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第六王子
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胡蝶の歌姫に選ばれたメルチェラは言われるままに居城の奥へと歩を進めていた。未だ夢見心地の彼女はそれしか出来ないままなのだ。胸元には胡蝶の彫り物が揺れている。
「あ、あのう……」
「はい、なんでございますか?」
侍女はにこやかに答えるが、緊張と相まってどうにもできない。それでもこのままではいけないと彼女は踏ん張る。
「このままどちらへ行くのでしょう、私は不安でしかありませんの」
「ああ、なるほど。ですがお任せ下さい、決して悪いことはおきませんわ」
「はぁ……」
にこやかに微笑むばかりの侍女にはそれ以上の質問は酷に思えて来た。なるようになってしまえば良いと考えた彼女は肩から力を抜いた。
侍女は淡々と重厚なドアへ近づき「お連れしました」とだけつげるとドアを開け放つ。壁の向こうには何が待ち構えているのかごくりと息を呑む。
「やぁメル、久しぶり」
「え!?ディノ!何故こんなところに」
「やっと身分を明かせたね、第六王子ベルナディノ・ティガルバスという、以後お見知りおきを」
「ええ?ど、どういうこと……え、ええ?ディノ?」
「まぁ、立話もなんだからさ」
彼は先程の侍女を呼びつけて茶を淹れるように指示を出した。「ついでに甘いものを」と所望する。
「さて、どこから話そうか、いざこの時がくると話が出難いものだな」
「は、はあ、私は……なんというか全て察しましたわ、意地悪い魔法使いさん」
「くっっは……意地悪いか、ハハハハッ!好きに呼んでくれアハハハハッ」
「もう!」
彼は側室の子で王子と名はついていながらも正当な跡継ぎとしては価値がないのだ。それ故に公式の場で姿を現すことはほとんどなかった。
とはいえ、プリプリと怒るメルチェラであるが本気で怒るわけにもいかず、彼女は黙って苛立ちが潰えてくれるのを待った。ふと目にした窓辺に鉢から小さな芽が出ているのに気が付いた。よく見ればその隣には苗木が生えていた。
「ん、気が付いたかい?」
「ええ、この苗木はあの森でよく見かけるわ、この小さな芽もきっと」
名も知らぬ木ではあったが、ずっと傍にいてくれた木であった。彼女はいつもこの木の下で歌を唄っていた。
「メル、こちらに来てくれないか」
「え、はい?」
訝しい視線を浮かべながらも彼女は言われるままにそちらへ歩を進めた。王子は用意していたものをそっと開く。
「まぁ、なんて綺麗なの」
「そう思ってくれて嬉しいよ、実はこの木の古い根元に出来る希少な石なんだ」
「え、まさかあの木が国木デンディール……知らなかったとても地味なんだもの」
王子はデンディールをそっと彼女のほうへ押し付けていった。
「メル、私はずっと年上のおじさんだがどうかこの思いを受け取ってはくれないだろうか」
「おじさんだなんて……六つ離れてるだけ、でも今すぐに返事は」
「ああ、わかっているさ。キミが良い返事をくれることを願っている」
「……王子」
叙勲を賜り王子にまでプロポーズを受けたメルチェラはどこをどう歩いたのかすら思い出せない。
「はぁ……偉い事になったわ」
胸元には白い胡蝶の彫り物を受け取り、右手には受け取ったばかりの碧い石がそこにあった。どちらも受け取るには荷が重すぎると彼女は溜息を吐く。
そこに予期せぬ人物が現れて彼女を驚愕させた。
「メル!やっぱり俺にはお前が必要なのだとわかった!喜べ再び婚約してやるぞ!」
「え、なに!?」
「あ、あのう……」
「はい、なんでございますか?」
侍女はにこやかに答えるが、緊張と相まってどうにもできない。それでもこのままではいけないと彼女は踏ん張る。
「このままどちらへ行くのでしょう、私は不安でしかありませんの」
「ああ、なるほど。ですがお任せ下さい、決して悪いことはおきませんわ」
「はぁ……」
にこやかに微笑むばかりの侍女にはそれ以上の質問は酷に思えて来た。なるようになってしまえば良いと考えた彼女は肩から力を抜いた。
侍女は淡々と重厚なドアへ近づき「お連れしました」とだけつげるとドアを開け放つ。壁の向こうには何が待ち構えているのかごくりと息を呑む。
「やぁメル、久しぶり」
「え!?ディノ!何故こんなところに」
「やっと身分を明かせたね、第六王子ベルナディノ・ティガルバスという、以後お見知りおきを」
「ええ?ど、どういうこと……え、ええ?ディノ?」
「まぁ、立話もなんだからさ」
彼は先程の侍女を呼びつけて茶を淹れるように指示を出した。「ついでに甘いものを」と所望する。
「さて、どこから話そうか、いざこの時がくると話が出難いものだな」
「は、はあ、私は……なんというか全て察しましたわ、意地悪い魔法使いさん」
「くっっは……意地悪いか、ハハハハッ!好きに呼んでくれアハハハハッ」
「もう!」
彼は側室の子で王子と名はついていながらも正当な跡継ぎとしては価値がないのだ。それ故に公式の場で姿を現すことはほとんどなかった。
とはいえ、プリプリと怒るメルチェラであるが本気で怒るわけにもいかず、彼女は黙って苛立ちが潰えてくれるのを待った。ふと目にした窓辺に鉢から小さな芽が出ているのに気が付いた。よく見ればその隣には苗木が生えていた。
「ん、気が付いたかい?」
「ええ、この苗木はあの森でよく見かけるわ、この小さな芽もきっと」
名も知らぬ木ではあったが、ずっと傍にいてくれた木であった。彼女はいつもこの木の下で歌を唄っていた。
「メル、こちらに来てくれないか」
「え、はい?」
訝しい視線を浮かべながらも彼女は言われるままにそちらへ歩を進めた。王子は用意していたものをそっと開く。
「まぁ、なんて綺麗なの」
「そう思ってくれて嬉しいよ、実はこの木の古い根元に出来る希少な石なんだ」
「え、まさかあの木が国木デンディール……知らなかったとても地味なんだもの」
王子はデンディールをそっと彼女のほうへ押し付けていった。
「メル、私はずっと年上のおじさんだがどうかこの思いを受け取ってはくれないだろうか」
「おじさんだなんて……六つ離れてるだけ、でも今すぐに返事は」
「ああ、わかっているさ。キミが良い返事をくれることを願っている」
「……王子」
叙勲を賜り王子にまでプロポーズを受けたメルチェラはどこをどう歩いたのかすら思い出せない。
「はぁ……偉い事になったわ」
胸元には白い胡蝶の彫り物を受け取り、右手には受け取ったばかりの碧い石がそこにあった。どちらも受け取るには荷が重すぎると彼女は溜息を吐く。
そこに予期せぬ人物が現れて彼女を驚愕させた。
「メル!やっぱり俺にはお前が必要なのだとわかった!喜べ再び婚約してやるぞ!」
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