不思議森の妖精ご飯

音爽(ネソウ)

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兎のカマクラ

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「冬支度にぬかりはないので欲しい物はないですが」
「ないですが?」

妖精は兎のモフモフの毛をみつめた。
「わたしの毛にご興味が?」
「ダメですかね?」

兎は愉快そうにフスフス鼻を鳴らした。
人間も妖精もわたしたちの毛に魅せられるのですねぇとフスフスいう。

「抜け毛なら差し上げたいところですが、真冬はわたしも凍死しちゃいます」
ちょっとお待ちください。

兎は家のすぐ横に積もった雪を後ろ脚で蹴り上げはじめた。
しばらくするとこんもり雪山ができた。
今度はそれをタシンタシンと固めだす。

雪兎でも作る気かな?
ハーブティを飲みながら様子をうかがった。

今度は前足で掘り出した、なんだか犬みたいだ。
「できました!」
兎は得意げに胸の毛を膨らます。

「おぉこれはカマクラですね」
「さすが妖精さん物知りです、人間が湖の横に作ってるのを真似ました」

湖……ワカサギ釣りかな?
人間は遊ぶのが得意だなぁ

ボクと兎はカマクラで過ごすことにした。
下に枯れ葉とアザミの綿毛を敷き詰めた。

ボクは地下室の魔石を甕に入れ薪の要らないストーブを作る。
「魔法だ!すごい初めてみましたよ」

兎のモフモフに埋もれながら、とりとめのない話をした。



「――それでですね、人間がリンゴをわけてくれたのですよ!」
人間も狩るばかりじゃないんですね、と兎は興奮気味に話してくれた。

「人間は愛玩するタイプもいるからね」
毛長の猫を飼っていた姫を思い出した、あれはとても可愛い生き物だった。

「はい!でも油断はしませんよ」
友の兎が撃たれて連れて行かれたことを悲しそうに話してくれた。

ボクは人間の友人が居たことを話した、以前ほどの苦しさは減っていた。
兎はフスフス鼻をならしながら聞いている。

「ところでこのプニプニした実は甘くて美味しいですね」
「あぁそれはお菓子だよ」
ボクはテントウムシの為のお菓子について話してあげた。

「へー海の草はプニプニの実になる!」
「うんまぁ・・・ちょっと違うけど、まぁいいか」

海藻を煮溶かすってわかんないだろうな。
美味しそうに頬張る兎は幸せそう、それでいい。

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