目を覚ました気弱な彼女は腹黒令嬢になり復讐する

音爽(ネソウ)

文字の大きさ
12 / 21

10

しおりを挟む
ロンパルの名を聞いた祖父が不機嫌に顔を歪めた、かつて孫娘を蔑ろに扱った元婚約者を敵視している。

「ジーン、まさか一人で会おうなどしないだろうな?」
「はい、お爺様。そもそも屋敷に入れるつもりもありませんわ、ですがあるものを餞別に差し上げようかと思いつきましたの」


良い笑顔をする孫娘に、祖父は昏い笑顔を返した。

「なるほど、アレを押し付けるのだな!フハハハッ!」
「はい、従者総出で動くのでしばし退席することをお許しください」

「良い良い!私も物見に着いて行こう」

断罪劇にノリノリの祖父が立ち上がった、叔父が窘めたが聞く耳を持たない。
一方、突然訪問したロンパルは一向に開かない門扉の前で歯噛みしていた。


『くそ!まだ廃嫡された報せは知らんはずなのに……客間にも通さないとは!やはりジーンは性根が腐っているのだな!まぁ良い、再び婚約を結んでベンス家を継いでやる。その後は躾けて従順な妻にしてやろう。正妻はジーンに置いて執務を押し付け、頭は悪いが美しいヴェネを愛妾にしてやろう。完璧じゃないか!いや、当主になれたら他に愛人も作って遊び放題だ!ふふ、廃嫡した父を見返してやるぞ、純利益が億単位で転がり込むのだからな。なにもかもを掌握した気分さ!』


婚約破棄された側だという事を、すっかり抜け落ちた頭で都合の良いシナリオを作っている。
それから、数十分待たされて現れたのは大きな荷を担いだ執事達だった。


その背後の正面玄関の最上部で、ジーンと思われる女が立っていた。

だが、かつて知った昏い顔の彼女ではない。血色が良くなり艶やかな肌と見事な金髪を靡かせている。
傍らには威厳に満ちた男性がエスコートしている、ベンス一族を統べるノーマン・ベンスだとロンパルは気が付き震え出した。

『あぁ、ここへ来るべきではなかった……なにもかもが遅かった』


ノーマン侯爵の厳しい双眼に見据えられ、ただただ委縮するばかりのロンパル。
追い打ちをかけるようにジーンが口を開いた。

「よもや、歓迎されるなんて思ってませんよね?平民ロンパル、残念ね早馬があなたより先に来ていたのよ」
「あ、あぁぁあ!うわぁぁあああ!」


すべて見透かされていたと知ったロンパルは、頭を抱えて羞恥と後悔で頽れた。


「無一文となった貴方に素敵な餞別を用意したの、受け取って」

その言葉を合図に、執事達が大きな荷を門扉の外へ出した。
ドサリと下ろされたソレはグニグニと蠢いた。良く見れば丸みを帯びた人型だった。

「……んー!んんん!」
くぐもった声が聞こえてきた、頭らしい箇所を剥ぐと肥え太った顔が現れた。猿轡を噛まされ苦悶の表情でロンパルを見つめてくる。

「ま、まさかヴェネ!?なんでこんなにブサイクに!」

「大人しくなったヴェネにたくさんご馳走をあげたらこうなったの、可愛がりすぎちゃったみたい」
ジーンが悪びれもなく肩を竦めて説明した。


「可愛がって醜いブタになるのかよ!おかしいだろう!」
「あら、豚は見た目に反して体脂肪が少ない生物なのよ?豚に失礼だわ」

ジーンがそういうと、ベンス家一同が大笑いした。


「な、なんてこと……なんてことを」
「豚というなら別にかまわないわ、贅沢から離れて慎ましい生活を送ればきっと元に戻るわよ。そうだわ娼館にでも売れば生活費の足しになるかもね?好きになさいな」
「……」


なにも言えなくなったロンパルだったが、縋るような目をジーンに向けた。
しかし、期待した顔はそこにはなく、とびきり美しく変貌したジーンは冷たい表情だった。


悪あがきはもう通用しないと、ロンパルは漸く諦めた。



いままで見せたことのない美しい笑みで彼女はロンパルを見送った。

「ジーン、キミは……そんなに美しかったのか。知らなかったよ。いや、知ろうとしなかったのか」
全てを諦めたロンパルという平民は、押し付けられた荷を引き摺って相応しい場所へと消えて行った。

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

はじめまして、私の知らない婚約者様

有木珠乃@『ヒロ弟』コミカライズ配信中
ファンタジー
ミルドレッド・カーマイン公爵令嬢は突然、学園の食堂で話しかけられる。 見覚えのない男性。傍らには豊満な体型の女性がいる。 けれどその女性から発せられた男性の名前には、聞き覚えがあった。 ミルドレッドの婚約者であるブルーノ王子であることを。 けれどミルドレッドの反応は薄い。なぜなら彼女は……。 この世界を乙女ゲームだと知った人々による、悪役令嬢とヒロイン、魔女の入れ替え話です。 悪役令嬢を救いたかったはずなのに、どうしてこんなことに? ※他サイトにも掲載しています。

今、私は幸せなの。ほっといて

青葉めいこ
ファンタジー
王族特有の色彩を持たない無能な王子をサポートするために婚約した公爵令嬢の私。初対面から王子に悪態を吐かれていたので、いつか必ず婚約を破談にすると決意していた。 卒業式のパーティーで、ある告白(告発?)をし、望み通り婚約は破談となり修道女になった。 そんな私の元に、元婚約者やら弟やらが訪ねてくる。 「今、私は幸せなの。ほっといて」 小説家になろうにも投稿しています。

【完結】王都に咲く黒薔薇、断罪は静かに舞う

なみゆき
ファンタジー
名門薬草家の伯爵令嬢エリスは、姉の陰謀により冤罪で断罪され、地獄の収容所へ送られる。 火灼の刑に耐えながらも薬草の知識で生き延び、誇りを失わず再誕を果たす。 3年後、整形と記録抹消を経て“外交商人ロゼ”として王都に舞い戻り、裏では「黒薔薇商会」を設立。 かつて自分を陥れた者たち ――元婚約者、姉、王族、貴族――に、静かに、美しく、冷酷な裁きを下していく。 これは、冤罪や迫害により追い詰められた弱者を守り、誇り高く王都を裂く断罪の物語。 【本編は完結していますが、番外編を投稿していきます(>ω<)】 *お読みくださりありがとうございます。 ブクマや評価くださった方、大変励みになります。ありがとうございますm(_ _)m

よかった、わたくしは貴女みたいに美人じゃなくて

碧井 汐桜香
ファンタジー
美しくないが優秀な第一王子妃に嫌味ばかり言う国王。 美しい王妃と王子たちが守るものの、国の最高権力者だから咎めることはできない。 第二王子が美しい妃を嫁に迎えると、国王は第二王子妃を娘のように甘やかし、第二王子妃は第一王子妃を蔑むのだった。

お姉様のお誕生日を祝うのが、なぜ我儘なの?

月白ヤトヒコ
ファンタジー
健康で、元気なお姉様が羨ましかったの。 物心付いたときから、いつも体調が悪かった。いつもどこかが苦しかった。 お母様が側にいてくれて、ずっと看病してくれた。お父様は、わたしのお医者様の費用やお薬代を稼ぐのが大変なんだってお母様が言ってた。 わたし、知らなかったの。 自分が苦しかったから。お姉様のことを気にする余裕なんてなかったの。 今年こそは、お姉様のお誕生日をお祝いしたかった……んだけど、なぁ。 お姉様のお誕生日を祝うのが、なぜ我儘なの? ※『わたくしの誕生日を家族で祝いたい、ですか? そんな我儘仰らないでくださいな。』の、妹視点。多分、『わたくしの誕生日を~』を先に読んでないとわかり難いかもです。 設定はふわっと。

悪役令嬢に仕立て上げたいなら、ご注意を。

潮海璃月
ファンタジー
幼くして辺境伯の地位を継いだレナータは、女性であるがゆえに舐められがちであった。そんな折、社交場で伯爵令嬢にいわれのない罪を着せられてしまう。そんな彼女に隣国皇子カールハインツが手を差し伸べた──かと思いきや、ほとんど初対面で婚姻を申し込み、暇さえあれば口説き、しかもやたらレナータのことを知っている。怪しいほど親切なカールハインツと共に、レナータは事態の収拾方法を模索し、やがて伯爵一家への復讐を決意する。

処刑台の皇妃、回帰して復讐を誓う ~冷酷公爵と偽りの婚約者~ おまえたちは許さない!

秦江湖
ファンタジー
皇妃エリアーナは、夫である皇帝アランと、たった一人の親友イザベラの策略により、無実の罪で処刑される。 民衆に罵られ、アランの冷酷な目とイザベラの嘲笑を「始まりの景色」として目に焼き付けながら絶命した彼女は、しかし、処刑の記憶を持ったまま三年前の過去に回帰する。 「おまえたちは許さない」 二度目の人生。 エリアーナの目的はただ一つ、自分を陥れた二人への完璧な復讐。 彼女はまず、アラン(皇太子)からの婚約内示を拒絶。そして、アラン最大の政敵である「北の冷血公爵」ルシアン・ヴァレリウスに接触する。 1周目で得た「未来の知識」を対価に、エリアーナはルシアンに持ちかける。 「貴方様には帝国の覇権を。わたくしには復讐の舞台を。そのための『契約婚約』を――」 憎悪を糧に生きる皇妃と、氷の瞳を持つ公爵。 二人の偽りの婚約の行く末は……

未来予知できる王太子妃は断罪返しを開始します

もるだ
恋愛
未来で起こる出来事が分かるクラーラは、王宮で開催されるパーティーの会場で大好きな婚約者──ルーカス王太子殿下から謀反を企てたと断罪される。王太子妃を狙うマリアに嵌められたと予知したクラーラは、断罪返しを開始する!

処理中です...