転生したら、HEROになれるはず

交渉

使者

とりあえず寝る訳にもいかなくなったので、少しでも何かを腹に入れようと、虎丸に話を振ると。
「早く行かなくても良いの？ゲイガ、もう結構限界っぽかったよ。」
眠気と空腹で辛いけど、そう言われると行くしかないよな。
先ほど、鍛え上げた作品を携えて、ギルドに向かった。
ギルドに入ると、ゲイガは明らかに安堵の表情でこちらを見ていた。
その隣に優雅にカップを傾ける細身の男性の姿が。
「遅くなって、申し訳ございません。こちらがリョーになります。」
ゲイガはその男性に紹介をした。
多分、ギルドの偉いさんなんだろうと、一応お辞儀をすると。
「ふぅ～ん、キミがね……。随分、待たせてもらったけど、大切な用って何だったのかな？待たせてまで済ませないとダメな用って。」
寝不足なのと空腹なので関わりたくないとの思いが強い。
それよりも何の用があるのかが気になっている。
「それでわざわざ呼び出された御用は何ですか？」
使者はその言葉に少し表情を変え。
「聞いてたよりも、なかなか面白いな。キミからギルド資格を剥奪する事も可能なんだよ。」
嫌な感じしかいないが、そこは我慢をして。
「お待たせした事は申し訳ないと思いますが、突然来られたので………こちらもいつでも時間を作れる程、余裕のある暮らしはしてないので。」
完全に使者の表情は引きつったモノに変わっていた。
「よく分かってないんだな、お前は。所詮はＥランクだな…。」
ゲイガはそんなやり取りを見て、オロオロしていた。
「資格剥奪とかされないとでも思っているのか？」
その瞬間、扉が開き、手に持った串に刺さった肉を頬張りながら、一人の少年が入ってきた。
「やっと来たらしいね。……ん、どうしたの？何かあったの？」
それに続いて、数人の集団が部屋の中へ。
細身の男は立ち上がり、直立不動になり、経緯を報告した。
その少年は肉を食べながら、リョーの方を見て。
「ホントにそんな態度だったの？」
「資格剥奪ですか？」
少年は細身の男を再び、見て。
「資格剥奪するなんて随分、偉くなったんだね。そんな事したら、キミのクビ、飛んじゃうよ。」
細身の男は顔面を蒼白にしながら、身体を震わせていた。
少年はリョーの方に向きを変え、ソファーに座る様に勧めた。
「部下の非礼を詫びます。突然、訪問したこちらが待つのは当たり前の事。許して頂けますか？」
少年は頭を下げながら、詫びた。
リョーはソファーに座り。
「分かって頂けたなら、そこまではして頂かなくとも、それにこちらの言い方も大人げなかった。」
少年は頭を上げると、虎丸の方をチラッと見て。
「確かに興味深いね。あっ、自己紹介がまだでしたね。あるグランを担当してるニッカと言います。そこのGMから貴方の話を聞いて、無理に付いて来たんですよ。」