赤い手紙

Cooky

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序章

一節 過去

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俺はいちおう高校一年生。宇海那柳斗。
宮崎県の、鷹島光陽高校ってとこに通っている。中学二年までは穏便で普通の生活していた。俺もまあまあ?頭も良く、父の収入も並以上にあった。母は、人がよく友達付き合いも良かった。とても優しい母だった。

しかし、その時は一刻と迫ってきた。

九月の金曜日の夕方。俺はバスケ部だった。後輩と友達とコンビニでたむろって、他愛もない話をして、金曜ロードショウの話を漫才のようにした。餌(コンビニで買った食べ物)がなくなると皆んなは何処かに自然と散らばるのだった。
俺はバッシュの入った肩掛けカバンを背負い、ロードバイクに腰を下ろしてその場を去った。黄色く明るい光を放ち、二階建ての家が手を広げて待っているように見えた。

「ただいま~!」
いつもの挨拶。だが、返事が返ってくることはなかった。さっきの家の明るさは消えていた。
キッチンの横で泣き崩れる母。状況の把握に困る僕。に対してひたすら紙にペンを当てながら何かを書いている父。弟の耳を貫くような泣き声。疲れが心臓麻痺を起こしそうだった。
俺は、二階の自分の部屋にこもった。好きな子からの久々のメールが来た。しかしなぜか手を付ける余裕が持てない。家に入っての三秒の出来事で気分は海底に落ち込んで行った。ベットに横になるが複雑な気持ちでスッキリしない。
父が何か喋った。なにかは、分からなかったが、冷淡でとても低い声だった。それからしばらくして、玄関のドアが閉まる音がした。下からは泣き声しか聞こえない。
1時間ぐらいだっただろうか。下に降りていった。母と弟の姿がない。晩御飯がラップに綺麗に包まれて食卓の上に置いてある。とりあえず風呂に入った。なにも考えられない。風呂から出ると食卓の上に冷え切った晩御飯がある。風呂上がりに丁度いいぐらいだ。ラップの上に付箋が貼ってある。母の字だ。昔から見てきたのですぐにわかった。しかし、震えているのが見てとれる。一言 、

「最後の晩御飯。心を込めて作りました。どうぞ食べてください。」

当然何か分かる訳ではなかった。唯只、心の中にざわめきだけが残っている。
茶色い木箸をとる。小さい頃はあんなに大きかった箸が今では、短いくらいだ。
ラップを取り付箋を上にして横に移した。白ご飯に、大好物のポテトサラダ。
手作りのエビフライとコロッケ。それにスープが付いていた。温かいスープが喉を通るたびに、喉を伝う音が分かる。
お茶を飲むために席を立った。しかし目の前真っ先に白い紙が映っていた。父の濃い筆圧で書かれた手書きの別居願い。両親の指印が付いていた。心拍数が上がる中一つ思い出した。友達の離婚した時の話があった。離婚するためには、別居婚をしたらしい。調べてみると、別居婚は厳密な定義はないけど、平日はそれぞれの家で過ごし、休みである週末だけどちらかが配偶者の所へ行って二人で過ごすということらしい。また、週末に限らず別々に暮らし、週末婚よりももっと夫婦が会う日が少なくなる場合が出てくると書いてあった。一応どちらも籍は入れているのでちゃんとした夫婦であることに違いはないのだという。でも、俺はそうは感じられなかった。別居してる時点で夫婦じゃない気がした。
1人の部屋に、お茶を飲む音がこだまする。
泣こうにも泣けないこの状況で、明日から俺の人生はどうなるのだろうか。心配と不安しかなかった。布団に入って目を瞑る。
昔の思い出が蘇る。母と父と手を繋いで
公園に行った。買い物をして駄々をこねたこともあった。バレンタインデーにチョコを作って母にあげた。小学生は、反抗期で親の言うことは聞かない主義だった。それでも、優しく接してくれる母に心だけは残された。頭をよぎる思い出の数々が俺の目に涙をこぼした。俺は生まれて泣くことは男の恥さらしだと思い泣いたこともなかった。でも、初めて一人で涙をすすった夜が過ぎていった。
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