花嫁の魔方陣

そらうみ

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第1章

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 マーカスは、応接間で優雅にお茶を飲んでいた。
 そんなマーカスとは対照的に、フィリップは相変わらず不機嫌な様子を隠さず、マーカスを睨んでいる。
「なぜ建国当初に生きていた魔法使いが、お前の師なんだ?」
「師匠は延命などの魔法を自分の体で実験していたみたいで、それで長生き出来ていたみたいだな。
 まさか、この国の建国から生きていたとは思っていなかったけれど…」
「なぜあの魔方陣が師のものだと?」
「描かれている筆跡が、師匠独特の筆跡だったからだ。魔方陣を写す者たちは、きちんと筆跡までそのまま写して、代々残していたんだな。それに、あれほど独自の魔方陣となると、作った者の癖みたいなものが出るんだ。
 あれは間違いなく、師匠が作ったものだ」
「それで?お前の師匠は、今どこにいるんだ?」
 マーカスは手にしていたカップを机に置いて、向かい合って座っているフィリップを見た。
「それが、俺もどこにいるのか分からない」
「どういうことだ?どこかに出かけているのか?」
「そうみたいだ。ある日、師匠は置手紙を残してどこかへ行ってしまったんだ」
「置手紙?」
「そ。"自由に生きろ"ってさ」
「…破門か?」
「…言っとくけど、俺はこの国の者じゃないし、お前が王子だろうがなんだろうが関係ないからな」
「関係なかったらなんだ?」
「魔法でカエルに変えられたくなければ、余計な事は言うな」
「お前が本当に魔法使いなのかどうか分かるな」
 今度はマーカスがフィリップを睨む。

 召喚されたのが俺だからって、ずっと俺を目の敵にしているな。本当にカエルに変えてやろうか…。

 マーカスは咳ばらいをし、気を取り直して話を続ける。
「…だから俺は旅に出たんだ。自由になれって言われたし、知見を広げることも大切だろう?」
「では、本当に師匠がどこにいるのか知らないんだな?このままでは、お前との契約は解除出来ないと?」
「出来る限り俺もやってみる。おそらく出来るだろうけれど…時間がかかるだろうな」
「どれくらいかかる?」
「正直分からない」
「…」
 フィリップがこぶしをぎゅっと握った。
 そんなフィリップの様子を見て、マーカスは何度目かのため息をつく。

 フィリップはそんなに花嫁を楽しみにしていたのか。申し訳ない気もするが、俺だって巻き込まれたのだから同情してはいられない。

「なぁフィリップ。契約を解除するのに俺も全力を尽くす。俺だって、お前と契約したままなんて御免だ。
 それに…別にあの魔方陣のことは無視して、誰か気に入った子を見つけて結婚しちゃえばいいんじゃないか?」
「…代々、王家は皆の前で、召喚によって現れた者と結ばれてきたのだ。私だけが例外になる訳にはいかない」
「別にいいだろ?要はパフォーマンスの問題だろ?俺が魔法でそれらしく演出してやろうか?」
「お前に…私の気持ちが分かるものか」
 全く分からん、と言いかけた言葉をぐっと堪える。
 なぜなら、フィリップが悲しそうな、今にも泣きだしそうな顔をしたからだ。
 驚いた様子のマーカスを見て、フィリップが再び表情を戻し、真っすぐマーカスを見て言った。
「契約の解除が出来るよう、あの魔方陣を調べろ。出来る限り早急に」
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