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アベルタ・ヴィンチ
しおりを挟む「貴女がこの靴を製作したの?素晴らしいわ、是非私に譲ってくださらない?」
愛らしい顔をした貴族の少女が声を掛けて来た、横には従者らしきがいた。緊張するメリサは数歩下がってしまう。
「あら、ごめんなさい。怖がらせるつもりはないの、私はアベルタ・ヴィンチと言いますの伯爵令嬢です」
「え、ええ、私の靴を褒めて下さるのね、有難う」
おずおずとぎこちなく挨拶するメリサだ、無理もない。前世でも今世でも平民なのだ、貴族様とどうやって対等に接して良いかわからない。
年恰好は同じくらいの16歳くらいだ、メリサは初めはドキドキしたが話してみれば普通の女子だった。威圧してくることもない。ニコニコと話しかけてくるアベルタに気を許す。
「どうぞ使ってください、お代は要りません」
「まっ!いけないわ、こんなに素晴らしいものを!皮で出来た軽量にしてキチッとした靴が只なんて」
「いいえ、良いんです。履いて見て感想を聞かせてください、お願いします」
メリサは深々と頭を下げてそう言う、困ったアベルタだったがモニターとして感想を述べるのならばと言う条件で格安で引き受けた。
「欲がない方ねぇ、金貨10枚はくだらないというのに、わかったわ。ちゃんと感想を伝えるわね」
「ありがとうございます、金貨1枚でも十分ですよ」
メリサは初めての客に大喜びだ、評判が広がれば十分だと彼女は思う。余分に作った靴はアベルタには丁度良かったらしい。
「またね、メリサ!会いに来るのはここで宜しくて?小さな小屋ね、母屋はどこに?」
「あ……いいえ、ここが私の家でして……ごめんなさい」
作業場で生活拠点である小屋を恥じる彼女は顔が真っ赤だ。
「そうなの?うーん、貴女には似つかわしくないわ、少し考えましょうか」
「はあ?」
***
それから数日後、満面の笑みを浮かべたアベルタがやってきて、着いてきて欲しいと言った。訳が分からずオロオロのメリサはとある屋敷へ赴く。
「さあ、メリサ!ご覧になって貴女の家よ、ここなら王都の真ん中で丁度いいわ」
「ええ!?こんな立派な屋敷と工房を?よ、よろしいのでしょうか」
たじろぐ彼女にアベルタは言う「靴のお礼ですから気にしないで」と、靴一足の対価にしては大きすぎると眩暈がした。
「はわわ……良いんでしょうか、畏れ多い」
「何を言っているのメリサ!私は感動したのよ、いくら歩いても疲れず靴擦れも起きないこの靴!とっても気に入ったわ、それからお願いがあるのだけど頼める?」
「は、はい!どんなことでも」
立派な屋敷を貰ってしまった彼女はコクコクと頷く他ない。
「私のお母様と御父様、それからおばぁ様の靴を作ってくださらない?お願いします」
「は、はい!喜んで!こちらこそお願いします」
こうして初めてのオーダー靴を彼女は請け負うのだった。
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