ボクが追放されたら飢餓に陥るけど良いですか?

音爽(ネソウ)

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新天地篇

水の船とウンディーネの湖

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ボクらは一晩キャンプを過ごし会議した結果、発つことを決意した。
まぁまぁ平和に暮らせたカトゥルカだった、名残惜しいが仕方ない。成り行きとはいえ、この地に棲むネプトに嫌われては長居は無理だ。


マホガニー達が取引していた各所へ退去する旨を伝え歩いた。
引き止められたが、ボクらが精霊だと知ると一斉に恐れて退いていった、なんだか腑に落ちない終わり方だ。


それからネプトと言えば発つ時に散々ゴネて暴れた、いい加減にして欲しい。
三叉槍を振り回して魔の森を刺激したものだから危うくスタンピードになりかけた。
精霊の力が魔物に作用して変に力を得たそいつ等が森から出ようとするのだ。

その魔物暴走をボクらドリアードが抑えたんだよ、ほんとう腹立つ。
「通常の2倍でかいオークが20体ほど出たっす」
「こっちもー!ラフレシア型の化物がラミンを食べようとしたわ」

そう伝令する最中もオバケキノコがマホガニーに噛みつこうとしていた。

あぁ……なんてこと。
おっとボクの方へオオカミ型魔物が襲ってきた、あとちょっとで腕が食われてたぞ。
ガチンガチンと歯を鳴らして威嚇するソレの腹に、容赦なくトゲ蔦を突き刺した。
ヤレヤレだ。


「ウンディーネ!許さないぞ夫を捨てるのか!?」
「誰がいつ結婚した?鬱陶しいのよ!この雑魚が!」

本来の力を発揮したウンディーネは体長5mはあるネプトを翻弄して仕置きした。
海水が源のネプトを真水の水球に閉じ込め、気泡の弾でボコボコにしていた。

竜体?の鱗がすべて剥がされ無惨な事に……
刺身にされたそうな鯛とでもいうか、とにかく痛そうだった。
さすがのネプトもどんどん疲弊して身体が小魚程度にまで縮んだ。

「いいこと私に振られた腹いせに漁民に迷惑かけたら承知しないからね!」
「そ、そんな、俺はただ嫁が欲しかっただけだぞ。俺を捨てないでウンディーネ!」

諦めの悪いネプトの態度に嫌気がさした彼女は「我が名のもとにその魂を霧散させる」と言い出した。
つまり存在を永劫に消去される。生物の死に近い断罪だ。

それは最も簡単な処置だけど漁民が困るだろう、ボクは人間は好かないがカトゥルカの民には良くしてもらった。
海を守護するネプトが消えた代償は大きいだろう。

そこで大穴を穿ち池を造ってネプトを放置する打開案で納得してもらうことになった。
ちなみに昏倒薬の池なのでしばらくはそこから出られない。反省しろよ。
腐っても精霊だし効果が切れれば海に帰るなりするだろう、以後は面倒見きれないよ。

ディライル国に続く河川を遡上をする、すっかり元気になったウンディーネは水の船なるものを作り出してボクらを乗せてくれた。
「凄いね、さすが四大精霊だ。流れに逆らって上るなんて」
「ふふ、そうでしょ。転移しても良いけどツマラナイから船で行くわ、でも三日もあればついちゃうけどね」

ところでウンディーネはその国に追い出されたんじゃなかった?戻って平気なんだろうか。
ボクの疑問に彼女は意味ありげに微笑んだ。

「着けばわかるわ、人間は身勝手でバカで可愛い生き物よ」
なんだかわからないがそう言うなら観察させて貰うか。


***

遡上すること三日目、宣言通りにウンディーネの古巣の湖へ到着した。
なんてことのない普通規模の水溜りだ、海を見て生活したせいで小さく見えたのかも。
俯瞰でみれば小さな街がすっぽり沈むほどは大きい。

「うん、ちょーと濁ってるから清浄化するわね」
そういうウンディーネがその身を浸して身体を光らせた、薄茶の濁りが瞬く間に青く澄んだ水へと変化する。
「やることの規模がデカイなぁ」

澄み渡る水を覗けば水棲の生き物がたくさんいた、戻った主を歓迎するかのように彼女の周囲を幾度か周遊して散った。
「綺麗な魚達でしょ、美味しいわよ。私はあまり食べないけどね」
ウンディーネが数匹捕らえてボクへ寄越した。

え、歓迎した魚を食えって……。
うん、とりあえずリリースしときますよ。

湖畔へ適当にテントを張って良いと彼女は言った。
お言葉に甘えてボクたちはテキパキ立てる、時間的に昼頃だったのでラミンとメイペルがスープを作る。
アクティとエリマが簡易テーブルを広げマホガニーが乾パンと皿を並べる。

ボクはというと林檎と味を覚えたアナナスを生やしてアクティに手渡した。
「おお、アナナスがここでも食えるんすね!やったー!しかも熟してる!」
便利だな、ボクの身体って……。

食卓を囲むボクらを遠巻きにウンディーネがソワソワ見てた、おいでと手を振れば嬉しそうにやってくる。
「ご飯という習慣も悪くないね!」
パンをスープに浸してウンディーネが嬉しそうに食べている。

「ウンディーネはひとりでここに住んでたのかい?」
「そうよ、それが当たり前。たまーに人間と恋人ごっこをしてたこともあったわ。でもね……」
言葉を濁す彼女にラミンが突っ込む。

「あったとは、なんでですぅ?」
「人間はすぐ老いるし、浮気するから……」
「するから?」

「最終的に関係を清算する時は殺さなきゃなんないの」
「ぶふぉ!?」

ラミン汚い……。
「なかなかワイルドな縁切り方なんですねぇ」アハハと強張った笑い方をするラミン。
精霊との恋は命掛けなんだなぁ。

「私の加護を優先して受け取るのだもの、裏切りにはそれなりの罰を与えるわ」
「ふむ、浮気する男が悪いです。自業自得です!」
エリマが厳しい意見で同意する、女子は怖いな。

食後、各々まったりと過ごした、腹が満たされてボクも転寝始めた時だった。
どこからともなく響く太鼓と笛の音が山頂の湖へと近づいてきた。

「ほーら、きた」
ウンディーネが少し悪い笑顔を見せた。




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