お願いだから噛んで欲しい!

そらうみ

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もうどうしたらいいか分からない俺

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泰昌の家から帰り、亮に電話をし、そして俺は寝てしまった。



そして数時間後。
目が覚め、時間を確認しようと携帯に手を伸ばした。
ちょうど携帯の画面をつけたタイミングで泰昌から着信が入り、俺は一気に目が覚めた。

タイミングが良すぎでちょっと怖っ!

しばらく携帯の画面を見つめ、少ししてから電話を取る。

「・・・もしもし」

「蓮、大丈夫か?」

「それは・・・何に対してでしょうか?」

「えっと、二日酔いと・・・昨日の・・・」

「わーわーわー!大丈夫!言わなくていい!!!」

俺は慌てて起き上がる。昨日の事を思い出して顔がカッと赤くなるのが分かった。
そして勢いよく起き上がったからか、頭がズキズキした。

「痛っ・・・」

思わず声に出してしまった。
すると泰昌が俺の声を聞き、慌てて話しかけてくる。

「大丈夫か!?今からそっちに行こうか!?」

「来なくていい来なくていい大丈夫!
いきなり起き上がったから・・・二日酔いで頭が痛かっただけ・・・」

「そうか・・・」

「うん・・・」

沈黙が流れる。
何を言えば良いのか分からない。

すると、泰昌がゆっくりと話しかけてきた。

「蓮、次の休み空いてる?」

「・・・空いてるけど?」

「じゃあ一緒に過ごそう。何処か行きたいところか、したい事ある?」

「・・・」

急に言われて思い付かない。そういえば泰昌と・・・付き合ったのでした!
と言う事は・・・これはデートのお誘い?
あれ?今までの遊ぶ約束と何が違うんだ?遊ぶのと同じ感覚で良いのか?

俺が何も言わないので、泰昌が慌てて話してくる。

「蓮、もし特に無いのなら・・・」

「あ、あるある!!!」

俺は慌てて答える。

「さっ、散歩!泰昌と散歩がしたい!!!」

「・・・」

泰昌が沈黙している。

そりゃそうだ。散歩がしたいって何だよ。
泰昌と過ごすのが嫌じゃない、俺からも泰昌と過ごしたいって伝えたかったんだ。
けれど急に言われて、俺が思いついたのは散歩だったんだ・・・。
素直に一緒に過ごしたいって・・・言える訳がない!
友達の時って特に気にならなかったのに!

「・・・うん。じゃあ散歩しよう」

静かに答える泰昌。
心なしか、微妙に声が震えている気がした。

あ、やっぱりミスった?

その後、また連絡すると言われて、電話が切れた。
俺は携帯の画面を見つめ、そのまま再び寝転がる。

もうなるようになれ・・・というか、昨日から予想外の事があり過ぎだ。
俺は布団にうつ伏せ、再び寝る事にした。



次の休み日、泰昌が行きたい所があるからと、ある場所へ連れて行ってくれた。
そこは野外の広い場所で、人も多く、そして何やらイベントが行われている。
イベントの内容は・・・キャンピングカーの展示だった!

「蓮、キャンピングカー興味あるって言ってただろ?
ちょっと見て行こう」

「あるある!見たい見たい!」

テンションが上がる俺。
2人で色々なキャンピングカーを見たり、体験してみたり・・・めちゃくちゃ楽しい!
俺と泰昌は、どのキャンピングカーが良いか、どこに行ってみたいかなど、ずっと話していた。
そして2人で並んで歩きながら、ふと気がついた。

今俺の隣を歩いているのは・・・俺の・・・恋人なのか。
友達と一緒にいる感覚とまた違う。付き合っている人と歩いていると思ったら・・・凄く、嬉しくなってしまった。
何も特別な事じゃ無くても、並んで歩くだけで、こんなにも嬉しいんだ。
嬉しくって、少し恥ずかしくって、でも凄く心が満たされている感じがする。

俺が今まで恋人がいなかった事とか、このまま泰昌とどうなっていくかとか関係なく、今がとても幸せだと思ってしまった。

俺、泰昌の事、ちゃんと恋人として好きになれそうだ。
そして泰昌にも、俺の事を好きになって欲しいと思ってしまった。



そして帰り道、いつもの別れる場所に着いた。

「蓮、今日は楽しかった。ありがとう」

「うん・・・」

俺は下を向いて答える。
すると泰昌が心配そうな声で話しかけてくる。

「帰りずっと黙っていたけれど、疲れたか?体調悪いのか?」

俺は覚悟を決め、ぐっと泰昌の顔を見上げた。
そこには、俺の顔を見て少し驚きながらも、心配そうな泰昌の顔がある。
俺は自分の顔が赤くなり始めているのを感じながらも、目を逸らさず、泰昌に向かって話し始める。

「・・・今日はこのまま・・・泰昌の家に行きたい」

泰昌は驚いた表情で、目を見開いている。

「い・・・いけれど・・・」

「今日・・・泊まってもいいか?」

気付けば俺は、自分の手を強く握りしめていた。
大人にもなって、こんなに緊張して言うこともないだろう。
俺の精一杯を分かって欲しい。

泰昌は必死の俺を見て、驚いた表情から段々と優しくなっていた。

「うん、泊まって欲しい・・・行こう」

そう言うと、俺の手を握り歩き出した。
俺はよほど緊張していたのか、恥ずかしくなって下を向きながら、泰昌に引っ張っていってもらうように歩き始める。
顔が赤いし、前を見れずに下を向いて歩く俺。

言えた。
俺めちゃくちゃ頑張った。

間違いなく俺にとって、泰昌は友達では無くなったのだと思った。

俺は結局、泰昌の家に着くまで、まともに前を見て歩いていなかった。
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