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生贄ナウ
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どれくらいの時間気を失っていたのかは分からなかったが、目が覚めると見た事もない場所で倒れていたようで、意識が朦朧とした中起き上がると草の匂いがした。
「何だ、夜。何が起こって、今何時だ」
意識覚めやらぬ中、スマホの画面を見る。当然と言えば当然ではあったが、電波なるものは皆無でアンテナ一本立ってはいなかった。
しかし、ダイソンの目が奪われたのはそこだけでは無かった。何度見直しても時刻は昼の十二時を指している。スマホと空を見比べるようにしていると此処が日本ですら無いことに気がついた。
「あれ何だよ」
星空の中には四つに割いたような月に似た何かが佇んでいた。とにかく、この場所を離れようと起き上がってはみたものの、行き先や向かうべき場所など皆無であった。
とにかく、辺りに光がないか調べるために一番近場にあった木に登ることにした。明かりが無いだけで人間はこんなにも不安に駆られるのだとダイソンは初めて知る事となった。
「こんな場所で木登りするなんてツイてない。ってか俺が何かしたのかよ」
今日一日の盛り沢山だった出来事に対して愚痴が溢れ始める。不安と恐怖心から独り言が饒舌になり始めていたが、逃げ場の無い恐怖心からはそうする他、今のダイソンには何も持ち合わせては居なかった。
時間をかけて木に登ると、ようやく辺りを見回せる場所まで辿り着いた。辺りはやはり木々で覆われている為、何も無いかと思われたが景色が揺らいだ様に靄がかると突然、近場に湖を見つける事が出来た。
「何も無かったはずなのに。あそこだけ光ってる。火、、、、、じゃ無いか」
遠目からでは何が光っているのかは解らなかったが、炎の様な揺らめきが無かった為、発光する何がそこにある事は確かであった。
方角だけ憶えるとすぐさま歩き始める。森の中を歩いていると、今まで見た事も無い植物や木々であることに気がついた。
呻き声をあげる花に、蛇の様にツルを動かし続ける植物。動物であろう死骸を養分とする球根の様なものもあった。
木の上から見た感じよりも遥かに長い距離を歩いた様に思ったが、一向に辿り着けないでいると突然足に激痛が走った。
「っっっナイフ!!?」
足に刺さっていたのは果物ナイフの様な小さな物だった為、傷は浅かったが突然の出来事にパニックになった。ナイフも抜かず後ずさると襲って来たそれに出くわした。
小柄な人。そう見えたが、月明かりの中で少しずつ輪郭を表したそれは、おおよそ人間とは形容しがたい姿形をしていた。刺したものと同じ物と思われるナイフを片手に握りしめ、ボロボロの衣服を着た異形の者である。
「化け物め!コッチに来るんじゃねぇ」
ダイソンが叫ぶと、ゲラゲラと尖った歯を見せながら笑い。ゆっくりと此方に近づいて来た為、足元にあった砂利を投げつけるが怯む事なく近づいて来る。
近づくにつれ、その者がいわゆるゴブリンと呼ばれる化け物に似ている事に、気づいた頃にはすでにゴブリンがナイフを振り上げた瞬間であった。
「うがあぁぁぁぁっっっっっ!!!」
自らを鼓舞し、アドレナリンを分泌させたまま勢いで足に刺さったナイフを引き抜き、襲って来た相手に向かって手に持ったナイフを首回りに突き立てると、恐怖心から何度も動かなくなるまで刺し続けた。
息が上がり、ようやく生き残れた感覚が戻ると今度は安堵から高揚感が消え、恐怖と疲労から手が震えだし寒気の様なものを覚えた。
「逃げなきゃ、、、、、、、逃げなきゃ」
朦朧とした意識の中で、とにかくこの場所から離れないといけないと感じ、逃げ出すようにその場を離れると、疲労から重くなった身体を引きずる様に進み始めた。
結果としてこの判断は正しかった。しかし、ダイソンの今の状況では逃げるにもやっとと言った状態であった為、背中から聞こえた奇声の様なものから、ただ怯える様に離れる他無かった。
ーーーーーーーー追いかけて来ている。
ゴブリンの仲間が追いかけて来ていると感じ取ったダイソンは、自身の体に鞭打ちながら途切れそうな意識の中で走り続けた。
汗が全身に行き渡り、声が漏れる程に息を荒げながら走っていると方向感覚も無かった為か、もはや湖には辿り着けそうも無かった。
「くそっ!何で、、、、こんな所に、、、、俺はい、、、、るんだ!」
行けども行けども開けた場所に出会す事はなく、時折する物音や鳥の動きに怯えながら突き進んでいくうちに明るく感じる場所をようやく見つけ!藁をもすがる思いで駆け寄る様にその場所に倒れ込んだ。
息が整わぬうちから辺りを見渡すと、一面開けた場所に出ている事がわかった。明るく感じたのはどうやら開けた所為で月明かりがよく見えた為のようである。
起き上がると、開けた場所はサークル状になっておりその中心部には、石で出来た遺跡後の残骸の様な物を見つけた。
「何だ。あそこなら雨くらいはしのげるか」
ようやく、落ち着いて頭の中を整理できそうな場所を見つけたダイソンだったが、近づくにつれ、ただの遺跡後ではない事がすぐに見てとれた。
「鳥、、、、、、、祭壇か」
天井の無い遺跡後の中央部には石造りの祭壇のような物が鎮座しており、その祭壇の上には頭のない人程の大きさの鳥の死骸が横たわっていた。
薄気味悪いものには近づかない。君子危うきに近寄らずである。どんな不条理が起こってもおかしくない今の状態に、警戒しない筈もなくゆっくりと祭壇から離れようとした。
〝、、、、、ス、、、ゲテ〝
その聞き覚えのある声に背筋が凍りつく。思えばこの声を聞いてからと言うものろくな事が起こらないどころか、命の危険にまで晒されているのである。
今までの出来事を考えれば、不気味な声が聞こえてくる事など大した事無いかの様に思えた為、ダイソンは今までの鬱憤を晴らすかの様に、声の主に怒鳴り返した。
「ウルセェ!言いたい事があるならハッキリ言いやがれ!俺はもう訳わからない事にはウンザリ何だよ!!!」
半ば八つ当たりの様な一言であった。ただ、今までと違っている事があるとすればダイソンはずっと無視し続けていた声に応えた事だった。
〝今すぐそこから逃げて!!!〝
今度はハッキリとした声が聞こえ。切迫した口調に驚いたが、自然と言う事を聞かなければならないと言う観念に囚われたまま、転げ落ちるように祭壇から退くと、自分が命拾いしたのだと分かった。
ーーーーーーーー金切り音の様な耳をつんざく奇声が木霊した。
今まで立っていた場所には、死んでいたはずの鳥の胴体が何故か聳え立っていた。生き返ったのかとも思ったが、どうにも動きがぎこちなくフラフラと奇妙に動く為、見えてはいない事がわかった。
「何だよ、驚かせやがって。見えなきゃ見つかりっこねぇ」
後ろを振り向きダイソンが離れようとしたその時。何かを裂く音がした瞬間に、振り向くと三匹のゴブリンが此方に襲いかかって来ていた。
寸前の所で交わす。紙一重ではあったがダイソンは襲い掛かられたにも関わらず、切り傷一つ作る事なく切り抜けられたのは、まさに奇跡としか言いようが無かった。
ゴブリンは鳥の死骸を隠れ蓑にして襲って来た様で、萎んだ風船の様になった鳥の死骸が目に入った。
一匹でも対処するのに必死であった事から三匹など到底相手に出来るはずもなく、逃げの一手で振り向く事なく走り出した。
森の中の様に小回りの速さではなく、単純なスピードであればダイソンは逃げ切る事は難しくは無かったはずだったが、それはあくまで足が健康な場合である。
足に怪我を負ったまま走ると、激痛と共に裂傷箇所が広がらないように、庇いながら走る他手立てを思いつかなかった。
「血が、、、、、止まらない」
走る速さで言えば五分五分である。出血のある分、ダイソンの方が不利である事に変わりはなく、森の中に再び逃げ込もうとサークル状の開けた場所の境目で事態は急変した。
背中にいたゴブリン達が突然、森の中から放たれた矢を額に受けて瞬く間に倒れていく。全ての矢が射られたかと思われたが、ダイソンが立ち上がった瞬間。足元に矢が突き刺さった。
「×★ー◇○◎X」
森の中から現れた者は、人であるかどうかも確かめようも無かったが、木彫りの仮面を被った人らしき者が複数人居るのを確認できた瞬間。
甘い香りがしたかと思うと、一瞬にして意識を刈りとられた。助けられた事による油断と人らしき者に出会えた事で、気が緩んだのも今にして思えば仕方のない事だったのかも知れない。
ーーーーーー何故こうなってしまったのか?
俺の腕は後ろ手に縛られ、気がつけば猿ぐつわで呼吸すらままならない程に息を荒げ、何処かの部族の様な木で掘られた仮面をつけた腰蓑姿の屈強な男達に担がれていた。
辺りは薄暗い森林に囲まれた獣道を歩いている事が解る。湿気も相まってジャングルを彷彿とさせる景色が続いていたが、この空の上にある物を見つけ、やはり自分がいた場所では無いことはすぐに見てとれた。
担がれ振動で目が回りそうな景色の中、上空には確かに細長い月の様なものがまるで方位でも表すかの様に、頭上に佇んでいた。
獣道を進む男達の先頭には小柄な人物が、上半身を覆う程の大きな仮面をつけ、首が痛くならないのかと、自分の置かれた状況も気にせずそんな事を考えていた。
「○★▷◀︎×○◇●~っ◾️」
やはりである。思った通りこの世界の言葉は理解出来るものではなく、まるで舌打ち混じりに話すその姿は動物そのものの様に思えた。
ようやく森を抜けた先。開けた場所に出ると同じような人間が集落を形成し、火を使える事が分かった。朝礼台の形をした処刑台の様なものが見えた時、スマホのバッテリーの最後の音が聞こえた。
後ろ手に縛られた手から、役目を終えたスマホの最後の仕事は〝生贄なう〝とささやきでの最後の投稿だった。
「何だ、夜。何が起こって、今何時だ」
意識覚めやらぬ中、スマホの画面を見る。当然と言えば当然ではあったが、電波なるものは皆無でアンテナ一本立ってはいなかった。
しかし、ダイソンの目が奪われたのはそこだけでは無かった。何度見直しても時刻は昼の十二時を指している。スマホと空を見比べるようにしていると此処が日本ですら無いことに気がついた。
「あれ何だよ」
星空の中には四つに割いたような月に似た何かが佇んでいた。とにかく、この場所を離れようと起き上がってはみたものの、行き先や向かうべき場所など皆無であった。
とにかく、辺りに光がないか調べるために一番近場にあった木に登ることにした。明かりが無いだけで人間はこんなにも不安に駆られるのだとダイソンは初めて知る事となった。
「こんな場所で木登りするなんてツイてない。ってか俺が何かしたのかよ」
今日一日の盛り沢山だった出来事に対して愚痴が溢れ始める。不安と恐怖心から独り言が饒舌になり始めていたが、逃げ場の無い恐怖心からはそうする他、今のダイソンには何も持ち合わせては居なかった。
時間をかけて木に登ると、ようやく辺りを見回せる場所まで辿り着いた。辺りはやはり木々で覆われている為、何も無いかと思われたが景色が揺らいだ様に靄がかると突然、近場に湖を見つける事が出来た。
「何も無かったはずなのに。あそこだけ光ってる。火、、、、、じゃ無いか」
遠目からでは何が光っているのかは解らなかったが、炎の様な揺らめきが無かった為、発光する何がそこにある事は確かであった。
方角だけ憶えるとすぐさま歩き始める。森の中を歩いていると、今まで見た事も無い植物や木々であることに気がついた。
呻き声をあげる花に、蛇の様にツルを動かし続ける植物。動物であろう死骸を養分とする球根の様なものもあった。
木の上から見た感じよりも遥かに長い距離を歩いた様に思ったが、一向に辿り着けないでいると突然足に激痛が走った。
「っっっナイフ!!?」
足に刺さっていたのは果物ナイフの様な小さな物だった為、傷は浅かったが突然の出来事にパニックになった。ナイフも抜かず後ずさると襲って来たそれに出くわした。
小柄な人。そう見えたが、月明かりの中で少しずつ輪郭を表したそれは、おおよそ人間とは形容しがたい姿形をしていた。刺したものと同じ物と思われるナイフを片手に握りしめ、ボロボロの衣服を着た異形の者である。
「化け物め!コッチに来るんじゃねぇ」
ダイソンが叫ぶと、ゲラゲラと尖った歯を見せながら笑い。ゆっくりと此方に近づいて来た為、足元にあった砂利を投げつけるが怯む事なく近づいて来る。
近づくにつれ、その者がいわゆるゴブリンと呼ばれる化け物に似ている事に、気づいた頃にはすでにゴブリンがナイフを振り上げた瞬間であった。
「うがあぁぁぁぁっっっっっ!!!」
自らを鼓舞し、アドレナリンを分泌させたまま勢いで足に刺さったナイフを引き抜き、襲って来た相手に向かって手に持ったナイフを首回りに突き立てると、恐怖心から何度も動かなくなるまで刺し続けた。
息が上がり、ようやく生き残れた感覚が戻ると今度は安堵から高揚感が消え、恐怖と疲労から手が震えだし寒気の様なものを覚えた。
「逃げなきゃ、、、、、、、逃げなきゃ」
朦朧とした意識の中で、とにかくこの場所から離れないといけないと感じ、逃げ出すようにその場を離れると、疲労から重くなった身体を引きずる様に進み始めた。
結果としてこの判断は正しかった。しかし、ダイソンの今の状況では逃げるにもやっとと言った状態であった為、背中から聞こえた奇声の様なものから、ただ怯える様に離れる他無かった。
ーーーーーーーー追いかけて来ている。
ゴブリンの仲間が追いかけて来ていると感じ取ったダイソンは、自身の体に鞭打ちながら途切れそうな意識の中で走り続けた。
汗が全身に行き渡り、声が漏れる程に息を荒げながら走っていると方向感覚も無かった為か、もはや湖には辿り着けそうも無かった。
「くそっ!何で、、、、こんな所に、、、、俺はい、、、、るんだ!」
行けども行けども開けた場所に出会す事はなく、時折する物音や鳥の動きに怯えながら突き進んでいくうちに明るく感じる場所をようやく見つけ!藁をもすがる思いで駆け寄る様にその場所に倒れ込んだ。
息が整わぬうちから辺りを見渡すと、一面開けた場所に出ている事がわかった。明るく感じたのはどうやら開けた所為で月明かりがよく見えた為のようである。
起き上がると、開けた場所はサークル状になっておりその中心部には、石で出来た遺跡後の残骸の様な物を見つけた。
「何だ。あそこなら雨くらいはしのげるか」
ようやく、落ち着いて頭の中を整理できそうな場所を見つけたダイソンだったが、近づくにつれ、ただの遺跡後ではない事がすぐに見てとれた。
「鳥、、、、、、、祭壇か」
天井の無い遺跡後の中央部には石造りの祭壇のような物が鎮座しており、その祭壇の上には頭のない人程の大きさの鳥の死骸が横たわっていた。
薄気味悪いものには近づかない。君子危うきに近寄らずである。どんな不条理が起こってもおかしくない今の状態に、警戒しない筈もなくゆっくりと祭壇から離れようとした。
〝、、、、、ス、、、ゲテ〝
その聞き覚えのある声に背筋が凍りつく。思えばこの声を聞いてからと言うものろくな事が起こらないどころか、命の危険にまで晒されているのである。
今までの出来事を考えれば、不気味な声が聞こえてくる事など大した事無いかの様に思えた為、ダイソンは今までの鬱憤を晴らすかの様に、声の主に怒鳴り返した。
「ウルセェ!言いたい事があるならハッキリ言いやがれ!俺はもう訳わからない事にはウンザリ何だよ!!!」
半ば八つ当たりの様な一言であった。ただ、今までと違っている事があるとすればダイソンはずっと無視し続けていた声に応えた事だった。
〝今すぐそこから逃げて!!!〝
今度はハッキリとした声が聞こえ。切迫した口調に驚いたが、自然と言う事を聞かなければならないと言う観念に囚われたまま、転げ落ちるように祭壇から退くと、自分が命拾いしたのだと分かった。
ーーーーーーーー金切り音の様な耳をつんざく奇声が木霊した。
今まで立っていた場所には、死んでいたはずの鳥の胴体が何故か聳え立っていた。生き返ったのかとも思ったが、どうにも動きがぎこちなくフラフラと奇妙に動く為、見えてはいない事がわかった。
「何だよ、驚かせやがって。見えなきゃ見つかりっこねぇ」
後ろを振り向きダイソンが離れようとしたその時。何かを裂く音がした瞬間に、振り向くと三匹のゴブリンが此方に襲いかかって来ていた。
寸前の所で交わす。紙一重ではあったがダイソンは襲い掛かられたにも関わらず、切り傷一つ作る事なく切り抜けられたのは、まさに奇跡としか言いようが無かった。
ゴブリンは鳥の死骸を隠れ蓑にして襲って来た様で、萎んだ風船の様になった鳥の死骸が目に入った。
一匹でも対処するのに必死であった事から三匹など到底相手に出来るはずもなく、逃げの一手で振り向く事なく走り出した。
森の中の様に小回りの速さではなく、単純なスピードであればダイソンは逃げ切る事は難しくは無かったはずだったが、それはあくまで足が健康な場合である。
足に怪我を負ったまま走ると、激痛と共に裂傷箇所が広がらないように、庇いながら走る他手立てを思いつかなかった。
「血が、、、、、止まらない」
走る速さで言えば五分五分である。出血のある分、ダイソンの方が不利である事に変わりはなく、森の中に再び逃げ込もうとサークル状の開けた場所の境目で事態は急変した。
背中にいたゴブリン達が突然、森の中から放たれた矢を額に受けて瞬く間に倒れていく。全ての矢が射られたかと思われたが、ダイソンが立ち上がった瞬間。足元に矢が突き刺さった。
「×★ー◇○◎X」
森の中から現れた者は、人であるかどうかも確かめようも無かったが、木彫りの仮面を被った人らしき者が複数人居るのを確認できた瞬間。
甘い香りがしたかと思うと、一瞬にして意識を刈りとられた。助けられた事による油断と人らしき者に出会えた事で、気が緩んだのも今にして思えば仕方のない事だったのかも知れない。
ーーーーーー何故こうなってしまったのか?
俺の腕は後ろ手に縛られ、気がつけば猿ぐつわで呼吸すらままならない程に息を荒げ、何処かの部族の様な木で掘られた仮面をつけた腰蓑姿の屈強な男達に担がれていた。
辺りは薄暗い森林に囲まれた獣道を歩いている事が解る。湿気も相まってジャングルを彷彿とさせる景色が続いていたが、この空の上にある物を見つけ、やはり自分がいた場所では無いことはすぐに見てとれた。
担がれ振動で目が回りそうな景色の中、上空には確かに細長い月の様なものがまるで方位でも表すかの様に、頭上に佇んでいた。
獣道を進む男達の先頭には小柄な人物が、上半身を覆う程の大きな仮面をつけ、首が痛くならないのかと、自分の置かれた状況も気にせずそんな事を考えていた。
「○★▷◀︎×○◇●~っ◾️」
やはりである。思った通りこの世界の言葉は理解出来るものではなく、まるで舌打ち混じりに話すその姿は動物そのものの様に思えた。
ようやく森を抜けた先。開けた場所に出ると同じような人間が集落を形成し、火を使える事が分かった。朝礼台の形をした処刑台の様なものが見えた時、スマホのバッテリーの最後の音が聞こえた。
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