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第1章
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マーカスは森の奥へ入り、魔物の気配が強い場所へとやってきていた。魔物たちはいきなり現れたマーカスの気配に驚き、木々に隠れてじっとマーカスの様子をうかがっている。
「こんなにも魔物が集まっているのは珍しいな…」
マーカスは周囲に潜んでいる魔物の気配を感じながら呟くと、ゆっくりと息を吐き、静かに呪文を唱え始めた。
次第に隠れていた魔物たちが姿を現し、マーカスに威嚇の姿勢を取る。マーカスはそんな魔物たちを気にすることなく、呪文を唱え終え、空を見上げた。
頭上には真っ黒な雲が集まり、雷鳴と共に大きくなっていく。
魔物たちがマーカスに襲い掛かろうと飛びかかってきた時には、空から途切れることなく雷が降り注ぎ、辺り一帯の魔物に直撃していった。
どの魔物も、その雷に当たると一撃で絶命し、逃げる間もなく次から次へと倒れていく。
雷鳴と魔物の悲鳴が飛び交う中、マーカスはその場から動くことなく、ただ魔物の死体が増えていく様子を眺めていた。
やがて雷鳴が止み、雲が散り、森に静寂が訪れた。
マーカスは目を閉じ、魔力の気配を調べる。
辺り一帯に魔力の反応がないことを確認し、満足そうに息を吐いた。
魔物を退治し終えたマーカスは、森の入口へと歩いて戻ってきていた。
森の入口には、今すぐにでも突入しようとしている騎士や魔法使いたちがいて、その先頭にはディルクとフィリップ、そしてイーデン伯爵がいた。
皆は先ほどまで森の中から響き渡る雷鳴や魔物の悲鳴を聞いていたが、そこで一体何が起こっているのか分からず、いつでも森の中へ突入できるよう、じっと森の入り口で待機していた。
森が静かになり、ディルクが森への突入を検討していたその時、マーカスが清々しい顔をして戻ってきたので、皆はただ唖然とした様子でマーカスを見ていた。
マーカスはそんな周りの視線を気にせず、フィリップの姿を見て笑顔になり、真っすぐにそばへと駆け寄って行った。
「フィリップ、戻ったぞ。あー久々に思いっきり魔力を使えてすっきりした」
「…」
「なんだ?どうしたんだ?おーい、フィリップー?カエル王子ー?」
「お前…」
「おい、カエル王子。ちゃんと名前で呼ぶ約束だろ?」
「…」
フィリップは何も言わない。すると、ディルクがマーカスへと声をかける。
「マーカス殿…先ほど魔力観測の者から、この辺りの魔物の気配が一瞬にしてなくなったと…」
マーカスはフィリップに言い寄った態勢のまま、ちらりとディルクに視線を向ける。
「大方の魔物は退治できましたよ。雷を使ってわざと派手目に攻撃したので…念のため、しばらく雷が流れる防御壁をこの森の入り口にしておけば、魔物は警戒してこちらにはやってこない。当分の間は問題ないかと」
マーカスの言葉を聞いて、そばにいたイーデン伯爵が驚いた表情をしていたが、マーカスは全く気に留めていない。ディルクも驚いた様子のまま、マーカスを見ている。
「驚いた…。やはり先ほどの雷は君が…。君の実力ならば、すぐにでも宮廷魔法使いにーーー」
「買いかぶりすぎですよ。今回はたまたま条件が整っていたんです。天候を利用したし、宮廷から魔法石も借りていたので…。今ここで、先程と同じことをやれと言われても出来ませんよ」
「そうか…とにかく、ご苦労。後の処理は我々が行う。マーカス殿は休んでいてくれ」
マーカスはディルクの言葉を聞き流しながら、ずっとフィリプを見ていた。フィリップはずっと驚いた表情のまま何も言わない。マーカスはそんなフィリップを見て少し不機嫌になる。
「おい、フィリップ。何か言えよ。なんで何も言わないんだ?」
「…驚いているんだ。まさか…これほどーーー」
「驚いたか?これで俺が本物の魔法使いだって分かっただろ?ほら、これからは俺の事を名前でーーー」
「…これほどの力があり…なぜ…私の元に…」
「おい。無視するよ。…本当に怒るぞ?」
「…あぁ、無事で良かった…。マーカス…」
フィリップがマーカスに視線を合わし、どこかぎこちなく言った。
「うーん…まぁいいか。今回はこれくらいで。ようやく俺を認めたみたいだしな」
マーカスはどこか物足りないような言い方をしたが、嬉しそうな様子は隠しきれておらず、明らかに機嫌が良くなっていた。
そんなマーカスを見てフィリップは再び黙り込み、何かをじっと考えている。
そんな二人の様子を、先ほどからじっと見ている者がいた。
「…あいつが…あいつで…。今までずっと…我々にーーー」
イーデン伯爵が無表情で目を見開き、じっとマーカスを見て呟いていたのを、そこにいる誰も、気が付いてはいなかった。
「こんなにも魔物が集まっているのは珍しいな…」
マーカスは周囲に潜んでいる魔物の気配を感じながら呟くと、ゆっくりと息を吐き、静かに呪文を唱え始めた。
次第に隠れていた魔物たちが姿を現し、マーカスに威嚇の姿勢を取る。マーカスはそんな魔物たちを気にすることなく、呪文を唱え終え、空を見上げた。
頭上には真っ黒な雲が集まり、雷鳴と共に大きくなっていく。
魔物たちがマーカスに襲い掛かろうと飛びかかってきた時には、空から途切れることなく雷が降り注ぎ、辺り一帯の魔物に直撃していった。
どの魔物も、その雷に当たると一撃で絶命し、逃げる間もなく次から次へと倒れていく。
雷鳴と魔物の悲鳴が飛び交う中、マーカスはその場から動くことなく、ただ魔物の死体が増えていく様子を眺めていた。
やがて雷鳴が止み、雲が散り、森に静寂が訪れた。
マーカスは目を閉じ、魔力の気配を調べる。
辺り一帯に魔力の反応がないことを確認し、満足そうに息を吐いた。
魔物を退治し終えたマーカスは、森の入口へと歩いて戻ってきていた。
森の入口には、今すぐにでも突入しようとしている騎士や魔法使いたちがいて、その先頭にはディルクとフィリップ、そしてイーデン伯爵がいた。
皆は先ほどまで森の中から響き渡る雷鳴や魔物の悲鳴を聞いていたが、そこで一体何が起こっているのか分からず、いつでも森の中へ突入できるよう、じっと森の入り口で待機していた。
森が静かになり、ディルクが森への突入を検討していたその時、マーカスが清々しい顔をして戻ってきたので、皆はただ唖然とした様子でマーカスを見ていた。
マーカスはそんな周りの視線を気にせず、フィリップの姿を見て笑顔になり、真っすぐにそばへと駆け寄って行った。
「フィリップ、戻ったぞ。あー久々に思いっきり魔力を使えてすっきりした」
「…」
「なんだ?どうしたんだ?おーい、フィリップー?カエル王子ー?」
「お前…」
「おい、カエル王子。ちゃんと名前で呼ぶ約束だろ?」
「…」
フィリップは何も言わない。すると、ディルクがマーカスへと声をかける。
「マーカス殿…先ほど魔力観測の者から、この辺りの魔物の気配が一瞬にしてなくなったと…」
マーカスはフィリップに言い寄った態勢のまま、ちらりとディルクに視線を向ける。
「大方の魔物は退治できましたよ。雷を使ってわざと派手目に攻撃したので…念のため、しばらく雷が流れる防御壁をこの森の入り口にしておけば、魔物は警戒してこちらにはやってこない。当分の間は問題ないかと」
マーカスの言葉を聞いて、そばにいたイーデン伯爵が驚いた表情をしていたが、マーカスは全く気に留めていない。ディルクも驚いた様子のまま、マーカスを見ている。
「驚いた…。やはり先ほどの雷は君が…。君の実力ならば、すぐにでも宮廷魔法使いにーーー」
「買いかぶりすぎですよ。今回はたまたま条件が整っていたんです。天候を利用したし、宮廷から魔法石も借りていたので…。今ここで、先程と同じことをやれと言われても出来ませんよ」
「そうか…とにかく、ご苦労。後の処理は我々が行う。マーカス殿は休んでいてくれ」
マーカスはディルクの言葉を聞き流しながら、ずっとフィリプを見ていた。フィリップはずっと驚いた表情のまま何も言わない。マーカスはそんなフィリップを見て少し不機嫌になる。
「おい、フィリップ。何か言えよ。なんで何も言わないんだ?」
「…驚いているんだ。まさか…これほどーーー」
「驚いたか?これで俺が本物の魔法使いだって分かっただろ?ほら、これからは俺の事を名前でーーー」
「…これほどの力があり…なぜ…私の元に…」
「おい。無視するよ。…本当に怒るぞ?」
「…あぁ、無事で良かった…。マーカス…」
フィリップがマーカスに視線を合わし、どこかぎこちなく言った。
「うーん…まぁいいか。今回はこれくらいで。ようやく俺を認めたみたいだしな」
マーカスはどこか物足りないような言い方をしたが、嬉しそうな様子は隠しきれておらず、明らかに機嫌が良くなっていた。
そんなマーカスを見てフィリップは再び黙り込み、何かをじっと考えている。
そんな二人の様子を、先ほどからじっと見ている者がいた。
「…あいつが…あいつで…。今までずっと…我々にーーー」
イーデン伯爵が無表情で目を見開き、じっとマーカスを見て呟いていたのを、そこにいる誰も、気が付いてはいなかった。
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