完結 汚穢聖女と浮気した貴方に用はありませんことよ?

音爽(ネソウ)

文字の大きさ
8 / 10

反旗

ロディエン・アドルナート皇子の協力の元、魅了を解くために宰相と反聖女派は城内を奔走した。さらにアンクタン国へ密かに潜伏していた帝国側の密偵達も加わって聖教国の司教達を一網打尽にせんと動いた。
精神深くまで虜にされていた被害者たちは意識の混濁や記憶障害を起こしたが、ほとんどの政務官は正常に戻った。

「霧状にして撒いた解毒剤の効果はあっと言う間に広まりました、手遅れの者もおりますが」
「あぁ、想像以上に聖女の毒は強いようだ。特に王太子の側近らは気の毒なことだ」
肉体関係にまで落ちていたダニエル・マイヤール達などは精神崩壊を起こして治療院送りとなっていた。国を担うべき若き人材が魔手に落ちたことはかなりの痛手である。

大まかに正常化は進んだが、厄介なのはアンクタン王と王太子たちだった。
確実に毒祓いをしたにも拘わらず彼らは態度を変えなかったのだ。どうやら魅了香水の影響ではなく心底ベアトリスに惚れこんでいたらしい。宰相率いる反聖女派たちに糾弾されたが、彼らは最後まで悪あがきをするつもりのようだ。

懲りない王と王子は聖女を連れて王宮奥へと立て籠りをして手を焼かす。
「国の中枢はすべて挿げ替えます、当然に王族もだ」
「うるさい!王は私だ!この国は余のもの、そして聖女様に捧げたのだ誰にも邪魔はさせぬ!」
「父上の言う通りだ!俺達はベアトリスと共にこの国を楽園化して面白おかしく暮らすのさ!」
理想郷だの桃源郷だのと捲し立てる愚かな親子は誰の言葉にも耳を貸さない。

「やれやれ……少々手荒な方法だが一番効くだろう」
邪法を解く反転魔法を、王達が立て籠る部屋に向かってロディエン皇子は唱えだした。
すると妖艶美女だったベアトリスの姿がみるみる変化して、もうもうと煙を上げて変態していくではないか。
「きぃぃぃやぁぁぁぁ!止めてぇ!苦しい、身体が熱いわ!誰か助けて!あああああ!」
突然の異変に王達は騒ぎだしベアトリスを気遣って声を荒げる。

「ベアトリス!大丈夫か!」
「余の愛しい聖女よ!」
彼女の元へ駆け寄った彼らだったが、信じられないものを目にして悲鳴を上げた。
煙る視界がゆっくり晴れて、そこに現れたのは腰が曲がり皺だらけの老女だった。

「な、……どいうことだ。ベアトリスはどこに……」
「いつのまに小汚いババアと入れ替わったんだ?」
奇妙な術を見せられた腑抜けた親子は事態が把握できていないようだ、愛しいベアトリスの姿を探している様は実に滑稽だ。そこへドアを蹴破った騎士たちが雪崩れ込んできて彼らを拘束する。

数分ほど遅れて入室したロディエンは部屋を見回して聖女の成れの果てを見つけると頭を振った。
「なんと哀れな……才もないのに無理矢理に治癒や結界術を施してきた結果がこれか、キミも教団に使い潰された被害者なのだろうな。本人の魔法力が矮小なのに酷使してきたツケがこれだ」
それを黙って聞いていた聖女が震える声で「なんの話?」と聞いてきた。

温情で差し出された手鏡を受け取った彼女は聞くに堪えない悲鳴を上げて泣き叫んだ。魔法を駆使してきたツケは急速な老化だったのだ。魔力がないのに力を使えば生命力が代価として奪われるのは必然だ。
聖教国が彼女に施していた邪法によって若さを保ち女の魅力を最大限に引き出していたのだ。彼女を襲った先ほどの焼けるような痛みは術が解けていく反動だったようだ。

「な、どうして!?私の美しい肌が……髪の毛が、あぁそんな!こんなの酷いわ!」
シワシワで白髪だらけの老女になり果てたベアトリスは現実が受け入れられずわんわん泣き叫び続けた。その傍らで聖女の真実の姿を目の当たりにしてしまった王と王太子は愕然として「なんてことだ」と戦慄く。
「あんな薄汚いババアを俺達は取り合っていたのか……」
「余の愛した聖女は虚像だったのか……そんな、そんなぁぁぁ!いくら貢いだと思っている!巫山戯るな!」

当初は怒りのおかげで自我を保っていた親子だったが、すべての魅了が抜けていくと精神崩壊を起こして廃人同然になってしまった。




感想 4

あなたにおすすめの小説

「通訳など辞書で足りる」と追放された令嬢——三国会談で、婚約者は一言も話せなくなった

歩人
ファンタジー
宮廷通訳官エレノーラは五つの言語を操り、婚約者クラウスの外交を陰で支えてきた。 だがクラウスは言った。「通訳など辞書で足りる。お前は要らない」 追放されたエレノーラは隣国で新たな道を歩み始める。 一方、クラウスは三国会談の場で辞書片手に立ち往生。 誤訳が外交問題に発展し、窮地に陥ったその場に、隣国の通訳官として現れたのは——。 「その言葉は、もう翻訳できません」

「退屈な女だ」と婚約破棄されたので去りましたが、翌日から国政が止まったそうです。え、私はもう存じませんけど?

にたまご
恋愛
公爵令嬢クラーラは、ユリウス王太子殿下に婚約を破棄された。 「退屈な女だ」「何の取り柄もない」と。 否定はしない。 けれど殿下が知らないだけで、通商条約も予算案も外交書簡も、この国の政務の大半を六年間匿名で回していたのは──この「退屈な女」だ。 婚約破棄の翌朝、宰相補佐官のレオンが焼き菓子と四十二件の緊急報告を携えて公爵邸を訪れる。 「貴女がいなくなった王宮は、控えめに申し上げて、地獄です」 ──存じません。私はもう、ただの無職ですので。

【完結】私の事は気にせずに、そのままイチャイチャお続け下さいませ ~私も婚約解消を目指して頑張りますから~

山葵
恋愛
ガルス侯爵家の令嬢である わたくしミモルザには、婚約者がいる。 この国の宰相である父を持つ、リブルート侯爵家嫡男レイライン様。 父同様、優秀…と期待されたが、顔は良いが頭はイマイチだった。 顔が良いから、女性にモテる。 わたくしはと言えば、頭は、まぁ優秀な方になるけれど、顔は中の上位!? 自分に釣り合わないと思っているレイラインは、ミモルザの見ているのを知っていて今日も美しい顔の令嬢とイチャイチャする。 *沢山の方に読んで頂き、ありがとうございます。m(_ _)m

今さら遅いと言われる側になったのは、あなたです

阿里
恋愛
夜会で婚約破棄された私は、すべてを失った――はずだった。 けれど、人生は思いもよらない方向へ転がる。 助けた騎士は、王の右腕。 見下されてきた私の中にある価値を、彼だけが見抜いた。 王城で評価され、居場所を得ていく私。 その頃、私を捨てた元婚約者は、転落の一途をたどる。 「間違いだった」と言われても、もう心は揺れない。 選ばれるのを待つ時代は、終わった。

そういう時代でございますから

Ruhuna
恋愛
私の婚約者が言ったのです 「これは真実の愛だ」ーーと。 そうでございますか。と返答した私は周りの皆さんに相談したのです。 その結果が、こうなってしまったのは、そうですね。 そういう時代でございますからーー *誤字脱字すみません *ゆるふわ設定です *辻褄合わない部分があるかもしれませんが暇つぶし程度で見ていただけると嬉しいです

死ぬまでに叶えたい十の願い

木風
恋愛
「あなたを妻として、愛することはない。おそらく、生涯抱くこともないだろう」 三年間の白い結婚——捨て置かれた王太子妃エリアーナに、側妃が『死の呪い』をかけ余命一年を宣告する。 離縁を願うも拒否され、代わりに「死ぬまでに十の願いを叶えて」と契約する—— 二人きりの外出、星空、海…ささやかな願いが王太子の心をほどいていく。

「やはり鍛えることは、大切だな」

イチイ アキラ
恋愛
「こんなブスと結婚なんていやだ!」  その日、一つのお見合いがあった。  ヤロール伯爵家の三男、ライアンと。  クラレンス辺境伯家の跡取り娘、リューゼットの。  そして互いに挨拶を交わすその場にて。  ライアンが開幕早々、ぶちかましたのであった。  けれども……――。 「そうか。私も貴様のような生っ白くてか弱そうな、女みたいな顔の屑はごめんだ。気が合うな」

幼馴染以上、婚約者未満の王子と侯爵令嬢の関係

紫月 由良
恋愛
第二王子エインの婚約者は、貴族には珍しい赤茶色の髪を持つ侯爵令嬢のディアドラ。だが彼女の冷たい瞳と無口な性格が気に入らず、エインは婚約者の義兄フィオンとともに彼女を疎んじていた。そんな中、ディアドラが学院内で留学してきた男子学生たちと親しくしているという噂が広まる。注意しに行ったエインは彼女の見知らぬ一面に心を乱された。しかし婚約者の異母兄妹たちの思惑が問題を引き起こして……。 顔と頭が良く性格が悪い男の失恋ストーリー。 ※流血シーンがあります。(各話の前書きに注意書き+次話前書きにあらすじがあるので、飛ばし読み可能です)