目を覚ました気弱な彼女は腹黒令嬢になり復讐する

屋根裏の悪鬼

数日かけて、従者たちの入れ替えが調った。
料理人たちまで一掃されて漸くジーンは安全な食事を摂れるようになる。



食卓の席には両親の姿はない、ジーンが同席を認めないからだ。
無能な父と浪費家の母に罰を与えている最中なのだ。


彼等の食事はというと、日に一回だけの質素な料理だけになった。
これまでジーンがされてきた待遇をそのまま返しているだけのことだ、なに一つジーンは遠慮しない。
数日前の脅しで、伯爵家の家督は長女ジーンに成り代わっていた。


もう誰も彼女に逆らえない。


「あなた……このままでは飢えで倒れそうよ、それにこの服……黴臭くて気持ち悪いわ」
「わかっている……だがこれがジーンが耐え忍んできたことなのだ。反省の色を見せなければもっと冷遇されれるぞ、我慢するんだ」


二人は従者と同じ食堂で、堅くなったパンと具のないスープ、それから不自然に濁った水を飲まされていた。
水は埃臭くてザラザラしていた、飲んだ後は必ず吐き気と下痢に悩まされる。




一方、屋根裏に軟禁されたままのヴェネは水とパンだけの日々で瘦せ細っていた。
姉に八つ当たりしては、我儘放題をしてきたツケを払わされている。性根が変わらない限り解放されることはない。

だが、彼女は反省する態度は一切みせなかった。
朝昼晩と時間に関係なく金切声をあげては、姉を侮辱する言葉を繰り返している。


ある日、ヴェネが空腹と暇を持て余していた時だ。ドアの外の南京錠がガチャリと動く音が聞こえた、彼女は過剰に反応して飛び上がる。

「やっと父様が動いたのね！ジーンのヤツめ、反撃してやるんだから！」
解放される気満々のヴェネだったがそれが叶わないことだと数秒後知る。


「ごきげんようヴェネ、相変わらず歪んだままのようね。ある意味安心したわ」

憎き姉を睨みつけながらヴェネが問う。
「どういう意味よ！？いい加減ここから出して！」


「反省してなくて良かったと思ったの、だって私は貴女が生まれてからずっと虐げられてきたのよ。簡単に許したらつまらないわ。そうね、最低５年はここで生活して貰うわ。その間に性格が変われば待遇を考えてあげる」

「な！そんな勝手なこと父様が許すわけないわ！」

未だこの家の現状を知らないヴェネは居丈高に振る舞う。

「あら、教えてなかったかしら？あの男は退位したのよ。私が継いで伯爵になったの、つまり家の全権は私の手の中にあるの。理解できる？」


ジーンの言葉にヴェネは顔面蒼白になったが、それでも折れない。
「こ、こんなこと虐待じゃないの！世間が許すわけないわ！」

「あら、あの女の言葉を借りればこれは躾よ？残念でした」

「そ、そんな！そうだわロンパル様が来ればことが露見して」
「ロンパル？あんな男とは縁を切ったわよ、二度と屋敷にはこないわね」


ジーンは伯爵を継いですぐにロンパルとの婚約は白紙に戻した。
元当主である父が勝手に結んだ婚約だった、利が無い関係は不要なのだとジーンは嗤った。

「じゃあねヴェネ、気が向いたらまた来るわ」
「ま、待ってよ！せめてこの足枷を取って！」


ジーンはゆっくり振り向くとヴェネに近づいて横腹を蹴り飛ばし、倒れた彼女の頭を踏んだ。


「きゃあ！なにするの！？」
「生かされてる分際で偉そうに、私の気分次第でお前は死ぬのよ？骨一つ残さず燃やしてあげましょうか？」


ジーンは火の魔法をヴェネの目の前で見せつける。
チリチリとヴェネの髪の毛が燃えて、特有の異臭が広がった。

「ひぃ！熱いわ！やめて、やめてお姉様！お願い！大人しくするからぁ！」
あまりの恐怖にヴェネは失禁して床を穢した。


流石のヴェネももう抵抗することはなかった。