完結 婚約者に裏切られたので、異世界雑貨店で稼ぎます。

音爽(ネソウ)

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「初めまして、アンジェル・エイシャントと申します」
「……あぁ」
初めての顔合わせは最悪で、格下のはずのバウチアン・ダンダレーノ伯爵令息は終始不遜な態度であった。それもそのはず、エイシャント侯爵はかなり伯爵に恩義があり頭が上がらないのだ。

ダンダレーノ家は商家で手広くやっている辣腕家で、つい先日も融資を受けたばかりなのだ。そんな事情からエイシャント卿はゴマスリに忙しい。

「素敵なお衣装でございますな、なぁアンジェルよ」
「ええ、本当にネクタイも素晴らしくて」
「ふん」

こんな風に太鼓持ちよろしく、思ってもいないおべんちゃらでもってヘコヘコしなければならなかった。だが、帰宅の路に着いた途端悪口のオンパレードである。
「まったく!これだから新興貴族は!知っているか?あヤツめは爵位も買ったのだぞ!忌々しいったらありゃしない」
「お父様、融資いただいてるのですから、もう少し穏便に」
「わかっておるわい!向こうに行ったら存分に甘え金をひっぱり出せ!それがお前の役目だ!」
「……」

父親も大概だと彼女は思った、いくら政略結婚とはいえ己の願望剥き出しで上手くいくのだろうかと悩む。それにバウチアンはアンジェルに興味がなさそうなのも気にかかった。
”はぁ、私はいったいどうなるのかしら、とても幸せになれるとは思えない”言葉に出来ない不安を心の中で何度も反芻するのだった。


***

婚約者となって二カ月が過ぎた頃、彼女は思いがけない言葉を聞くことになる。それは二回目の茶会でのことだった。
「え、いまなんて?」
「だから婚約破棄したいと言った、解消でもかまわんが何れにせよ君とは結婚したくない」
「は、あ」
ダンダレーノ有責で構わないから、早々に解消したいと言って来た。この申し出は願ったりなアンジェルだったが、父親に叱責を受けることになる。

「あ、あの、理由を伺っても宜しいでしょうか?これではあまりにも……父になんて言っていいか」
「は?理由だと!そんなものは己の顔に聞け。なんの面白みもないつまらん女め!レイチェルの方が万倍も良い!」
「レイチェル?」

あろうことか先日の夜会で会ったというレイチェル・ダウント子爵夫人を見初めたというではないか。
「あの、それは不貞行為なのでは?」
「ええい、煩いわ!俺達は赤い糸で繋がっているのだぞ!レイチェルこそが真実の愛!」
「はあ」

こうして短い婚約者期間は終了して「真実の愛」とやらにバウチアンは走って行った。





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