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妹ヴェネを除いた朝食の席でジーンは優雅に水だけを飲んだ。
自分でだした水だった。今の彼女は他人はすべて敵と認識しており攻撃的だ。


「ジーン、いくらなんでも目の前で異物は入れないだろう?」
父がそう言うと彼女はギロリと睨み、スープ皿を逆さにして中身をぶちまけた。


黒い物体が数個、白濁の汁に混ざって蠢いていた。

「父……いいえ、伯爵はこれを飲めますか?面白い具材が入ってますよ」

赤い目をした蠅が数匹ほどテーブルの上を這いまわった、それを確認した母がえずいて席を立つ。

「なんてことだ……、従者は全員入れ替えよう。貴様らは全員クビだ!出て行け!」
幾人かが悲鳴をあげて食堂からでて行く、食い下がったのは執事だ。


「恐れながら私は従順に勤めてきました!紹介状もなく解雇とはあんまりです!」
「やかましい!お前が一番に怪しいわ!」


伯爵はカトラリーを執事に投げつけ叱咤した。
堪らず執事は脱兎の如く逃げ出し、食堂が静まり返った。

「ご理解いただけで良かったわ、アレが屋根裏から出てこない間は平和と思ってたのに残念だわ」
「……やはりヴェネが糸を引いていたか、なぜあそこまで捻じ曲がったのだ」


貴方の教育の賜物でしょう?ジーンは嫌味たっぷりに賞賛した。
父、伯爵は顔面を青くして項垂れていた。



「邪魔なモノはみーんな死んじゃえばいいのに」
ジーンは銀のナイフを弄びながら恐ろしい事を言った。


「ま、まて!それに私は入ってないだろうな!?」
「さあ?どうかしら……魔法が使えると知った途端に尻尾を振るバカは要らないわ」

「私は父親だぞ!」
「……いまだに敬語も使えない無能は要らないって言ってるのよ?なんでそんなに偉そうなのかしら。親だろうとクズに価値はないのよ」


それを聞いた伯爵は怒りに震えたが、真っすぐに飛んできた尖った氷塊を目にして泡を吹いた。
伯爵の耳スレスレに掠めたソレは壁に刺さって振動音をあげた。


「警告しとくわ、明日の私はもっと残酷な性格に育っているわよ。よーく考えて行動してね?」
「わ、わかりました……ジーン…様」





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