7 / 18
6
しおりを挟む「いらっしゃいませ~ご注文は?」
女神のような笑顔を振りまいて接客に勤しむサラジーヌは毎日楽しくて仕方がない。果実全般を揃えるのが彼女の夢である。
「あ、あの、このメロンと梨のセットが小銀貨五枚って本当ですか?」
「はい、そうですよ。葡萄も美味しいですよ」
「安すぎる……」
あまりの激安に躊躇する客達だ、はじめこそは疑ったがちゃんと肉厚なメロンが供されると夢中で食べた。
「また、来ます!今度は桃を食べたいです」
「ふふ、ありがとうございます。またのお越しを」
貴重な甘味なうえに水菓子はとても高価だ、あり得ない価格設定に誰もが驚くのは無理もない。
「だって費用と言ったら最初の種くらいだもの、逆に貰い過ぎ?」
そのうちに評判が広がって店はてんてこまいになった、仕方なく従業員募集を掛けた。だが、中々人は集まらない。困ったサラジーヌはギルドへ助っ人を募集することにした。
”読み書き、計算必須 体力に自信がある方急募 給金 金貨2枚”(約20万)
すぐに人員が集まると思っていたのだが、識字率が思いのほか低い。簡単な読み書きならばまだしも「計算」が出来る人はほとんどいなかったのである。
「はぁ~見誤ったかしら、これでは営業時間を半分にしないと」
悄気る彼女だが客達は待ってはくれない。
「すみませーん、苺とメロン大盛であと桃も一皿」
「こっちも葡萄と林檎を頂戴な」
「は、はーい!ただいま!」
営業時間を短縮して悪戦苦闘するサラジーヌであった、それでもギリギリで狭い店内は待ち人でごった返す。
これはもう店を一旦閉じねばならないのではと思い始めた時だ、思わぬ助っ人がやってきたのである。
「すみません、ギルドから依頼を受けまして……あれ?」
「はい、有難う助かりま……ええええ!?」
それはサラジーヌとエメリとの再会だった、ふたりはマヌケな顔をして「あらぁ」と言った。
「まさか貴女からの依頼だったとはね、奇遇だねハハハッ」
「そ、そうですねアハハ……あ、そうだ給金と御休みについて話しましょう」
「うん、よろしく」
その後、雇用について折り合いがつき漸く本採用が決定したのだ。
「あぁ良かった!中々従業員が来てくれなくて困っていたのよ」
胸を撫で下ろす彼女は営業時間をもとに戻した、それでもギリギリだったが何とかなるだろうと思う。
「そりゃあ計算能力が必要とあるからね、そう簡単ではないのさ」
「そうなの?そう言えば絵を見て”これとこれをください”という客が多かったわ」
彼女はムムムと唸り「迂闊だった」と後悔した。
269
あなたにおすすめの小説
今度こそ君と結婚するために生まれ変わったんだ。そう言った人は明日、わたしの妹と結婚します
柚木ゆず
恋愛
「俺はね、前世で果たせなかった約束を守るために――君と結婚をするために、生まれ変わったんだ」
ある日突然レトローザ伯爵令息ロドルフ様がいらっしゃり、ロドルフ様から前世で婚約関係にあったと知らされました。
――生まれ変わる前は相思相愛で式を心待ちにしていたものの、結婚直前でロドルフ様が亡くなってしまい来世での結婚を誓い合った――。
わたしにはその記憶はありませんでしたがやがて生まれ変わりを信じるようになり、わたし達は婚約をすることとなりました。
ロドルフ様は、とてもお優しい方。そのため記憶が戻らずとも好意を抱いており、結婚式を心待ちにしていたのですが――。
直前になってロドルフ様は、わたしの妹アンジェルと結婚すると言い出したのでした。
※9月26日、本編完結いたしました。時期は未定ではございますが、エピローグ後のエピソードの投稿を考えております。
ちゃんと忠告をしましたよ?
柚木ゆず
ファンタジー
ある日の、放課後のことでした。王立リザエンドワール学院に籍を置く私フィーナは、生徒会長を務められているジュリアルス侯爵令嬢アゼット様に呼び出されました。
「生徒会の仲間である貴方様に、婚約祝いをお渡したくてこうしておりますの」
アゼット様はそのように仰られていますが、そちらは嘘ですよね? 私は最愛の方に護っていただいているので、貴方様に悪意があると気付けるのですよ。
アゼット様。まだ間に合います。
今なら、引き返せますよ?
※現在体調の影響により、感想欄を一時的に閉じさせていただいております。
婚約破棄をされるのですね? でしたらその代償を払っていただきます
柚木ゆず
恋愛
「フルール・レファネッサル! この時を以てお前との婚約を破棄する!!」
私フルールの婚約者であるラトーレルア侯爵令息クリストフ様は、私の罪を捏造して婚約破棄を宣言されました。
クリストフ様。貴方様は気付いていないと思いますが、そちらは契約違反となります。ですのでこれから、その代償を払っていただきますね。
最後のチャンス~殿下、その選択でよろしいのですね?~
柚木ゆず
恋愛
私ルーラは国王陛下の命により9年間、婚約者であるナタン殿下が次期王に相応しいかどうか秘密裏に採点を行ってきました。
そんなナタン殿下は幼い頃は立派な御方だったものの、成長と共に内面が悪化。表向きは君子なものの実際には様々な問題点がある問題児となってゆき、ついには不適当だと判断せざるを得なくなってしまいました。
ですがかつては確かに、次期国王に相応しい御方でした。ですのでお胸の中には当時のような心が残っていると信じて、最後のチャンスを用意することにしたのです。
殿下はご自身の過ちに気付き、お考えを改めてくださるのでしょうか……?
ワガママを繰り返してきた次女は
柚木ゆず
恋愛
姉のヌイグルミの方が可愛いから欲しい、姉の誕生日プレゼントの方がいいから交換して、姉の婚約者を好きになったから代わりに婚約させて欲しい。ロートスアール子爵家の次女アネッサは、幼い頃からワガママを口にしてきました。
そんなアネッサを両親は毎回注意してきましたが聞く耳を持つことはなく、ついにアネッサは自分勝手に我慢の限界を迎えてしまいます。
『わたくしは酷く傷つきました! しばらく何もしたくないから療養をさせてもらいますわ! 認められないならこのお屋敷を出ていきますわよ!!』
その結果そんなことを言い出してしまい、この発言によってアネッサの日常は大きく変化してゆくこととなるのでした。
※現在体調不良による影響で(すべてにしっかりとお返事をさせていただく余裕がないため)、最新のお話以外の感想欄を閉じさせていただいております。
※11月23日、本編完結。後日、本編では描き切れなかったエピソードを番外編として投稿させていただく予定でございます。
愛する妹が理不尽に婚約破棄をされたので、これからお礼をしてこようと思う
柚木ゆず
ファンタジー
※12月23日、本編完結いたしました。明日より、番外編を投稿させていただきます。
大切な妹、マノン。そんな彼女は、俺が公務から戻ると部屋で泣いていた――。
その原因はマノンの婚約者、セガデリズ侯爵家のロビン。ヤツはテースレイル男爵家のイリアに心変わりをしていて、彼女と結婚をするためマノンの罪を捏造。学院で――大勢の前で、イリアへのイジメを理由にして婚約破棄を宣言したらしい。
そうか。あの男は、そんなことをしたんだな。
……俺の大切な人を傷付けた報い、受けてもらうぞ。
私との婚約は、選択ミスだったらしい
柚木ゆず
恋愛
※5月23日、ケヴィン編が完結いたしました。明日よりリナス編(第2のざまぁ)が始まり、そちらが完結後、エマとルシアンのお話を投稿させていただきます。
幼馴染のリナスが誰よりも愛しくなった――。リナスと結婚したいから別れてくれ――。
ランドル侯爵家のケヴィン様と婚約をしてから、僅か1週間後の事。彼が突然やってきてそう言い出し、私は呆れ果てて即婚約を解消した。
この人は私との婚約は『選択ミス』だと言っていたし、真の愛を見つけたと言っているから黙っていたけど――。
貴方の幼馴染のリナスは、ものすごく猫を被ってるの。
だから結婚後にとても苦労することになると思うけど、頑張って。
格上の言うことには、従わなければならないのですか? でしたら、わたしの言うことに従っていただきましょう
柚木ゆず
恋愛
「アルマ・レンザ―、光栄に思え。次期侯爵様は、お前をいたく気に入っているんだ。大人しく僕のものになれ。いいな?」
最初は柔らかな物腰で交際を提案されていた、リエズン侯爵家の嫡男・バチスタ様。ですがご自身の思い通りにならないと分かるや、その態度は一変しました。
……そうなのですね。格下は格上の命令に従わないといけない、そんなルールがあると仰るのですね。
分かりました。
ではそのルールに則り、わたしの命令に従っていただきましょう。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる