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暗殺者
「なんで……」
自分達が拒絶されていることに気が付いたカルミネ・サンボニッチは動揺を隠せない。神聖教会は各国に多大な影響力を与える、総本山としてその名を欲しいままにしてきたサンボニッチは風前の灯にあるとやっと理解した。
だがそれで引く彼ではない。
「どうしてだ!アデリナは私を愛しているはずだろう?何故拒絶するのだ!」
意味がわからないと嘆くカルミネを見て「愚かな」と思わずにおれないエルレイジだ。
「どうやら杞憂だったようだな、なあセルティ?」
「はい、皇太子殿下の言う通りにございます」
巫女の結界の性能の良さに驚嘆しつつ、その見事さに敬服している皇太子一行はクスクスと嘲笑でカルミネたちを煽った。
苛立ったカルミネは「キッ」とそちらを睨んだが、先ほど”皇太子”呼ばれた人物を再度確認して畏怖する。
「くっ……貴殿は……」
「おや、誰かと思えばサンボニッチの王子ではないか。どうした?さっさと入ったらどうだ」
「んな!?」
思わず反抗しかけた彼だったが相手が帝国のエルレイジ・レインバルト皇太子と知り歯噛みした。しばし深呼吸して冷静さを取り戻す。
「ど、どうか巫女にお目通りしたい、口添えをしていただけないか?」
「ほう、巫女様を敬称なしで呼ばれるのか。それはそれは尊大な事だ、ならば自力で入国されるが宜しい」
「か、彼女は私の婚約者だ!敬称など省いて当然!」
その言に呆れた皇太子は「それならば余計に手出しすまい」と声高に笑って行ってしまう。焦ったカルミネは何度も待ってくれと言ったが聞く耳を持たなかった。
「カルミネ様、ここは親書を送ってからが宜しいかと」
「親書だと!?結界で阻まれているのにどうやって?」
「あ、はあ……そうでした」
失言した側近は頭を垂れて詫びた、その頭をパシンと小突いて苛立ちの矛先を向ける。
***
「あらまぁ、カルミネが来ているですって?」
その報を聞いたアデリナは苦虫を嚙み潰したような顔をする、一目でもその姿を目にしたくないと思った彼女は「おええ」っとえずく真似をした。
「はは、お行儀が悪いですよ巫女様」
「う、許して頂戴、教皇様。それほどに嫌な人物なのよ、今更にやってきてどうしようと言うのかしら」
「それはまぁ、元鞘に戻りたいと思ったのでしょう」
「うげえぇぇ」
又も下品な物言いをしてしまった彼女である。
それからの彼女は街道を拓く者達への差し入れを違う方法で行った。転移である。
教皇から教えて貰い短距離ならばできるようになったのだ。
「ほぅ……若干眩暈がするわね、でもこれならば従者を伴うこともせずに出来るわ」
簡単に行き来できるようになった彼女は楽し気にエルレイジらに会いに行った。
「こんにちは、皆さん。今日も御精がでますわね」
「やあ!巫女様、こんにちは」
エルレイジはとても嬉しそうに彼女の元へ歩み寄った。身分は明かせないままだったが、今はそれで良いのだと彼は思っている。
「時に大丈夫ですか?その……サンボニッチから良からぬ輩が」
「ええ、知っていてよ、でも平気だわ。いざとなれば転移しちゃうから」
彼女はにこやかに答えてパインジュースを飲んでいた。
だがしかし、それを遠目から覗き込む不埒なヤツらがいた。ブリジッタ・ビンテル侯爵令嬢が放った暗殺者である。
「さ~て、どのように仕留めようかねぇ」
「きひひひ……」
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