花嫁の魔方陣

そらうみ

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第1章

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 それから数日後、城の雰囲気が騒がしくなっていた。
 この数日で、フィリップがマーカスの元にやって来る頻度も減っていたが、マーカスは特に気にすることなく、魔方陣の解析に取り組んでいた。


 そんなある日。宮廷の魔法使いが、マーカスのいる書庫を訪れていた。
「マーカス様、よろしいでしょうか?」
「ん?なんだ?」
「その、少しお力添えを頂きたいのですが…」
「力添え?今の俺は、フィリップからこの魔方陣を早急に解読しろって言われてるんだけど」
「そうなのですが…」
「一時中断だ」
 宮廷の魔法使いの後ろから、フィリップが姿を見せる。マーカスは作業を止め、現れたフィリップを見る。
「中断?」
「付いてこい。説明は後だ」
 マーカスはしぶしぶといった様子で立ち上がり、フィリップの後に付いて行く。

 マーカス達がたどり着いたのは広い部屋で、そこには国王と、フィリップの兄であるディルクの他に、何名かの家臣がひとつのテーブルを囲んでいた。
 皆が部屋へと入って来たマーカスに注目する。皆の視線を浴びながらマーカスたちが席に着くと、一人の家臣が話し始めた。
「改めて申し上げます。現在、北の森に多数の魔物の出現が確認されています。それほど強いものではありませんが、数が多く、現地の者では退治しきれないとの事。
 その為、北の領主から救援の要請が上がってきております」
 マーカスは報告を聞いて考える。

 なるほど、魔物退治についての会議か。でも、どうして俺が呼ばれたんだ?

 状況が飲み込めず、周りを見渡すと、ちょうどマーカスを見ていた国王と目が合った。国王がマーカスを見ながら口を開く。
「マーカス殿。貴殿は魔法使いと伺っているが?」
「はい」
「魔物退治の経験は?」
「魔物が居る森が住処だったので、まぁ多少は」
「今回の魔物退治に手を貸してくれないかね?」
「どうして俺が?」
 その瞬間、部屋の空気が固まった。
 隣に座るフィリップが、冷たい横目でマーカスを見る。マーカスは皆の様子を見て気が付いた。

 ここに居る者たちは皆、俺が魔法使いかどうか半信半疑なのだ。皆にとって俺は、旅をしている自称魔法使いであり、実際に俺が魔法を使ったのを見たこともない。
 フィリップの花嫁として召喚されたが、花嫁ではないと主張し、毎日書庫に篭っている謎の人物なのだ。

 マーカスは改めて自分の立場に気づき、苦笑する。

 周りからすれば、俺はどう扱っていいか分からない存在だ。今回の魔物退治に参加させて、魔法使いとしての実力を確かめようとしているのだろう。

 マーカスは小さくため息をつく。そして国王へと視線を向けると、ちょうど国王の隣に座っていたディルクと目が合った。
 ディルクは他の者たちとは違い、マーカスを見て笑みを返していた。
「マーカス、今回の魔物退治に参加しろ」
 突然、隣に座っているフィリップが声を出した。
 マーカスはフィリップの声を聞き、気に食わない表情でフィリップを睨む。
「…分かった。魔物退治には参加する。けれど…お前は花嫁に、魔物退治に行けって言うのか?」
「お前はいつから花嫁になったんだ?」
「なってない。花嫁じゃないし、お前の都合のいい駒でもない。だから、今回俺が魔物退治に参加するのは、不本意ながらもこの城での滞在費ということだからな」
 マーカスとフィリップの言い合いを、皆が黙って見守っている。
 すると、ディルクがマーカスに声を掛けた。
「マーカス殿、君に前線を頼んでいるわけではない。けれど、少しでも人手が欲しいのは本当だ。後方の援助で構わない。どうか力を貸して欲しい」
 ディルクは真剣な表情で、マーカスを見た。
 皆の様子から、今回の魔物の出現が予想外の事態だとは感じていた。マーカスが戦力になるのなら、力を借りたいというのは本音なのだろう。
「…分かりました。魔物退治に参加します」
 マーカスが皆に向かって改めて言う。
 フィリップはそんなマーカスの言葉を聞いて、何故か下を向き黙ってしまった。
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