学園の俺様と、辺境地の僕

そらうみ

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後編

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「で!?どうなったんだ!?」
 翌日、部屋で僕はマイクに詰め寄られていた。
 昨日、ルーンは会場に着いて僕の姿が見当たらないのに気づき、マイクに僕の事を聞いたようだ。
 体調不良だと聞くと、そのまま会場を抜け出して僕の所に来たようで、皆がルーンがどこへ行ったのか気になっていたようだ。
 僕はマイクに、昨日の庭園での事を話した。
 ルーンに今後関わらないで欲しいと言ったけれど、ルーンが関りを切らないで欲しいと言われた事を話した。
「微妙に進展して…ないな?」
 何故か、マイクがじれったそうに言う。
「けれど、僕はルーンの気持ちが分かったよ」
「え、ええっ!?!?」
「僕は元々、身分違いの付き合いに馴染んでない。だから、ルーンは僕が、他の人と比べて三大貴族だからって愛想よくせず、どちらかと言えば軽蔑してたのに気づいてみたいだ。だからそれが気になってたんだろうね」
「軽蔑…」
「だって、自分の立場を分かっての態度がどうしても不愉快だったし、こちらの事を考えずに、自分が思っている事が正しいんだって感じで接してくるのもどうかと思っていたんだ。こちらの事を考えずにぐいぐいくるし…」
「待て。待て待て待て。何だか聞いてるこっちが悲しくなってきた。お前、ルーンをそういう風に思っていたのか?」
「そうみたいだね。あんまり考えないようにしていたけど」
「…っ。…で?関わる関わらないはどうするんだ?俺のランチタイムに平穏は訪れるのか?」
「もう少しだけルーンと過ごしてみるよ。それでもやっぱり関わりたくないと思ったら、もう退学する気でいる」
「…平穏は諦めた。俺ももう少し付き合うわ」
「あぁ、それだけれどさ…」
 僕がマイクに言うと、マイクは今までで一番驚いた表情で僕を見ていた。

 その日の昼食の時間。僕は学園の庭園に来ていた。
 昨日の夜、本当にここに立っていたのかと思うほど、雰囲気が違った。
 僕は何となく自分の両手を見る。昨日、ルーンはこの手を握っていた。
 本当に、ルーンはどうしてそんなにも僕の事が気になるんだ?
 その時、後ろからいきなりルーンが現れた。
「悪い、待ったか?」
「いや…今来たところ」
 僕は必死に動機を抑えていた。
 ルーンは昨日の事は少しも気にしていないようで、二人で空いているベンチに腰掛ける。
 そして食堂でもらったランチボックスを開けて、昼食を取り始めた。
 僕はこれからルーンと関わっていくことで決めたことがある。
 2人で昼食を取る事、そして、友人のように接するという事だ。
 昼食に関しては、ずっとマイクを付き合わせて申し訳なく思っていたし、いつも僕とジャンさんで話しているから、ルーンとはきちんと話せていなかった。
 だから、あえて二人になることで、ルーンと向き合おうと思ったのだ。
 そして、ルーンを三大貴族として接しない事にした。
 元々、そんなに意識してはいなかったけど、それでも肩書のない状態で付き合ってみることにした。
 要はルーンと僕は、友達のようになれるかどうかを試すのだ。
 目標設定が曖昧だから友達になる感覚でいればいいんだろうけれど…友達ってなろうとしてなるものか?と思ったのは言わないことにした。
 それにしても、庭園を見ながら昼食を取るのは気分が良かった。今まで食堂ではみんなの視線を感じていたし、外で食べるのも悪くない。
「俺が…」
「…ん?」
 ルーンが視線を合わさずに話す。
「俺がこの前引き抜いてしまった草は、どうしたんだ?」
「…?あ、ああ。元に戻したよ」
「大丈夫だったのか?」
「まあすぐに戻したし、元々丈夫なのだったから、今あそこで青い花を咲かせている辺りがそうだよ」
「そうか…」
「気にしてたんだ?」
「まぁ、カイルが大事に育てていたんだろ?」
「僕っていうより、ほとんど庭師の人が育ててるんだけど…。ルーンもそういう事気にするんだ」
「…」
 ルーンは黙ってしまったが、僕は正直驚いていた。
 ルーンが草の心配をするだなんて。
「ふ~ん」
 僕は何故か可笑しかったが、笑うと怒られそうなので、堪えて昼食を食べた。

 それから僕は、ルーンと過ごすことが増えていった。
 昼食はもちろん、僕を見かけたらルーンが声を掛けてくるし、授業が終わってからは、何故かルーンが僕と一緒に過ごすようになっていた。
 僕は図書室で勉強する事が多かったので、ルーンも僕の隣で勉強するようになっていた。
 一緒に居ても何か特別な事を話すわけでもないし、いつも何を話しているのかと聞かれても答えるような内容ではなかった。(実際マイクがたまに聞いてきた)けれど、前よりもルーンは僕の話を聞いてくれたし、授業の内容を話すことも多くなっていた。
 周りもなぜか、ダンスパーティー以降僕に質問してくる者もいなくて、以前よりも、もっと遠くから見守られているようだった。
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