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翌日、目を覚ましたジーンは夢で会った悪魔のことを忘れていなかった。
それから奪われた体の一部が気になり異変はないか調べたがなにも感じない。
昨夜新たに奪われたのは肝臓と思われた。
「心臓といい……不思議なことね、死なない呪いでもかかってるのかしら?奪われた代価に簡単な魔法が使えるようにしたと悪魔がそう言っていたけど……」
自分の両手をじっとみたが何も変化は感じないし、魔法の使い方もわからない。
不親切な悪魔だとイラついた。
しかし、すぐにどうでもいい事だと頭から抜け落ちた。
ジーンはただ不幸しかないこの世界から、さっさと消え失せたいという願望だけで行動しているからだ。
「退屈な一日の始まりね、さて何をしようかしら?」
喉が渇いたので水差しを見る、あの日以来は綺麗な水は入ってはいるが新鮮かどうかはわからない。
他人が用意したものなど信用していないジーン。
そこで魔法で水はだせないか考えた、ほどよく冷えた美味しい水を想像して手の平を皿にしてみる。
「!?」
なにもない空間に拳大ほどの水の塊が球状になって浮かんだ。
それを口元まで動かしたが零れ落ちることなくそこにあった、ジーンは球体を吸い込むように飲んだ。
「まぁ素敵、魔法って便利なのね」
彼女が満足すると水は四散して消え、水で体が濡れることもなかった。
「森の泉に湧いたような美味しい水だったわ、ふふ。これで渇きに困ることはなくなったわ」
ジーンはほうっと息を吐いて凝り固まった体を伸ばし解した。
時計を確かめると針は9時をまわっている、相変わらず専属侍女はコケにしているようだ。
その侍女は妹ヴェネの元侍女で、いまでもジーンを毛嫌いしていた。
「……もう少し躾が必要なようね」
10時を回った頃に、漸く現れた侍女は眠そうな顔でジーンの目の前に顔を洗うための盥を設置した。
「お前は主より遅く起きる習慣のようね?」
刺々しい物言いのジーンに、侍女は些か体を強張らせたが返事もせずにそこに待機した。
無言で早く顔を洗えと言わんばかりの態度だ。
そこでジーンは大きめの水の球体を作り侍女の頭をすっぽり包んでやった。
突然のことに侍女は驚き、水を払い除けようと藻掻く。
「あら、そんな簡単には取れないわよ。私の意思でしかそれは動かないのだから」
意地悪い顔でジーンは笑ってやった。
侍女は球体の中でゴボボとなにか抗議している。醜く歪む顔は悪態を吐いているのがわかった。
「そう、反省してないのね。では身体全体を包みましょうか」
ジーンがそう言うと水の球体は大きく膨張して、侍女の身体を覆ってしまう。
「どう?まだ足掻く?いつまで我慢できるかしらね」
彼女はクスクスと嘲笑ってやる、いままで侮っていた令嬢を侍女は悔しそうに睨んでいた。
ガバゴボと水球体の中で侍女が必死に這い出ようと抗う、しかしそれは取れることもなく纏わりついたままだ。
息が続かなくなった侍女は泣き叫ぶような仕草をしている。
目を見開きジーンを睨んでいたが、とうとう心が折れたのか球体の中で土下座をした。
浮遊する水の中でその仕草は身体が横転してしまい、下履きが丸見えの無様さだった。
「あらあら、汚いものを見せないで頂戴。不愉快だわ」
ジーンは侍女が酸欠で失神したところで水を消滅させた。
それから奪われた体の一部が気になり異変はないか調べたがなにも感じない。
昨夜新たに奪われたのは肝臓と思われた。
「心臓といい……不思議なことね、死なない呪いでもかかってるのかしら?奪われた代価に簡単な魔法が使えるようにしたと悪魔がそう言っていたけど……」
自分の両手をじっとみたが何も変化は感じないし、魔法の使い方もわからない。
不親切な悪魔だとイラついた。
しかし、すぐにどうでもいい事だと頭から抜け落ちた。
ジーンはただ不幸しかないこの世界から、さっさと消え失せたいという願望だけで行動しているからだ。
「退屈な一日の始まりね、さて何をしようかしら?」
喉が渇いたので水差しを見る、あの日以来は綺麗な水は入ってはいるが新鮮かどうかはわからない。
他人が用意したものなど信用していないジーン。
そこで魔法で水はだせないか考えた、ほどよく冷えた美味しい水を想像して手の平を皿にしてみる。
「!?」
なにもない空間に拳大ほどの水の塊が球状になって浮かんだ。
それを口元まで動かしたが零れ落ちることなくそこにあった、ジーンは球体を吸い込むように飲んだ。
「まぁ素敵、魔法って便利なのね」
彼女が満足すると水は四散して消え、水で体が濡れることもなかった。
「森の泉に湧いたような美味しい水だったわ、ふふ。これで渇きに困ることはなくなったわ」
ジーンはほうっと息を吐いて凝り固まった体を伸ばし解した。
時計を確かめると針は9時をまわっている、相変わらず専属侍女はコケにしているようだ。
その侍女は妹ヴェネの元侍女で、いまでもジーンを毛嫌いしていた。
「……もう少し躾が必要なようね」
10時を回った頃に、漸く現れた侍女は眠そうな顔でジーンの目の前に顔を洗うための盥を設置した。
「お前は主より遅く起きる習慣のようね?」
刺々しい物言いのジーンに、侍女は些か体を強張らせたが返事もせずにそこに待機した。
無言で早く顔を洗えと言わんばかりの態度だ。
そこでジーンは大きめの水の球体を作り侍女の頭をすっぽり包んでやった。
突然のことに侍女は驚き、水を払い除けようと藻掻く。
「あら、そんな簡単には取れないわよ。私の意思でしかそれは動かないのだから」
意地悪い顔でジーンは笑ってやった。
侍女は球体の中でゴボボとなにか抗議している。醜く歪む顔は悪態を吐いているのがわかった。
「そう、反省してないのね。では身体全体を包みましょうか」
ジーンがそう言うと水の球体は大きく膨張して、侍女の身体を覆ってしまう。
「どう?まだ足掻く?いつまで我慢できるかしらね」
彼女はクスクスと嘲笑ってやる、いままで侮っていた令嬢を侍女は悔しそうに睨んでいた。
ガバゴボと水球体の中で侍女が必死に這い出ようと抗う、しかしそれは取れることもなく纏わりついたままだ。
息が続かなくなった侍女は泣き叫ぶような仕草をしている。
目を見開きジーンを睨んでいたが、とうとう心が折れたのか球体の中で土下座をした。
浮遊する水の中でその仕草は身体が横転してしまい、下履きが丸見えの無様さだった。
「あらあら、汚いものを見せないで頂戴。不愉快だわ」
ジーンは侍女が酸欠で失神したところで水を消滅させた。
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