魔法少女♂とヤンデリオ

嶋紀之/サークル「黒薔薇。」

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ストーカー系狂信者、阿神ケイの場合

①-3※R18

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 それから――しばらくチアキの恋バナで盛り上がり、それが一段落すると話題はケイの片思いに移り、気付けば夕飯の時間になるまで話し込んでいた。夢ヶ丘高校の学生寮では、夕食は、食堂で決まったメニューが給食のように出されるシステムになっている。二人は食堂まで共に行き、人目がある場所でできる話は少ないからと、そこで一旦解散する運びとなったのである。

 ――食事を終えたケイは、上機嫌で自室への帰路を急いでいた。なにせ今日は、ヤンデリオの新しい仲間である八雲チアキと交友を深められたし、互いの恋バナで盛り上がることができた。自身の愛の形が世間一般からズレている自覚はあるケイにとって、これは、とてつもない大事件だったのだ。
「ふっふふーん♪ あーっ、今日は楽しかったな~!!」
 彼は独り言をつぶやきながら自室のドアを開ける。一人部屋であるそこは、一見、殺風景に思えるほど私物が少なく見えていたが――それはあくまでカモフラージュ。魔法により、この部屋の真の姿は隠されているのだ。
「たっだいま~♡ さてさて、俺の神様は、今頃何してるのかなーっと……」
 ケイがパチリと指を鳴らし、この部屋を覆う魔法を解除した瞬間。現れるのは壁一面を覆うモニターと、おびただしい量の盗撮写真。写真やモニターに写っているのは、金髪をオールバックにしたエキゾチックな顔立ちの美中年――元アイドルで、今はシンガーソングライターとして活動しているアーティスト。彼の片思い相手である、歌風コウヤその人であった。
「ああ……コウヤ様っ♡ 今日もめちゃめちゃお美しいぜ……! ふふっ、盗撮と盗聴が捗っちまうな♡♡」
 恍惚とした顔で呟くケイが眺めるモニターには、今まさにリアルタイムの『歌風コウヤ』の姿が――自宅らしき部屋で、下着一枚でくつろぐ姿が映し出されている。
 プライベートな時間だからか、コウヤは、歌手として活動している時よりもだいぶラフな印象の出で立ちだった。いつもビシッとオールバックにしている髪は下ろされ、色っぽい瞳はメガネで隠され、よく見れば無精髭まで生えている。注視しなければ芸能人だとわからないほどに、休日のオッサン感が漂う風貌だった。
『あ~……くそ、新曲思い浮かばねえよう……』
「そっか……コウヤ様、こんどのツアーで新曲出すって言ってたもんな……。何もできねえのが歯がゆいぜ……」
 どうやらコウヤは作曲作業の途中らしく、点きっぱなしのPCには、音楽打ち込み用のソフトが開いていた。肝心の譜面はまっさらで、なにも浮かんでいないような様子だったが。

「しかしホント……闇の魔法様々だよな。寮でも安心してコウヤ様のご尊影を飾れるし、ゆっくり落ち着いて盗聴できるし、なによりバレる心配なくずーっとコウヤ様を拝見できるなんて♡♡ こーなる前は、監視カメラがバレて壊されちまってからしばらく、小型盗聴器くらいしか仕込めなかったもんなぁ~」
『ぶへっくし!! ……誰か俺の噂でもしてたりすんのか?』
「ああっ、コウヤ様がくしゃみを!? 風邪かな、喉痛めてねえか心配だな……。今度送るプレゼントは喉飴にしとくか……、事務所宛より直接送るほうが早いか? でも前みてーに不審物扱いされて捨てられるのはイヤだし……」
 ブツブツと独り言を呟くケイは、己の行動が犯罪であるとわかっている。そのうえで悪びれもせず好きだから仕方ないのだと開き直る、筋金入りのストーカー男なのだ。盗聴に盗撮、事務所や本人の自宅に匿名でプレゼントを送りつけ、時にはこっそり自宅付近を張り込んでいたりもする。歌風コウヤのことを神のように崇めているせいで、『オレみたいなクソ虫をコウヤ様に認識させたくない』とプレゼントも匿名で送りつけているのだが、それが余計に不審者感を加速させている自覚は彼には無かった。

 画面の中の歌風コウヤは、しばらく白紙の楽譜を前に考え込んでいる様子だったが、やがてうんざりした顔でPCをシャットダウンした。
『……はぁ。どーせネタも浮かばねえし……ヤるか!! この時間空いてるヤツいたっけな……』
 ベッドに腰掛け、いそいそとスマホを手にした彼は、メッセージアプリを起動して知人に手当たり次第声をかけている様子だった。ちらりと見えた画面には、『空いてる? 今からヤらね?』『おじさんのマンコ寂しくなっちゃった♡ 誰か慰めてほしーなぁ♡』などと卑猥な文章が書かれている。全てコウヤ本人が今しがた打ち込んだものであり、また、ケイにとっても見慣れた光景だったが、彼は無意識のうちに唇を噛んでいた。
「……コウヤ様。またセフレとヤるのかよ。あんなコウヤ様のカラダしか見てねえバカ男ども、ぜってー釣り合わねえのに……」
『つってもこんな深夜じゃ、昼職のやつは寝てるだろうし……夜職の奴らなら仕事中か。全然既読つかねえし! 仕方ねえ、一人でシコるかぁ~?』
「っ、コウヤ様……♡ 一人じゃないっすよ♡♡ オレも、一緒に……♡」
 諦めた様子で大人のオモチャを――えげつないサイズのディルドと大容量ローション、それに使い捨てオナホールを戸棚から取り出すコウヤを見ながら、ケイも自身のズボンをおろしていた。

 そもそも歌風コウヤという男は、アイドル時代からスキャンダルの多いことでも知られている。素行があまりよろしくないというか、性関係が爛れまくっているのである。
 彼は以前からバイセクシャルだと公言しており、相手の男女や年齢を問わず、ホテルに入っていくところを週刊誌にすっぱ抜かれるくらいはしょっちゅうだ。アイドル事務所をやめて独立したのも、あまりのスキャンダルの多さに事務所側から縁切りされそうになり、ならいっそと先回りして独立することにしたというのがもっぱらの噂である。
 コウヤの長年のファンであるケイも、そのくらいはもちろん承知している。こうして盗聴盗撮をしていれば、彼とセフレとがセックスする現場を盗み聞いてしまったことも何回かある。それでも幻滅するどころか、興奮して、それをズリネタにしているのだから救えない。

 画面の中のコウヤは、ローションをたっぷりまぶした指でやさしく己のケツマンコをほじりはじめている。ケイは、それを食い入るように見つめながら、必死に己のチンポをしごきはじめる。
『ん゛っ♡ やっぱ指じゃ、足りねえ……っ♡ 生ちんぽ欲しいなぁ♡♡』
(はぁ……っ、コウヤ様♡ コウヤ様のオナニーっ♡♡ ケツマン縦割れでエロすぎるぅ♡ ぷっくり腫れてる土手盛りマンコ♡ 見てるだけで射精しちまいそう……っ♡♡)
『あーあっ♡ どっかにいねえかなあっ♡ 呼んだらいつでも来てくれて♡ おじさんのマンコ可愛がってくれる肉ディルドくん♡♡ オモチャもいいけど……っ、やっぱ、人肌ほしい♡ 生チンポしゃぶりてえっ♡♡』
 ぶつぶつと独り言を言いながらも、コウヤは片手に持ったディルドをしゃぶりだした。反対側の手は相変わらずケツマンコをいじめているようだ。
 盗撮されているなど気づくはずもないのに、彼の仕草はまるで、画面の向こうのケイに見せつけて挑発しているかのようにも思えて。誤解だとわかっていながら、ケイの興奮は止まらない。
「あ♡ こ、コウヤさまぁ……っ♡ オレがいるよっ♡ オレなら♡ 都合のいい肉ディルドになれる♡♡ なんでもコウヤさまの命令聞くっ♡ 他の誰より、オレが一番、コウヤさまのこと愛してる……っ♡♡」
 ぐちゅぐちゅと音を立ててチンポを扱きながらも、ケイは、本当にコウヤ自身に手出ししようとは思わない。魔法を使えば彼の部屋に押入ることもできるのに、痕跡すら残さずレイプすることだってできるのにそれをしないのは、彼の中でそれだけコウヤが偉大な存在で、憧れの男だったからだ。
 ケイはまだ学生だし、未成年で、しかもコウヤのファンという立場だ。魔法を使えば証拠隠滅くらい容易いとしても、万が一にでも、慕っている彼を『未成年のファンに手を出した性犯罪者』にするわけにはいかない。自分がストーカーとして警察に突き出されるならともかくと、コウヤの歌手活動の邪魔をしたくない。――そもそも、自分などをコウヤが相手にするとは思えない。そんな思いが重なって、彼は、ただ見ているだけの愛を選んだ。
「コウヤさま……っ、ごめんなさい、コウヤさま♡♡ ただのファンでいられなくてごめんなさいっ♡ 好きになって、ごめんなさい……っ!!」
 謝罪と共に情欲を吐き出す彼の中で、思いは燻り、歪んでいたのだが――彼自身さえそれに気づくことはできなかった。
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