転生したら、HEROになれるはず

緋咲 ツバメ

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鍛錬

水棲類

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翌日、貸し切った馬車で河を渡る船乗り場へ向かった。
この前の件で多少、気まずい雰囲気のままのレーラとテッドが同じ馬車であった。
お互いに何を話していいか分からず、さぐり合う感じになってしまった。
男児は勿論、昨日嬉し過ぎて、あまり眠れなかった虎丸は剣を抱いたまま、爆睡していた。
馬車は止まる事もほとんどなく、目的地である渡し船乗り場へついた。
河の流れはそんなに激しい訳ではなかったが、川幅がかなり広く、渡るには船を使うしかないらしい。
船の定員は10人程とそんなに大きくなかった。
船を動かす船員と船長の2人が乗る為、幾つかに分かれて、乗船しないとダメだった。

ようやく船に乗り込んだが、船が川の真ん中辺りに差し掛かった時、船員が騒ぎだした。
「なんだよ、あの数の影は?」
水中にはいくつもの黒い影が見えた。
その影は水面から船に飛び乗った。
数は六人とこちらより少なかったが、その何倍もの数の敵がこちらを見ていた。
金目のモノを出さないと、船を沈めるという脅しらしい。
他の船はこちらの異変に気付き、救援に来てくれようとしたが、船の上にいるリーダー格の男が近付いたら、この船を沈めると言い出した為、下手に近づけなくなった。
ただこの船にそんな大した額のカネはなかった。
リーダー格の男は予定が狂い、イライラし始め、他の船のカネを集めろと騒ぎ出した。
テッドやレーラは敵の隙を窺っていたが、なかなかそんなチャンスは見つけられない。
他の船のメンバーも何とかしようと様子を見ていた。
だが、ある一人が状況を一変させた。
さっきまで大人しく寝ていたはずの虎丸が起き上がり、一吼えした。
初めての船で気分が良くないらしい。
虎丸の一吼えで船の上にいたリーダー格は勿論、水面から見上げてた敵達は身を強ばらせていた。
ようやく少し落ち着いたのか、リーダー格の男が虎丸を指差しながら。
「急に驚かせやがって……。お前、痛い目に遭いたいのか?」
虎丸は具合が悪そうに足下がフラッとした。
「なんだ、情けない。お前………イイ男だな、イイ男を見ると……傷付けたくなるんだよ。」
そう言いながら、槍を手に虎丸へと近付きだした。
「うちの虎丸に何か用か?」
リーダー格の喉元にナイフを当て、少し引きながら。
「お前………この船が沈んでもいいのか?お前ら、陸の者は死ぬかもしれないんだぞ。」
リーダー格の男は引き攣った笑いを浮かべながら。
「お前ら、全員道連れになる覚悟はあるんだよな。」
リーダー格の男が指示を出そうとした瞬間、水面は慌ただしくなった。
「こっちは片付けた。」
リーダーの男がその声を全部聞く前に首と胴体は二つになっていた。
それをきっかけに残りも倒されるか、水中へと逃げ出した。
顔色を変えずに水面を見ながら。
「悪かった、こんな頼み事して。」
水面ではルドラ率いるリザードマンがこちらを見ていた。
「問題ない。お前に従うと決めたんだから。」
本来、リザードマンがこんな深い河を泳ぐ事はない。
どちらかと言えば、彼らは水棲類と言うより、両棲類と言われる分類である。
魚人とかに比べれば、それ程泳ぎは上手くない。
それまでのリーダーであったルドラに対しての仲間からの信頼は厚く、そのカレが新しいボスであると認めた以上、リョーの頼みは命令に等しかった。
滅多に出ない水賊の襲来を予想したリョーを疑う者がいなかったと言えば嘘になるが、またレーラを助けた事にダートから感謝された。
対岸についても、虎丸はグッタリとしていた。

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