虚言癖の友人を娶るなら、お覚悟くださいね。

音爽(ネソウ)

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「結婚まで後半年か……あぁボクは良く耐えたものだ」オフェリアに手を出していない事を自画自賛する王子だったが、褒める者はいない。王族にとって一線を越えてはならない事は当たり前の慣習だからだ。
王族の居住スペースは最上階とその下で、異例で与えられたオフェリアの居室は王女の部屋に当たる。時々アルベリックが用もないのに彼女の居室前の廊下をうろつくことが目撃されたが侍従たちは「見なかった」ことにしていた。
それでもたまに油断をして王妃に見つかっては扇で盛大に叩かれていた。

オフェリアはというと結婚式当日に王子の使う白いクラバットに刺繍を刺していた。白糸で刺すので目立ちはしないが光の当たり具合で浮かび上がるのは美しいものである。ベタではあったが白い薔薇を縫い付けていた。
”あなたを愛しています”という花言葉を用いる為である。
「ふう、もう少しで完成ね。急に刺してみたくなったけどなんとかなりそう」
彼女はお式まで内緒にしていたかったのだが、目敏い王子にすぐにバレてしまった。少し残念に思ったが大はしゃぎして喜んだ彼に「仕方ないわ」と諦めた。

「うふ、面差しはすっかり成人なのに子供っぽいのよね」
婚約してからいろいろあったが、王子の背丈は10センチほど伸びて背伸びしないと顔に触れられなくなっていた。
侍従らの目を盗んで頬にキスが出来なくなったことを少し残念に思うのだった。
そんな事を考えていたら控えていた侍女が「お茶にいたしましょう」と声かけて来た、彼女は刺繍に夢中で気が付かなかったが時計の針は15時を回っていた。

「ありがとう、王妃様に戴いた紅茶が飲みたいわ、それからジャムクッキーを出しましょう貴女も一緒にね!」肩をゴリゴリ解しながら言う。
「まあ!私も宜しいんですか?あ、でしたら使いにだしてるメイドも宜しいでしょうか?」
水差しの交換にでているらしいメイドを思って侍女はお願いした。
「もちろんだわ、遠慮しないで頂戴!美味しいものは分けて食べたほうがより美味しいのよ」
快諾した主に侍女が礼を述べたと同時にメイドが戻ってきた、身内だけの茶会を開こうとオフェリアが言ったのだが託けを頼まれたらしいメイドが「王妃様がお呼びです、お茶はそちらで召し上がってください」と頭を下げた。

「そう、仕方ないわね。お茶はアナタたちだけで楽しんで頂戴な」
侍女が付いて行くと申し出たが、一階上に行くだけだからと断り、廊下にいた護衛だけを連れてオフェリアは向かう。急にどうしたことだろうと彼女は訝しんだが、王族の気まぐれは珍しいことではない。

「参りました王妃様」優雅にお辞儀をして王妃の居室に訪れたオフェリアだったが、招かれたのは自分だけではないと気が付く。愛しい婚約者アルベリックと見慣れない少女がそこにいた。
顔を上げた瞬間に睨まれた気がしたが、少女は能面のような顔になって澄ましている。ただ、それだけなら捨て置いたのだが、少女が彼の腕に絡まるようにしていたことが気になった。

”何者かしら?”頬に手を当てて困惑のポーズをとりアルベリックを見つめるも彼は苦笑するだけだった。

***

王妃がそれぞれ席に着くように言った、とうぜん婚約者の自分が彼の隣にと思ったが少女が邪魔をしてきて叶わなかった。そして「私この城に慣れてないからなにかと不安でぇ側にいたいのぉ」と半べそを掻いて王子を見上げていた。
”誰かに似ている”とオフェリアは嫌な気分になったが、やむなく対面に座る。各人に茶が行き渡ったタイミングで王妃が飲む前に「挨拶なさい」と少女に言った。
「え~?先ほどしたばかりですぅ、まさかこの女に頭を下げろと?私は王女ですわ」
身分差を武器に抵抗する少女だったが王妃は口だけ弧を描いて真顔になる、かなり立腹している時の表情だった。

「挨拶をなさい、元王女」と命令口調の王妃はかなり怖い。
するとグズグズとしながらやっと立ち上がった少女は「アルニ王国のルルーラ第二王女ですわ!」とソッポを向いたまま自己紹介をする。
国名を聞いたオフェリアは少し意地悪したくなって「あぁ、我が国の保護下になった気の毒な方ね」と良い笑顔を返した。
その言葉に怒った元王女は「なんですって!この下賤の者が!」と反論してくる。
元と言われたにも拘わらず彼女はいまだ王族気取りのようである。

「国家が解体されようが私は生粋の王族で王女よ!なんでお前なんかに愛想を振り撒かなければならないの!」
言葉が過ぎる少女はピリピリした空気が読めないらしい。
「……ルルーラ、言葉を慎みなさい、父君は処刑され王家が解体された今、あなたの身分はありません平民同然ですよ。彼女はアルと結婚して侯爵夫人になるのです、身分を弁えるのはお前ですよ」

その言葉にも屈しない元王女ルルーラはとんでもないことを言いだした。
「でしたら私がその女に代わりアル様と結婚しますわ!そうすれば問題ないじゃない!」
「は?……キミは彼女を侮辱するのか?」
オフェリアを溺愛している王子に”その女”と言ったのは拙かった。

「だーって、2歳も年上の”オバサン”より若くて可愛い私のほうが万倍良いはずよ!」

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