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第1章
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次の日から、マーカスは城で過ごすこととなる。
魔方陣の図を紙に写し、城の書庫に籠ってその内容を調べる日々が始まった。
魔方陣に描かれている言葉のおおよそは読み取れたが、ただ単語を読み取れただけで、描かれている言葉が実際にどのようにして魔方陣を発動しているのかまでは分からない。
なかなか思うように解析が出来ないマーカスの元へ、フィリップは毎日のようにやって来ていた。そして机に向かって調べているマーカスに、魔方陣について色々と質問をする。
「その文字の意味は?」
「どれ?あ、これか。これは昔の言葉で言うところの、”花”になるな」
「”花”?花に何の意味がある?」
「他との関連があるのは確かだが…まだその言葉だけでは分からない」
「以前、魔力のある者が優先的に選ばれると言ったのは?」
「ここに“魔力”“高い”って言葉が描かれていたから、魔力を持っている者が条件の一部だと思っただけだ」
「魔力が高いというのは、生まれ持ってのーーー」
「…おい、いい加減にしろよ。お前がずっと質問ばかりするから作業が進まない。
契約の解除したくないのか?なんで邪魔するんだ?」
「邪魔などしていない。ただ私はーーー」
そこでフィリップが黙ってしまう。マーカスはそんなフィリップを見てため息をつく。
「俺が本当に魔方陣の解析が出来るか疑ってるんだな?」
「それもある」
「おい、それ以外もあるのかよ。そんなに魔方陣の事を知りたいなら、宮廷の魔法使いに聞けばいいだろ?」
「王子である私が聞くわけにはいかない」
「なんでだよ。別に聞くだけだろ?」
「魔法は簡単に説明出来るものではないだろ?」
「まあな」
「魔法使い以外の者は、複雑な魔法や、こういった魔方陣などを学ぼうとはしない。興味本位で聞いても理解できないから、そんな無駄な事をする者はいない」
「無駄って…別に簡単な魔法なら、勉強すれば誰でも使えるようになるだろ?」
「それがどれほど大変か分かっているだろ。時間が有り余っているのなら話は別だが…。
だから、王族が詳しく魔法を学ぶことはないし、聞いたところで無駄なことをしていると周りに言われてしまう」
「は?なんだそれ?」
「それに…学ばなくても、使える者もいるーーー」
「あぁ、天性の才能ってやつだな。けど、それだってある程度の努力はしないとーーー」
マーカスの答えを聞いていないかのように、フィリップは黙りこみ、そしてそのまま部屋を出て行った。
「…本当に、何なんだよ」
マーカスはフィリップが出て行った扉を見て、ひとり呟いた。
特に仲良くなるわけでもない二人だったが、城の者たちは、やはりマーカスがフィリップの花嫁ではないかと噂していた。
フィリップがマーカスを召喚した時の態度から、マーカスは手違いで召喚されたのだと思われていたが、実際、毎日のようにフィリップがマーカスのいる書庫へと通っているのは城の皆が知っていた。
そこでの実際の二人の様子を見ることは出来ないため、二人で過ごすうちに仲良くなっているのだと思い、やはりマーカスが花嫁なのだと言う噂が広がっていた。
そんな周りの噂を知らないマーカスは、今日も書庫に籠って解析を続けている。
「うーん…」
マーカスが腕を組んで天井を見上げる。
師匠はどうしてこんな意味の分からない魔方陣を作ったんだ?意味があるかも分からない内容で、どうして魔方陣が発動できているんだ?
これは、ただ魔法の知識があるだけでは解析出来る気がしないな…。
マーカスはぐっと両手を伸ばし、書庫から出ていこうとする。
「おい、どこへ行くんだ?」
最近は部屋の隅で大人しく過ごすようになっていたフィリップが、マーカスに声をかける。
「ちょっと気分転換に散歩でも。ちゃんと考えながらだから、別にさぼる訳じゃないぞ」
「…」
「その黙り込むのやめろよな。なんだよ?一緒に行くか?」
「いや、私も用事があるから出て行く」
「あっそ。…なぁフィリップ、お前もそんなに暇じゃないんだろ?毎日見張りに来なくてもいいんだけど?」
「…」
「早く本物の花嫁に会いたいのは分かっているからさ。
そういえば、フィリップってどんな花嫁が現れてほしかったんだ?」
「…」
「おーい。まただんまりか?別に気楽に聞いただけで、特に興味があったわけではないって」
マーカスはフィリップが怒り出すのではないかと思い、逃げ出すように部屋を出て行った。
「私は…どんな花嫁が現れて欲しかったのだろうかーーー」
ひとり残ったフィリップが、マーカスが出て行った後に小さく呟いた。
魔方陣の図を紙に写し、城の書庫に籠ってその内容を調べる日々が始まった。
魔方陣に描かれている言葉のおおよそは読み取れたが、ただ単語を読み取れただけで、描かれている言葉が実際にどのようにして魔方陣を発動しているのかまでは分からない。
なかなか思うように解析が出来ないマーカスの元へ、フィリップは毎日のようにやって来ていた。そして机に向かって調べているマーカスに、魔方陣について色々と質問をする。
「その文字の意味は?」
「どれ?あ、これか。これは昔の言葉で言うところの、”花”になるな」
「”花”?花に何の意味がある?」
「他との関連があるのは確かだが…まだその言葉だけでは分からない」
「以前、魔力のある者が優先的に選ばれると言ったのは?」
「ここに“魔力”“高い”って言葉が描かれていたから、魔力を持っている者が条件の一部だと思っただけだ」
「魔力が高いというのは、生まれ持ってのーーー」
「…おい、いい加減にしろよ。お前がずっと質問ばかりするから作業が進まない。
契約の解除したくないのか?なんで邪魔するんだ?」
「邪魔などしていない。ただ私はーーー」
そこでフィリップが黙ってしまう。マーカスはそんなフィリップを見てため息をつく。
「俺が本当に魔方陣の解析が出来るか疑ってるんだな?」
「それもある」
「おい、それ以外もあるのかよ。そんなに魔方陣の事を知りたいなら、宮廷の魔法使いに聞けばいいだろ?」
「王子である私が聞くわけにはいかない」
「なんでだよ。別に聞くだけだろ?」
「魔法は簡単に説明出来るものではないだろ?」
「まあな」
「魔法使い以外の者は、複雑な魔法や、こういった魔方陣などを学ぼうとはしない。興味本位で聞いても理解できないから、そんな無駄な事をする者はいない」
「無駄って…別に簡単な魔法なら、勉強すれば誰でも使えるようになるだろ?」
「それがどれほど大変か分かっているだろ。時間が有り余っているのなら話は別だが…。
だから、王族が詳しく魔法を学ぶことはないし、聞いたところで無駄なことをしていると周りに言われてしまう」
「は?なんだそれ?」
「それに…学ばなくても、使える者もいるーーー」
「あぁ、天性の才能ってやつだな。けど、それだってある程度の努力はしないとーーー」
マーカスの答えを聞いていないかのように、フィリップは黙りこみ、そしてそのまま部屋を出て行った。
「…本当に、何なんだよ」
マーカスはフィリップが出て行った扉を見て、ひとり呟いた。
特に仲良くなるわけでもない二人だったが、城の者たちは、やはりマーカスがフィリップの花嫁ではないかと噂していた。
フィリップがマーカスを召喚した時の態度から、マーカスは手違いで召喚されたのだと思われていたが、実際、毎日のようにフィリップがマーカスのいる書庫へと通っているのは城の皆が知っていた。
そこでの実際の二人の様子を見ることは出来ないため、二人で過ごすうちに仲良くなっているのだと思い、やはりマーカスが花嫁なのだと言う噂が広がっていた。
そんな周りの噂を知らないマーカスは、今日も書庫に籠って解析を続けている。
「うーん…」
マーカスが腕を組んで天井を見上げる。
師匠はどうしてこんな意味の分からない魔方陣を作ったんだ?意味があるかも分からない内容で、どうして魔方陣が発動できているんだ?
これは、ただ魔法の知識があるだけでは解析出来る気がしないな…。
マーカスはぐっと両手を伸ばし、書庫から出ていこうとする。
「おい、どこへ行くんだ?」
最近は部屋の隅で大人しく過ごすようになっていたフィリップが、マーカスに声をかける。
「ちょっと気分転換に散歩でも。ちゃんと考えながらだから、別にさぼる訳じゃないぞ」
「…」
「その黙り込むのやめろよな。なんだよ?一緒に行くか?」
「いや、私も用事があるから出て行く」
「あっそ。…なぁフィリップ、お前もそんなに暇じゃないんだろ?毎日見張りに来なくてもいいんだけど?」
「…」
「早く本物の花嫁に会いたいのは分かっているからさ。
そういえば、フィリップってどんな花嫁が現れてほしかったんだ?」
「…」
「おーい。まただんまりか?別に気楽に聞いただけで、特に興味があったわけではないって」
マーカスはフィリップが怒り出すのではないかと思い、逃げ出すように部屋を出て行った。
「私は…どんな花嫁が現れて欲しかったのだろうかーーー」
ひとり残ったフィリップが、マーカスが出て行った後に小さく呟いた。
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