完結 白皙の神聖巫女は私でしたので、さようなら。今更婚約したいとか知りません。

音爽(ネソウ)

文字の大きさ
11 / 15

暗殺者




「なんで……」
自分達が拒絶されていることに気が付いたカルミネ・サンボニッチは動揺を隠せない。神聖教会は各国に多大な影響力を与える、総本山としてその名を欲しいままにしてきたサンボニッチは風前の灯にあるとやっと理解した。

だがそれで引く彼ではない。

「どうしてだ!アデリナは私を愛しているはずだろう?何故拒絶するのだ!」
意味がわからないと嘆くカルミネを見て「愚かな」と思わずにおれないエルレイジだ。


「どうやら杞憂だったようだな、なあセルティ?」
「はい、皇太子殿下の言う通りにございます」
巫女の結界の性能の良さに驚嘆しつつ、その見事さに敬服している皇太子一行はクスクスと嘲笑でカルミネたちを煽った。

苛立ったカルミネは「キッ」とそちらを睨んだが、先ほど”皇太子”呼ばれた人物を再度確認して畏怖する。
「くっ……貴殿は……」
「おや、誰かと思えばサンボニッチの王子ではないか。どうした?さっさと入ったらどうだ」
「んな!?」

思わず反抗しかけた彼だったが相手が帝国のエルレイジ・レインバルト皇太子と知り歯噛みした。しばし深呼吸して冷静さを取り戻す。

「ど、どうか巫女にお目通りしたい、口添えをしていただけないか?」
「ほう、巫女様を敬称なしで呼ばれるのか。それはそれは尊大な事だ、ならば自力で入国されるが宜しい」
「か、彼女は私の婚約者だ!敬称など省いて当然!」

その言に呆れた皇太子は「それならば余計に手出しすまい」と声高に笑って行ってしまう。焦ったカルミネは何度も待ってくれと言ったが聞く耳を持たなかった。


「カルミネ様、ここは親書を送ってからが宜しいかと」
「親書だと!?結界で阻まれているのにどうやって?」
「あ、はあ……そうでした」
失言した側近は頭を垂れて詫びた、その頭をパシンと小突いて苛立ちの矛先を向ける。


***


「あらまぁ、カルミネが来ているですって?」
その報を聞いたアデリナは苦虫を嚙み潰したような顔をする、一目でもその姿を目にしたくないと思った彼女は「おええ」っとえずく真似をした。

「はは、お行儀が悪いですよ巫女様」
「う、許して頂戴、教皇様。それほどに嫌な人物なのよ、今更にやってきてどうしようと言うのかしら」
「それはまぁ、元鞘に戻りたいと思ったのでしょう」
「うげえぇぇ」
又も下品な物言いをしてしまった彼女である。



それからの彼女は街道を拓く者達への差し入れを違う方法で行った。転移である。
教皇から教えて貰い短距離ならばできるようになったのだ。
「ほぅ……若干眩暈がするわね、でもこれならば従者を伴うこともせずに出来るわ」

簡単に行き来できるようになった彼女は楽し気にエルレイジらに会いに行った。
「こんにちは、皆さん。今日も御精がでますわね」
「やあ!巫女様、こんにちは」

エルレイジはとても嬉しそうに彼女の元へ歩み寄った。身分は明かせないままだったが、今はそれで良いのだと彼は思っている。
「時に大丈夫ですか?その……サンボニッチから良からぬ輩が」
「ええ、知っていてよ、でも平気だわ。いざとなれば転移しちゃうから」
彼女はにこやかに答えてパインジュースを飲んでいた。


だがしかし、それを遠目から覗き込む不埒なヤツらがいた。ブリジッタ・ビンテル侯爵令嬢が放った暗殺者である。
「さ~て、どのように仕留めようかねぇ」
「きひひひ……」


感想 2

あなたにおすすめの小説

『お前のためを思って言っている』が千回記された日記帳が、社交界に流出した件

歩人
ファンタジー
「お前のためを思って言っている」「普通はこうだろう?」「お前が悪いから怒るんだ」——ディートリヒ侯爵子息は、婚約者のカティアにそう言い続けた。3年間、毎日。カティアは日記をつけていた。恨みではない。「何が普通なのか」を確かめるために。日記には日付と、彼が言った言葉だけが記されている。感想も解釈もない。ただ事実だけ。婚約破棄の場で、カティアは日記を読み上げなかった。ただ、茶会で親しい令嬢に見せただけだ。令嬢たちは青ざめた。「これ、全部言われたの?」日記は写本され、社交界に広がった。ディートリヒ本人は「何がおかしいのかわからない」と主張した。——それが一番怖いのだと、誰もが理解した。

悪意のパーティー《完結》

アーエル
ファンタジー
私が目を覚ましたのは王城で行われたパーティーで毒を盛られてから1年になろうかという時期でした。 ある意味でダークな内容です ‪☆他社でも公開

《完結》悪女と噂されたわたくしのざまぁ

ヴァンドール
恋愛
悪女と噂のわたくしとの結婚なら、どれほど軽んじても問題はないと思っていた旦那様。 ところが……。

愚者による愚行と愚策の結果……《完結》

アーエル
ファンタジー
その愚者は無知だった。 それが転落の始まり……ではなかった。 本当の愚者は誰だったのか。 誰を相手にしていたのか。 後悔は……してもし足りない。 全13話 ‪☆他社でも公開します

離縁され隣国の王太子と海釣りをしていたら旦那様が泣きついてきた。私は別の隣国の王太子と再婚します。

唯崎りいち
恋愛
「真実の愛を見つけた」と言って、旦那様に一方的に離縁された侯爵令嬢。だが彼女の正体は、大陸最大級の鉄鋼財閥の後継であり、莫大な資産と魔力を持つ規格外の存在だった。 離縁成立から数時間後、彼女はすでに隣国の王太子と海の上でカジキ釣りを楽しんでいた。 一方、元旦那は後になって妻の正体と家の破産寸前の現実を知り、必死に追いすがるが——時すでに遅し。 「旦那様? もう釣りの邪魔はしないでくださいね」 恋愛より釣り、結婚より自由。 隣国王太子たちを巻き込みながら、自由奔放な令嬢の人生は加速していく。

いや、無理。 (3/27・0時完結)

詩海猫(9/10受賞作発売中!)
恋愛
細かいことは気にせずお読みください。 一旦完結にしましたが、他者視点を随時更新の間連載中に戻します。 もはや定番となった卒業パーティー、急に冷たくなって公の場にエスコートすらしなくなった婚約者に身に覚えのない言い掛かりをつけられ、婚約破棄を突きつけられるーーからの新しい婚約者の紹介へ移るという、公式行事の私物化も甚だしい一連の行動に、私は冷めた瞳をむけていたーー目の前の男は言い訳が終わると、 「わかってくれるだろう?ミーナ」 と手を差し伸べた。 だから私はこう答えた。 「いや、無理」 と。

王家の面子のために私を振り回さないで下さい。

しゃーりん
恋愛
公爵令嬢ユリアナは王太子ルカリオに婚約破棄を言い渡されたが、王家によってその出来事はなかったことになり、結婚することになった。 愛する人と別れて王太子の婚約者にさせられたのに本人からは避けされ、それでも結婚させられる。 自分はどこまで王家に振り回されるのだろう。 国王にもルカリオにも呆れ果てたユリアナは、夫となるルカリオを蹴落として、自分が王太女になるために仕掛けた。 実は、ルカリオは王家の血筋ではなくユリアナの公爵家に正統性があるからである。 ユリアナとの結婚を理解していないルカリオを見限り、愛する人との結婚を企んだお話です。

最愛の婚約者に婚約破棄されたある侯爵令嬢はその想いを大切にするために自主的に修道院へ入ります。

ひよこ麺
恋愛
ある国で、あるひとりの侯爵令嬢ヨハンナが婚約破棄された。 ヨハンナは他の誰よりも婚約者のパーシヴァルを愛していた。だから彼女はその想いを抱えたまま修道院へ入ってしまうが、元婚約者を誑かした女は悲惨な末路を辿り、元婚約者も…… ※この作品には残酷な表現とホラーっぽい遠回しなヤンデレが多分に含まれます。苦手な方はご注意ください。 また、一応転生者も出ます。