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光の矢
召喚術師
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「君がナターシャか?」
「はい」
衛兵二人に連れてこられたナターシャは女王様とルークの前でひざまづいた。彼女はまだ冤罪が晴らされたことを聞かされていないのか、伏せた顔は暗い影を落としている。
「顔を上げてください、ナターシャ」
女王様がナターシャに近づき、しゃがみこんだ。その顔に前の暴君女王の面影はない。
ナターシャは恐る恐る顔を上げた。そしてその女王様の表情と周りの雰囲気が思っているものと違うことに気づきわずかに動揺する。
「あの…どういうことですか?」
「ナターシャ、あなたの冤罪は晴らされました。私の勘違いだったのです。私がもっとあなたやスピカの言葉を信じていれば。本当に申し訳ありませんでした」
頭をさげる女王様にナターシャはただただ驚いている。
「ナターシャ、君を犯人と決めつけてしまったこと、カトレア様に並んでお詫び申し上げる。本当に申し訳なかった」
「いや、あの…冤罪が晴れたというのは理解できました。で、本当の犯人は誰だったんですか?」
「メイド長でした」
その言葉にナターシャは絶句した。
「でもメイド長は光属性じゃ…」
驚きに目を見開いたままナターシャは確かめるように言葉を紡いだ。
「私もそう思っていました…」
女王様は先ほどの説明に加え、起こったことを全てナターシャに話した。
「じゃ、じゃあ…メイド長は…」
「…もう、この世にはいません」
「っ…」
ナターシャは涙を流した。その涙を見て、私たちにも寂しさがこみ上げてきた。先ほどまで奇怪な現象に振り回され、感傷に浸る隙がなかったのだ。
唐突にこの世界にやってきて、何をしたらいいかわからなかった私を導いてくれたのがメイド長だった。あの時、探しに来てくれたのは私が大切だったからじゃないのだろうか?
デタラメな反省文。思いっきり怒られたけど、最後にふっと笑ってくれた瞬間があった。
調印会でのお茶出し。本来はメイド長の仕事だった。私に代わるように言われた時、文句一つ言わなかったのは私を信用してくれていたからじゃないだろうか?
短い記憶を思い返すとメイド長は怖いながらもいつもそばにいた。あの怒鳴り声はもう…聞けない。
室内にすすり泣く声だけが響いていた。
**************
「じゃあ俺はこれにて失礼します」
しばらくしてすすり泣く声が消えた頃、ルークはそう言って一礼した。しかしその足は出口に向いていない。
「そういえばルークはどうやってここにきたの?隣国からはだいぶ遠いはずじゃ」
私は素朴な疑問をルークにぶつけた。
「スピカ、さすがにこの場でとぼけるのはやめた方がいいわよ。みんなが気持ち悪い目で見てるわ」
早速いつものペースを取り戻したナターシャが私にそっと耳打ちをする。それを聞き、私は慌てて周りを見渡した。気持ち悪い目ではないが…うん、視線が集まっているのはよくわかった。
「スピカ殿、お前さんは知らないのかね?わしら召喚術師のことを」
黙り込んだ視線の中、ずっとルークの側についていた魔法使いっぽいおじいさんが口を開いた。
「召喚術師…?」
「この国にもおるじゃろう。わしのような格好をした者が。お城の伝通役として仕えてるはずじゃぞ?まだあったことがないのかね」
私は少ない記憶をたどったがそんな魔法使い様さまのような人物は見かけていない。
「スピカはまだ知らないことが多いんだな。召喚術師。王国の紋章を持っている者を他の国へ転送する。王国では急な知らせなどがあった時に自らを召喚しその知らせを受け取る伝通役として働いていることが多いんだ」
「へえ~」
それは便利な魔法だ!まるでどこ○もドアみたいではないか!
「え?じゃあルークがここに来るのに馬車を使う必要はなくない?!」
「そうだと嬉しいんだけどな。なんせ召喚術は多くの魔力を必要とするからそう頻繁に使えるものじゃないんだよ」
ルークはそう言って、いつの間にか現れていた床面に広がる魔法陣の中へと入っていった。
「今回の件、俺たちが力になれず申し訳ありませんでした。メイド長様のご冥福をお祈りします」
そう告げると同時に魔法陣が光を放ち、ルークと召喚術師のおじいさんは姿を消した。
私たちはその後、城内一同でメイド長のご冥福を祈り、それぞれの部屋へと戻っていった。
一人を除いては。
「あ、あの、女王様?」
私の後ろを当たり前のように女王様が付いてきていた。
「だって部屋があの有様なんですもの。明日メイドたちに修繕してもらいますから今日はご一緒させてくださいな」
女王様は笑顔で告げるがその言葉の中には明日の仕事内容が含まれていた。いやはやつくづく恐ろしい女王様である。
まあベッドは一人で寝るには広すぎるほどだし、細身の女王様なら余裕で大丈夫だろう。
この時、私は一つの可能性にたどり着いていた。
召喚術師。
私がここに来てしまったのはその人たちのせいではないのかと。
そして
その人たちを頼れば私は元の世界に帰れるのではないのかという可能性に。
「はい」
衛兵二人に連れてこられたナターシャは女王様とルークの前でひざまづいた。彼女はまだ冤罪が晴らされたことを聞かされていないのか、伏せた顔は暗い影を落としている。
「顔を上げてください、ナターシャ」
女王様がナターシャに近づき、しゃがみこんだ。その顔に前の暴君女王の面影はない。
ナターシャは恐る恐る顔を上げた。そしてその女王様の表情と周りの雰囲気が思っているものと違うことに気づきわずかに動揺する。
「あの…どういうことですか?」
「ナターシャ、あなたの冤罪は晴らされました。私の勘違いだったのです。私がもっとあなたやスピカの言葉を信じていれば。本当に申し訳ありませんでした」
頭をさげる女王様にナターシャはただただ驚いている。
「ナターシャ、君を犯人と決めつけてしまったこと、カトレア様に並んでお詫び申し上げる。本当に申し訳なかった」
「いや、あの…冤罪が晴れたというのは理解できました。で、本当の犯人は誰だったんですか?」
「メイド長でした」
その言葉にナターシャは絶句した。
「でもメイド長は光属性じゃ…」
驚きに目を見開いたままナターシャは確かめるように言葉を紡いだ。
「私もそう思っていました…」
女王様は先ほどの説明に加え、起こったことを全てナターシャに話した。
「じゃ、じゃあ…メイド長は…」
「…もう、この世にはいません」
「っ…」
ナターシャは涙を流した。その涙を見て、私たちにも寂しさがこみ上げてきた。先ほどまで奇怪な現象に振り回され、感傷に浸る隙がなかったのだ。
唐突にこの世界にやってきて、何をしたらいいかわからなかった私を導いてくれたのがメイド長だった。あの時、探しに来てくれたのは私が大切だったからじゃないのだろうか?
デタラメな反省文。思いっきり怒られたけど、最後にふっと笑ってくれた瞬間があった。
調印会でのお茶出し。本来はメイド長の仕事だった。私に代わるように言われた時、文句一つ言わなかったのは私を信用してくれていたからじゃないだろうか?
短い記憶を思い返すとメイド長は怖いながらもいつもそばにいた。あの怒鳴り声はもう…聞けない。
室内にすすり泣く声だけが響いていた。
**************
「じゃあ俺はこれにて失礼します」
しばらくしてすすり泣く声が消えた頃、ルークはそう言って一礼した。しかしその足は出口に向いていない。
「そういえばルークはどうやってここにきたの?隣国からはだいぶ遠いはずじゃ」
私は素朴な疑問をルークにぶつけた。
「スピカ、さすがにこの場でとぼけるのはやめた方がいいわよ。みんなが気持ち悪い目で見てるわ」
早速いつものペースを取り戻したナターシャが私にそっと耳打ちをする。それを聞き、私は慌てて周りを見渡した。気持ち悪い目ではないが…うん、視線が集まっているのはよくわかった。
「スピカ殿、お前さんは知らないのかね?わしら召喚術師のことを」
黙り込んだ視線の中、ずっとルークの側についていた魔法使いっぽいおじいさんが口を開いた。
「召喚術師…?」
「この国にもおるじゃろう。わしのような格好をした者が。お城の伝通役として仕えてるはずじゃぞ?まだあったことがないのかね」
私は少ない記憶をたどったがそんな魔法使い様さまのような人物は見かけていない。
「スピカはまだ知らないことが多いんだな。召喚術師。王国の紋章を持っている者を他の国へ転送する。王国では急な知らせなどがあった時に自らを召喚しその知らせを受け取る伝通役として働いていることが多いんだ」
「へえ~」
それは便利な魔法だ!まるでどこ○もドアみたいではないか!
「え?じゃあルークがここに来るのに馬車を使う必要はなくない?!」
「そうだと嬉しいんだけどな。なんせ召喚術は多くの魔力を必要とするからそう頻繁に使えるものじゃないんだよ」
ルークはそう言って、いつの間にか現れていた床面に広がる魔法陣の中へと入っていった。
「今回の件、俺たちが力になれず申し訳ありませんでした。メイド長様のご冥福をお祈りします」
そう告げると同時に魔法陣が光を放ち、ルークと召喚術師のおじいさんは姿を消した。
私たちはその後、城内一同でメイド長のご冥福を祈り、それぞれの部屋へと戻っていった。
一人を除いては。
「あ、あの、女王様?」
私の後ろを当たり前のように女王様が付いてきていた。
「だって部屋があの有様なんですもの。明日メイドたちに修繕してもらいますから今日はご一緒させてくださいな」
女王様は笑顔で告げるがその言葉の中には明日の仕事内容が含まれていた。いやはやつくづく恐ろしい女王様である。
まあベッドは一人で寝るには広すぎるほどだし、細身の女王様なら余裕で大丈夫だろう。
この時、私は一つの可能性にたどり着いていた。
召喚術師。
私がここに来てしまったのはその人たちのせいではないのかと。
そして
その人たちを頼れば私は元の世界に帰れるのではないのかという可能性に。
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