人式だな」
「あら、お爺様こそおめでとう。初代大統領ですわね」
「おいおい、気が早いことだ。まだ何も決定しておらん」
就任どころか立国の会議はこれからである、逸った発言をした愛孫を窘めてから真横にいた人物を紹介する。
青みがかった黒髪をした青年が穏やかな笑みを浮かべて立っていた、そして彼女に微笑みかけ会釈する。
「彼は隣国から遊学へ来たチェスタ殿下だ、一年間我が家に滞在が決まっている。仲良くしてやってくれ」
「チェスタ・ブロッカです、初めましてリフレート嬢よろしくね」
「初めましてチェスタ殿下、ナディア・ルフィンス・リフレートでございます。遊学というと学園に通うのですか?」
卒業してしまうナディアは少し残念そうに言ったが、遊学とはいっても政務を学ぶために入国したらしい。
「私は2年前に自国の学園を卒業してますから、学び通うのは議事堂だけですね。貴国の歴史が変わるタイミングで来られたことを幸運に思います」
「まぁ、そうでしたの。慌ただしくなると思いますが宜しくお願いします、いろいろ御案内いたしますわ」
「ありがとう、キミと出会えたことも幸せに思うよ」
ナディアは改めて異国の王子へ歓迎の意を伝えた。すると手を優しく掴まれて「どうか一曲」と誘われた。
新しい出会いにナディアの心は喜びに震えていた。
***
学生たちがパーティーを満喫していた同時刻。
王城の地下牢に囚われた王子とヒーナはそれぞれ別の鉄格子を掴んで咆えていた。
「なんだここは!いくらなんでも酷いぞ!せめて貴族牢に移してくれ!俺は王子で未来の王なんだぞ!」
未だに”王子”の身分を笠に叫ぶ彼は現状を把握しよとしなかった、待遇の酷さから察すれるはずなのだがちっとも考えないのだ。
一方で、ヒーナもまた貴族風を吹かせて牢屋を警邏して歩く看守兵に向かって叫ぶのだ。
「私は未来の王妃になる女なのよ!こんな不敬なこと許されるわけがないわ!早く出して、出しなさいよう!」
明るく楽しい未来などとっくに潰えているのに彼も彼女も似たような苦情を訴えてきて喧しい。
やがて、王国が瓦解して共和国と名を変えたことを知るのは半月後の事である。
知ったところで好転などはしないが、身分を剥奪された彼らはただの平民に落ちたことを聞いて絶望した。
「平民……この俺が?なんでだよ!ちょっと前まで王族で未来の王で……あぁ黄金の玉座は俺のものになるはずだったのに!なんでだよー!」
受け入れられない元王子は喚き散らして暴れた、しかし頑強な檻が崩れるはずもない。
すると少し離れた所から「やかましい」と唸る声が聞こえて来た。
「その声は!父上、父上だな!」
「煩いぞ馬鹿者が、食って寝るだけが楽しみなのだ邪魔するでない」
「え……父上?」
抗う愚息とは違ってとうに諦めているらしい元王は生かされているだけ儲けものだと呟くと惰眠に落ちて行った。
かび臭くて冷たい石床が彼らの住まいだ、命が燃え尽きるまでそこから出ることはない。
精神が脆弱過ぎた元王子フレッドは心を壊してしまい、病んで行った。
そして王族ではなかったヒーナは15年ほどの刑期を終えて放逐された。
美しかった美貌を失った彼女を誰も相手にしなかったし、生家に縋ろうと尋ねるも屋敷は更地になっていた。
「お父様、お母様……どこへ行ったの?」
連帯責任を負わされた男爵家は15年前に身分を奪われて貧民街へ移り住んでいた。
これは、王国から名を変えた、とある国の昔の話である。
完
喧騒で荒れた式場だったが、場にいた宰相の一喝で鎮静化した。
愚王の失脚がほぼ確定した今、国で一番発言力があるのはナディアの祖父で宰相にほかならない。
国が瓦解した今後は王を持たない共和国として変貌していくだろう。
学園長が閉会を宣言すると共に、会場の空気はがらりと変わった。堅苦しさから解放された学生達は”わぁ!”っと歓声を上げた。
会場の端に控えていた楽団が軽やかなダンス音楽を奏でだし、一気に盛り上がる。
誰ともなく踊り始めた卒業パーティーはどんどん盛況になって行く、そして会場の後方に設置された立食スペースには腹を空かせた者達が群がった。
みんなシャンパングラスを片手に祝杯を掲げて「卒業おめでとう」と言葉を交わしている。親睦を深め合う意味もあるこの祝いの席では見知らぬ者同士で語り合い、又はダンスに興じる。
ナディアは壁の花になろうと決め込んでいたので人を掻き分けて動いていた。
すると背後から追って来たらしい祖父が声を掛けて来た、止む無く振り向き礼を取る孫のナディアに祝いの言葉を贈る祖父は好々爺の顔を綻ばせている。
「おめでとうナディア、次は成人式だな」
「あら、お爺様こそおめでとう。初代大統領ですわね」
「おいおい、気が早いことだ。まだ何も決定しておらん」
就任どころか立国の会議はこれからである、逸った発言をした愛孫を窘めてから真横にいた人物を紹介する。
青みがかった黒髪をした青年が穏やかな笑みを浮かべて立っていた、そして彼女に微笑みかけ会釈する。
「彼は隣国から遊学へ来たチェスタ殿下だ、一年間我が家に滞在が決まっている。仲良くしてやってくれ」
「チェスタ・ブロッカです、初めましてリフレート嬢よろしくね」
「初めましてチェスタ殿下、ナディア・ルフィンス・リフレートでございます。遊学というと学園に通うのですか?」
卒業してしまうナディアは少し残念そうに言ったが、遊学とはいっても政務を学ぶために入国したらしい。
「私は2年前に自国の学園を卒業してますから、学び通うのは議事堂だけですね。貴国の歴史が変わるタイミングで来られたことを幸運に思います」
「まぁ、そうでしたの。慌ただしくなると思いますが宜しくお願いします、いろいろ御案内いたしますわ」
「ありがとう、キミと出会えたことも幸せに思うよ」
ナディアは改めて異国の王子へ歓迎の意を伝えた。すると手を優しく掴まれて「どうか一曲」と誘われた。
新しい出会いにナディアの心は喜びに震えていた。
***
学生たちがパーティーを満喫していた同時刻。
王城の地下牢に囚われた王子とヒーナはそれぞれ別の鉄格子を掴んで咆えていた。
「なんだここは!いくらなんでも酷いぞ!せめて貴族牢に移してくれ!俺は王子で未来の王なんだぞ!」
未だに”王子”の身分を笠に叫ぶ彼は現状を把握しよとしなかった、待遇の酷さから察すれるはずなのだがちっとも考えないのだ。
一方で、ヒーナもまた貴族風を吹かせて牢屋を警邏して歩く看守兵に向かって叫ぶのだ。
「私は未来の王妃になる女なのよ!こんな不敬なこと許されるわけがないわ!早く出して、出しなさいよう!」
明るく楽しい未来などとっくに潰えているのに彼も彼女も似たような苦情を訴えてきて喧しい。
やがて、王国が瓦解して共和国と名を変えたことを知るのは半月後の事である。
知ったところで好転などはしないが、身分を剥奪された彼らはただの平民に落ちたことを聞いて絶望した。
「平民……この俺が?なんでだよ!ちょっと前まで王族で未来の王で……あぁ黄金の玉座は俺のものになるはずだったのに!なんでだよー!」
受け入れられない元王子は喚き散らして暴れた、しかし頑強な檻が崩れるはずもない。
すると少し離れた所から「やかましい」と唸る声が聞こえて来た。
「その声は!父上、父上だな!」
「煩いぞ馬鹿者が、食って寝るだけが楽しみなのだ邪魔するでない」
「え……父上?」
抗う愚息とは違ってとうに諦めているらしい元王は生かされているだけ儲けものだと呟くと惰眠に落ちて行った。
かび臭くて冷たい石床が彼らの住まいだ、命が燃え尽きるまでそこから出ることはない。
精神が脆弱過ぎた元王子フレッドは心を壊してしまい、病んで行った。
そして王族ではなかったヒーナは15年ほどの刑期を終えて放逐された。
美しかった美貌を失った彼女を誰も相手にしなかったし、生家に縋ろうと尋ねるも屋敷は更地になっていた。
「お父様、お母様……どこへ行ったの?」
連帯責任を負わされた男爵家は15年前に身分を奪われて貧民街へ移り住んでいた。
これは、王国から名を変えた、とある国の昔の話である。
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