異世界メイドに就職しました!!

ウツ。

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星の降る夜

星の降る夜

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「うわ、意外と冷えるな…」
私はそう呟いて小さく身震いした。
私が思いつきで訪れたのは中庭だった。肌寒いせいか、ここを思いついた人がいないのか、明かり一つない中庭は静けさに包まれている。しかしその暗闇や静けさに映えるように、天には数え切れないほどの星々が輝いていた。
「わあー!綺麗!」
私は思わず芝生に寝転がって天を見上げた。今日中庭を掃除しておいて正解だったなとふと思う。
しかしこんな風に星空に目を向けたのはいつぶりだろう。随分と久しぶりな気がする。
星空に圧倒されていると視界の中に一筋の光が伝った。
「流れ星!」
私は一人、子供のように叫んだ。まるでその一筋が連れてきたように、次々と流れ星が夜空を横切っては消えていった。
そういえば流れ星が消える前にお願い事三回言えたら叶うんだっけ?
小さい頃教わった迷信が頭の中に蘇った。馬鹿げた話だけど、やってみようかな。
「お願い事…お願い事…元の世界に戻れますように…魔法が使えますように…うーん…」
貪欲な私にお願い事はありすぎる。どれもこれもと考えているうちに幾つかのきらめきが天を駆けて消えていった。
結局まとまらないまま私は諦めて頭を休めることにした。
ぼけーっときらめく星たちに目を向ける。こういう時に限って思い出したくないことを思い出してしまうようで、ふと女王様とルークがこの星空を楽しげに見つめている情景が目に浮かんだ。
その瞬間、また知らぬあのモヤモヤと苦しみが不意に訪れた。それと同時に一人でいることに寂しさを覚えた。
そういえば、私毎日忙しくてこの世界に一人でいることを忘れてたな…。
九ノ葉楓の存在を知る者はこの世界にはいない。
お母さんは今何をしているだろうか。
今日の天気はどうだっただろう。
平凡な毎日を送っていたなら私は今頃何をしていただろう…。
寂しい…。
「う…うあぁ…」
私はこみ上げた感情に耐え切れず、声を上げて泣いた。

「何で泣いてるのかな?」

「?!」
唐突にかけられた言葉に、私は思わずぐしゃぐしゃな顔のまま振り向いた。
「あ、今回はすぐ振り向いてくれた」
「りゅ、りゅーく…」
「言えてないぞ」
笑いながら私に近づいてきたのは、ここにいるはずのない、ルーク本人だった。
「何で…?女王様と星空観測のはずじゃ…。それにどうやってここに…」
「ちょっと理由をつけて欠席させてもらったんだ。スピカ、君にどうしても相談したいことがあってさ。だけど今は言うべきじゃなさそうだね。どうしたの?」
ルークは私の横に座り、頭をぽんぽんとした。
背後から芝生を踏む音が聞こえた。しかしその音はそっと遠ざかっていく。その人物に私は予想がたった。多分ルークの召喚術師だろう。それならルークがここに来れたことにも納得できる。
「え?いや、私は大丈夫!」
私は泣きじゃくっていた理由に恥ずかしさを覚え、慌てて何事もなかったように笑って見せた。しかし、その頬に止められなかった雫が伝う。
「無理しなくていいよ。どんな理由であれ、俺は笑ったりしないから」
その言葉に私は再び泣きじゃくったのだった。


   **************


「そうか。寂しかったんだな」
「うん」
私はルークに自分がここに来る前のことも含め、すべてを打ち明けた。ルークはその間、口を挟まずに真剣に聞いてくれた。無論、馬鹿にして笑うこともなかった。
「確かに親や友達に会えないのは辛いよな。こんなわからない世界に一人で来てしまって」
「信じてくれる?」
「もちろん。スピカは俺に嘘ついたことないだろ?」
「うん」
「だから俺はスピカを信じる。むしろ今までよく頑張ってこれたな。感心するよ」
初めてだった。この世界で私の話を信じてくれたのは。その嬉しさと安堵感で再び涙が出そうになる。
「泣きたいなら泣いていいよ」
「泣かない。私強いから」
「はは。そうだな」
ルークはそっと空を見上げた。それにつられて私も空を見上げる。
明るい星に負けまいと、小さな明かりの星がきらきらと瞬いた。
「俺の相談、聞いてもらっていいかな?」
「あ、そうだよね。そのために来たんだもんね。いいよ。私も聞いてもらったし」
一筋の光が夜空の暗闇に飲み込まれた。

「俺が相談したいのは、カトレア様との婚約についてなんだ」
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