33 / 60
束縛型ヤンデレ・芝里タイチと、豪放磊落彼氏・蒼井ユウゴの場合
②-3
しおりを挟む
――妖精二人が、仲間の妖精たちを見つけてから数日後。彼女たちは無事に仲間を保護し、ノブユキらの通う夢見ヶ丘男子高校への潜入準備を進めていた。
男性に間違われることも多いめけが生徒として潜入し、認識改変の魔法を使えるノコが妖精本来の小さな姿で人形のフリをしてサポートする。その方針は決まったものの、高校の教職員の誰かがユウゴの恋人――つまりヤンデリオの一員であることは確定的で、他にも敵が潜んでいるかもしれない場所だ。
そもそも妖精であるめけとノコは闇の神から狙われる立場でもあるので、とにかく敵に見つからないよう、目立たず迅速に調査をすすめる必要があった。
そのための下準備として、彼女らが実際に潜入する前に、ノブユキとユウゴが手分けして校内に怪しい箇所がないかと調べることになったのだが――。
「……すみません、蒼井さん。お手を煩わせてしまいまして」
「そんな、気にせんでくださいよ。これが俺の仕事なんですから」
用務員としての仕事である清掃の傍ら、さりげなく校内で闇の魔法の気配はないかと探っていた蒼井ユウゴは、とある教員に呼び止められていた。
教室の電球が切れてしまったとかで、備品の場所を確認されたのだが、これも業務のうちだからとそのままユウゴが交換作業もやることにしたのだ。
「先生こそ、お仕事忙しいでしょうに……なにもずっと見とらんでも」
「貴方は慣れていらっしゃるんでしょうが、脚立を使うのに補助役もいないなんて、心配じゃあないですか。事故でもあったら生徒に示しが付きません」
「おっと……そりゃそうだ。おっしゃるとおりで」
なにかあっても魔法で身を庇えばいいと気を緩めていたユウゴは、図星を突かれて苦笑する。親切にも脚立を抑えてくれている教員も笑っていた。
既に放課後だからか生徒の姿はなく、しんとした教室に、ユウゴが作業をする音だけが響いていた。
「……蒼井さん。作業しながらでいいので、聞いてほしいんですが……実は私ね、最近、宝物を無くしてしまいまして」
「……はい?」
ふと、その静寂を破り、唐突に教員は語りだす。
「その……お恥ずかしい限りなんですが。絶対に捨てたりしないと決めて、大事に守っていたはずなのに、ふと目を離した隙にどこかにいってしまったようで。もしやゴミに紛れてしまったのかも、なんて……不安で不安で仕方なくて」
「お、おう。そりゃまた……災難で……?」
呼び止めてきた男性教諭は、ユウゴと歳の頃こそ近かったはずだが、プライベートな会話をするほど親しい仲ではなかったはずだ。少なくともここ数カ月で話しかけられた記憶はない。
怪訝そうに眉をひそめつつ、ユウゴが交換作業を終えた――瞬間。
「でも――ようやく見つけました。こんなところに隠れていたんですねえ、私の、可愛いユウゴ……♡」
「ッッ――!!」
教員の声色が変わった。ユウゴにとって覚えのある、愛おしいはずなのに悍しい、ねっとりとまとわりつくようなあの声だった。
「芝里先生……いや……、タイチ……ッ!!」
「ああ――ああ!! やっと思い出してくれたのですね!! まったく世話の焼ける人だ♡ さあ、私と共に来ていただきますよ…?」
目の前の男――今の今まで『単なる同じ職場の教員』としか認識できずにいた相手が、闇の魔法使いに成り果ててしまった恋人なのだと気づいた瞬間、ユウゴの記憶は一気に戻った。
どうやらまたもや後手に回っているらしいと焦りつつ、すかさず脚立から飛び降り、変身しようと呪文を唱える。
「上等だッ、できるモンならやってみやがれ!! 《サファイアパワー! ミラクル☆――」
「させませんよ?」
しかし、着地の一瞬を狙うように、タイチが掌から鎖を放った。変身していない姿では使えないはずの闇の魔法。予期せぬ攻撃に不意を突かれ、ユウゴは、その身を絡め取られてしまう。
「ぐぅッ……!?」
「ふ、ふふ……ふふふふ!! これが、あの御方の与えてくださった新たな力……! 変身していなくともこれほどなんて!! ああ……なんて、素晴らしい……!!」
禍々しいオーラを放つ鎖は、ユウゴの体に巻き付いて、気力や体力を吸い取っていく。意識を保つこともままならず、次第に、ユウゴの視界がぼやけていった。
「ふふっ♡ それじゃあ……今度こそ一緒ですからね、ユウゴ♡ もう二度と……誰にも邪魔はさせません!! 私達二人だけの愛の園で、ずうっと一緒に暮らすんです……♡♡」
狂気としか言えない笑みを浮かべ、優しく囁く声を聞きながら、ユウゴの意識は闇に飲まれていった。
*
ユウゴが意識を取り戻したのは、見慣れた、恋人の自宅にあるダブルベッドの上だった。タイチが変貌する以前にはしょっちゅう泊まりに来たこともあるし、彼が闇の魔法使いとなってしまってからは、一月近く監禁されていたあの部屋だ。
ユウゴの手足には魔法で編み出された鎖がつけられ、壁から離れられないようになっており、ベッドを取り囲むように巨大な檻が設置されていた。衣服は完全に剥ぎ取られて全裸である。以前は檻のみだったことを考えると、だいぶ、パワーアップした拘束と言えるだろう。
「うぐっ……! あの馬鹿ッ、また、こんなことを……!」
「その馬鹿とは私のことですか? ふふふっ、相変わらず口が悪いですねぇ、ユウゴ♡」
「!!」
ユウゴが悪態をついた途端、空間が歪み、彼一人きりだったはずの場所にタイチ――変身しているので闇の魔法使いデヴォーションと呼ぶべきか――が現れる。
「ッ!! てめぇ……!!」
「そんなに怒らないでくださいよ♡ そもそも、君が逃げたりしなければこんなコトをせずとも済んだのに……」
「おい……タイチ! 俺を監禁してえっつーなら好きにしろッ、だが、その妙ちきりんな力に頼るのだけはやめろ!! 俺は逃げも隠れもしねえ!!」
「おやおや。今まで雲隠れしていた人が何を言うのです? ……どうせ、私のことが嫌になったのでしょう。君も、私から逃げるに決まっている。他の男たちがそうだったように……かつて私の束縛を拒んだように……!」
「だから話を聞けって……!!」
ユウゴがいくら真剣に語りかけても、疑心暗鬼に染まってしまった恋人の心には届かない。タイチは、今にも泣きそうになりながら、歪な笑みを浮かべていた。
「ねえ、ユウゴ。私を愛してくれているなら、この力のことも受け入れてはくれませんか? これさえあれば、私は君を見失うことはない。君が世界中のどこにいようが、誰に心を奪われようが、私の側に留めておける……。もう嫌なんですよ、君が他の誰かに奪われるかもと、あるいは、私に呆れてどこかへ行ってしまうのではと、不安に思い過ごす日々は!!」
「がッ、ぁああ……ッ!?」
タイチの心情に連動するかのように、ユウゴを縛る鎖から、激しい電流が流れてきた。攻撃の意図があるというよりは、感情の昂ぶるまま無意識に発動してしまった魔法のようだ。
苦悶の声を上げながらも、ユウゴの頭の中にあるのは、どうすればこの恋人を元に戻せるのかという一点だけだ。
(この、大馬鹿野郎……!! 俺がおまえに呆れる? 他の誰かに目移りする? ンなことあるわけねぇだろうがッ!! なんでわかってくれないんだ!?)
彼の内心を知る由もないタイチは、上っ面だけの冷たい笑顔を貼り付けながら、淡々と話を進めていく。
「……とはいえ、君がそう簡単に素直になるとは思いません。以前の失敗を繰り返さないためにも……少しばかり、ボスのやり方を真似させていただこうかと思います」
「な、に……? おまえっ、なにを考えて……?」
「簡単なことですよ♡ たとえ君の心が手に入らなくとも……体を支配してしまえば、私から逃げることはできなくなる。安心してください、ちょっとした戯れですから♡」
「ッ!!」
身構えるユウゴにお構いなく、タイチは、その唇にキスをした。それも露骨に性交を思い起こさせるような、強引に舌を絡めて、吸い付いて、彼を蹂躙しようとするディープキスだ。
おまけに、彼はユウゴが抵抗できないとわかっていて、その身体を優しく撫で回していた。じっくりと全身を揉みしだく手付きは慣れていて、二人の仲の深さを感じさせる。
「ん……っ♡ んちゅっ♡♡ あぁ……!! 可愛いですよ、私のユウゴ……♡」
「んぐぅっ♡♡ ……ま、待てっての!! ヤってる場合じゃねえだろ!? 少しは、俺の話を聞いて――」
「ふふっ♡ ずぅっと君に触れたかった……♡ 君がいないせいで長らく禁欲中でしたから、それはもう、大変だったんですよ? はやく、この愛らしい体に触れたいと、どれだけ強く願ったことか……♡♡」
「んぉ゛ッ♡♡ 馬鹿ッ、胸、揉むんじゃねえッ♡♡ こ、こんなんで流されてやると思ったら大間違いだかんな!?」
否定的な言葉とは裏腹に、ユウゴの体は発情し、タイチからの愛撫を悦んで受け入れていた。恋人と離れて欲求不満だったのは、なにもタイチだけではなかったのだ。
(ふ、フザけんなよコイツ……!? 溜まってんのは俺も同じだっつーの!! こちとら、おまえをマトモに戻してやりたくて必死で隠れてたってのに!! っつーか監禁中も全然ヤらせてくれなかったくせに!!)
タイチの指は、肉付きのいい大胸筋を揉みしだき、そのまま腹筋をなぞり、股間をあえて避けて太腿へと伝っていく。じわじわと焦らして快楽を高めるような動きは、いつも、彼がセックスの時に好む責め方で、否応無しにユウゴの発情スイッチがオンになってしまう。
「ふふっ♡ 敵の手で感じてしまうのですか? 正義のヒーローさん?」
「んひぃいっ♡♡ あ、当たり前だッ、馬鹿野郎♡ ひ、久々に、可愛い恋人にカラダ触られて♡ 興奮しねえ男がいるかっつーの……ッ♡♡」
「おや、認めるのですか。まったく、とんだ淫乱ですねえ……♡」
「こ、こんな体にしたのはてめぇだろうがっ!! そっちこそ、余裕ぶってるがチンポビン勃ちだぜ? 俺にハメたくてたまんねぇってツラじゃねえか、早漏野郎!」
戦闘中にそうしてきたように挑発するも、タイチの仮面のような笑みは変わらない。
「挑発には乗りませんよ? 君を直接可愛がって差し上げたい気持ちはあるのですが……そちらに光の魔法がある以上、あまり、隙を見せるわけにもいきませんので」
(クソッ……! ヤッてる最中なら洗脳も緩むんじゃねえかと思ったが……そこまで甘くはねえ、か)
恋人とヤりたかったのも、ついつい挑発的な態度をとってしまうのもどちらも本心ではあったが、今のユウゴの最優先は恋人を闇の神から開放することだ。目論見を見透かされたことに内心舌打ちしていると、タイチが、それすらも計画通りだと言わんばかりに畳み掛ける。
「……とはいえ、私も鬼ではありません。君が私のモノになると誓い、サファイアの妖精をこちらに差し出してくれるならば、以前のように愛してさしあげますよ?」
「は……はぁあっ!? それとこれとは関係ねえだろッ、なんでノコを巻き込むんだ!?」
突然、相棒となった妖精の少女の名前を出され、ユウゴの声にも動揺が滲む。
「何故、と言われましても。あの御方からの御命令ですので……。妖精の力を奪い、あの御方が完全復活をなさるまでは、愛しい人と睦み合うことができない。それが、私に与えられた力のデメリット……あの御方との契約です」
「……なるほどな? どおりで、前回はさっぱり手ェ出してこなかったワケだ」
前回の監禁時、ユウゴが不思議に思い、ついでに不満に感じていたことが、タイチが一切性的接触を行ってこなかったことだった。それが闇の神との契約だとすれば納得だし、事実なら、そこを手がかりにして彼を正気に戻すきっかけが掴めるかもしれない。
荒っぽい態度で聡明さを隠して、彼は問う。
「で? こりゃどういうつもりだ。闇の神との約束破ってまで、俺とスケベなことがシたいってわけか?」
「いいえ? 禁じられているのは、私が君と繋がることのみです。君を責め立てるだけならば、それは、契約違反にはなりません。……あとは、わかりますよねえ?」
「……はぁ!? お、おまっ、まさか!?」
ニヤリとした笑顔に、察しの良い彼は気づいてしまう。タイチは、自身の欲を発散することなく、一方的に自分を快楽漬けにするつもりなのだと。これから自身を襲う責苦を思い、動揺を表に出した様子に、タイチは恍惚とした声を上げた。
「君が私を欲しがるまで……あんな妖精の小娘など捨てて、私にすがりついてくれるまで。たーっぷり可愛がってあげますよ♡ 覚悟してくださいね、ユウゴ……♡♡」
「……ハッ。相変わらず趣味が悪いこったぜ、闇の神とやらはよぉ……!」
相棒を取引に使われた以上、ここで引くという選択肢はユウゴになかった。ノコは、恋人を正気に戻したいという彼の願いを聞き、真摯に協力してくれた相手だ。それも、妖精ゆえに長生きとはいえ、人間に換算するならば十代半ばの少女である。そんな相手を犠牲にして、闇の神の思うつぼになってやるつもりはさらさらない。
「いいぜ……我慢比べといこうじゃねえか。抱かせてくれって泣きついてもしらねぇぞ?」
「フフフ。強気なところも愛くるしいですよ……♡ その余裕もいつまで持ちますかねえ?」
追い詰められた状況の中、挑発的に笑ったユウゴに対して、タイチもまた不敵な笑みを浮かべていた。
タイチがパチリと指を鳴らすと、どこからともなく、不気味に蠢く肉色の触手生物が現れた。うぞうぞと気味の悪い動きをしながら、ソレは、拘束されているユウゴの元へじわじわと距離を詰めていく。
「はっ、なんだよ、その気色悪いのは。んな道具に頼ってねえで、自分で来たらどうなんだ?」
ユウゴの虚勢めいた挑発に、タイチは一切動じることなく微笑む。
「君に触れるのは、全てが終わってからだと決めていますので♡ ああ……安心してください、これは私の鎖と同じ……私の魔法で生み出し、私の意思で動かせる第二の手のようなモノですから。たとえ人でないモノだとしても、他の男に君を触れさせるわけにはいきませんからねえ……♡」
「それをテメェが言うか? ったく、ムカついてんのは俺もだっつの――ッ、ひ、ぁああッ!?」
よくも他の男に洗脳されやがって――と、続けるはずだった言葉は、触手が襲ってきたことにより中断される。
なにやらぬらぬらとした粘液を垂らしたソレは、ユウゴのアナルめがけて触手を伸ばし、いとも簡単に侵入してしまった。
タイチが指揮をするように指を動かせば、それに合わせて、触手はユウゴのナカを蹂躙していく。
「ばッ、いきなり、やめ……っ♡♡ ぐぅうっ♡♡ バカ野郎ッ、そ、そこっ、弱ぇとこ……ッ♡♡」
「ふふふ♡ 君の弱点などお見通しですよ? ココ、優しく押されるのが好きですよねえ……♡」
「んひッ♡♡ ぁ♡ あぐぅうっ♡♡」
タイチの指が動くと同時に、触手が、ユウゴの前立腺をぐりぐりッ♡ と優しく捏ね回す。
目に見える指の動きと、内側で感じる触手の動きとが連動しているせいで、ユウゴは、間接的とはいえ恋人に犯されていることを否応なしに感じてしまった。
「久々だというのに、こんなにすんなり異物を受け入れるなんて……はしたない人だ。一人遊びでもしていましたか? それとも……まさか、他の男と……?」
「ッ、なわけ、ねぇ、だろーが……ッ♡♡」
「どうだか。君は昔から、多情な人でしたから……。……だからこそ、私がこうして捕まえてあげなくてはいけないんです。私を愛してくれるなら……許してくれますよねえ? ね、ユウゴ……♡♡」
「ひぎっ♡♡ ぁ、あぁッ♡ あがぁああ~~ッ♡♡♡」
次第に早くなる触手の動き。全身がビクビク震え、今にもイッてしまいそうになるが、アナルを犯すのとは別の触手がペニスにまとわりつき、コックリングのように根本を締め付けているせいで射精することは叶わない。
(クソッ♡ ケツマン犯されてるせいで♡ 意識が、トびかける……ッ♡♡ 馬鹿タイチっ♡ こんなときばっか丁寧にシやがって……!!)
このまま、彼のペースにのまれてはいけない。以前の監禁の二の舞だ。わかっているのに、ユウゴの体は抵抗する力を失い、タイチの与える快楽に溺れてしまう。
(ぐっ……♡ このままじゃあマズイ! なんとか、突破しねえと……!)
朦朧とする意識をなんとか保ちつつ、ユウゴは、苦しげに目を伏せた――。
男性に間違われることも多いめけが生徒として潜入し、認識改変の魔法を使えるノコが妖精本来の小さな姿で人形のフリをしてサポートする。その方針は決まったものの、高校の教職員の誰かがユウゴの恋人――つまりヤンデリオの一員であることは確定的で、他にも敵が潜んでいるかもしれない場所だ。
そもそも妖精であるめけとノコは闇の神から狙われる立場でもあるので、とにかく敵に見つからないよう、目立たず迅速に調査をすすめる必要があった。
そのための下準備として、彼女らが実際に潜入する前に、ノブユキとユウゴが手分けして校内に怪しい箇所がないかと調べることになったのだが――。
「……すみません、蒼井さん。お手を煩わせてしまいまして」
「そんな、気にせんでくださいよ。これが俺の仕事なんですから」
用務員としての仕事である清掃の傍ら、さりげなく校内で闇の魔法の気配はないかと探っていた蒼井ユウゴは、とある教員に呼び止められていた。
教室の電球が切れてしまったとかで、備品の場所を確認されたのだが、これも業務のうちだからとそのままユウゴが交換作業もやることにしたのだ。
「先生こそ、お仕事忙しいでしょうに……なにもずっと見とらんでも」
「貴方は慣れていらっしゃるんでしょうが、脚立を使うのに補助役もいないなんて、心配じゃあないですか。事故でもあったら生徒に示しが付きません」
「おっと……そりゃそうだ。おっしゃるとおりで」
なにかあっても魔法で身を庇えばいいと気を緩めていたユウゴは、図星を突かれて苦笑する。親切にも脚立を抑えてくれている教員も笑っていた。
既に放課後だからか生徒の姿はなく、しんとした教室に、ユウゴが作業をする音だけが響いていた。
「……蒼井さん。作業しながらでいいので、聞いてほしいんですが……実は私ね、最近、宝物を無くしてしまいまして」
「……はい?」
ふと、その静寂を破り、唐突に教員は語りだす。
「その……お恥ずかしい限りなんですが。絶対に捨てたりしないと決めて、大事に守っていたはずなのに、ふと目を離した隙にどこかにいってしまったようで。もしやゴミに紛れてしまったのかも、なんて……不安で不安で仕方なくて」
「お、おう。そりゃまた……災難で……?」
呼び止めてきた男性教諭は、ユウゴと歳の頃こそ近かったはずだが、プライベートな会話をするほど親しい仲ではなかったはずだ。少なくともここ数カ月で話しかけられた記憶はない。
怪訝そうに眉をひそめつつ、ユウゴが交換作業を終えた――瞬間。
「でも――ようやく見つけました。こんなところに隠れていたんですねえ、私の、可愛いユウゴ……♡」
「ッッ――!!」
教員の声色が変わった。ユウゴにとって覚えのある、愛おしいはずなのに悍しい、ねっとりとまとわりつくようなあの声だった。
「芝里先生……いや……、タイチ……ッ!!」
「ああ――ああ!! やっと思い出してくれたのですね!! まったく世話の焼ける人だ♡ さあ、私と共に来ていただきますよ…?」
目の前の男――今の今まで『単なる同じ職場の教員』としか認識できずにいた相手が、闇の魔法使いに成り果ててしまった恋人なのだと気づいた瞬間、ユウゴの記憶は一気に戻った。
どうやらまたもや後手に回っているらしいと焦りつつ、すかさず脚立から飛び降り、変身しようと呪文を唱える。
「上等だッ、できるモンならやってみやがれ!! 《サファイアパワー! ミラクル☆――」
「させませんよ?」
しかし、着地の一瞬を狙うように、タイチが掌から鎖を放った。変身していない姿では使えないはずの闇の魔法。予期せぬ攻撃に不意を突かれ、ユウゴは、その身を絡め取られてしまう。
「ぐぅッ……!?」
「ふ、ふふ……ふふふふ!! これが、あの御方の与えてくださった新たな力……! 変身していなくともこれほどなんて!! ああ……なんて、素晴らしい……!!」
禍々しいオーラを放つ鎖は、ユウゴの体に巻き付いて、気力や体力を吸い取っていく。意識を保つこともままならず、次第に、ユウゴの視界がぼやけていった。
「ふふっ♡ それじゃあ……今度こそ一緒ですからね、ユウゴ♡ もう二度と……誰にも邪魔はさせません!! 私達二人だけの愛の園で、ずうっと一緒に暮らすんです……♡♡」
狂気としか言えない笑みを浮かべ、優しく囁く声を聞きながら、ユウゴの意識は闇に飲まれていった。
*
ユウゴが意識を取り戻したのは、見慣れた、恋人の自宅にあるダブルベッドの上だった。タイチが変貌する以前にはしょっちゅう泊まりに来たこともあるし、彼が闇の魔法使いとなってしまってからは、一月近く監禁されていたあの部屋だ。
ユウゴの手足には魔法で編み出された鎖がつけられ、壁から離れられないようになっており、ベッドを取り囲むように巨大な檻が設置されていた。衣服は完全に剥ぎ取られて全裸である。以前は檻のみだったことを考えると、だいぶ、パワーアップした拘束と言えるだろう。
「うぐっ……! あの馬鹿ッ、また、こんなことを……!」
「その馬鹿とは私のことですか? ふふふっ、相変わらず口が悪いですねぇ、ユウゴ♡」
「!!」
ユウゴが悪態をついた途端、空間が歪み、彼一人きりだったはずの場所にタイチ――変身しているので闇の魔法使いデヴォーションと呼ぶべきか――が現れる。
「ッ!! てめぇ……!!」
「そんなに怒らないでくださいよ♡ そもそも、君が逃げたりしなければこんなコトをせずとも済んだのに……」
「おい……タイチ! 俺を監禁してえっつーなら好きにしろッ、だが、その妙ちきりんな力に頼るのだけはやめろ!! 俺は逃げも隠れもしねえ!!」
「おやおや。今まで雲隠れしていた人が何を言うのです? ……どうせ、私のことが嫌になったのでしょう。君も、私から逃げるに決まっている。他の男たちがそうだったように……かつて私の束縛を拒んだように……!」
「だから話を聞けって……!!」
ユウゴがいくら真剣に語りかけても、疑心暗鬼に染まってしまった恋人の心には届かない。タイチは、今にも泣きそうになりながら、歪な笑みを浮かべていた。
「ねえ、ユウゴ。私を愛してくれているなら、この力のことも受け入れてはくれませんか? これさえあれば、私は君を見失うことはない。君が世界中のどこにいようが、誰に心を奪われようが、私の側に留めておける……。もう嫌なんですよ、君が他の誰かに奪われるかもと、あるいは、私に呆れてどこかへ行ってしまうのではと、不安に思い過ごす日々は!!」
「がッ、ぁああ……ッ!?」
タイチの心情に連動するかのように、ユウゴを縛る鎖から、激しい電流が流れてきた。攻撃の意図があるというよりは、感情の昂ぶるまま無意識に発動してしまった魔法のようだ。
苦悶の声を上げながらも、ユウゴの頭の中にあるのは、どうすればこの恋人を元に戻せるのかという一点だけだ。
(この、大馬鹿野郎……!! 俺がおまえに呆れる? 他の誰かに目移りする? ンなことあるわけねぇだろうがッ!! なんでわかってくれないんだ!?)
彼の内心を知る由もないタイチは、上っ面だけの冷たい笑顔を貼り付けながら、淡々と話を進めていく。
「……とはいえ、君がそう簡単に素直になるとは思いません。以前の失敗を繰り返さないためにも……少しばかり、ボスのやり方を真似させていただこうかと思います」
「な、に……? おまえっ、なにを考えて……?」
「簡単なことですよ♡ たとえ君の心が手に入らなくとも……体を支配してしまえば、私から逃げることはできなくなる。安心してください、ちょっとした戯れですから♡」
「ッ!!」
身構えるユウゴにお構いなく、タイチは、その唇にキスをした。それも露骨に性交を思い起こさせるような、強引に舌を絡めて、吸い付いて、彼を蹂躙しようとするディープキスだ。
おまけに、彼はユウゴが抵抗できないとわかっていて、その身体を優しく撫で回していた。じっくりと全身を揉みしだく手付きは慣れていて、二人の仲の深さを感じさせる。
「ん……っ♡ んちゅっ♡♡ あぁ……!! 可愛いですよ、私のユウゴ……♡」
「んぐぅっ♡♡ ……ま、待てっての!! ヤってる場合じゃねえだろ!? 少しは、俺の話を聞いて――」
「ふふっ♡ ずぅっと君に触れたかった……♡ 君がいないせいで長らく禁欲中でしたから、それはもう、大変だったんですよ? はやく、この愛らしい体に触れたいと、どれだけ強く願ったことか……♡♡」
「んぉ゛ッ♡♡ 馬鹿ッ、胸、揉むんじゃねえッ♡♡ こ、こんなんで流されてやると思ったら大間違いだかんな!?」
否定的な言葉とは裏腹に、ユウゴの体は発情し、タイチからの愛撫を悦んで受け入れていた。恋人と離れて欲求不満だったのは、なにもタイチだけではなかったのだ。
(ふ、フザけんなよコイツ……!? 溜まってんのは俺も同じだっつーの!! こちとら、おまえをマトモに戻してやりたくて必死で隠れてたってのに!! っつーか監禁中も全然ヤらせてくれなかったくせに!!)
タイチの指は、肉付きのいい大胸筋を揉みしだき、そのまま腹筋をなぞり、股間をあえて避けて太腿へと伝っていく。じわじわと焦らして快楽を高めるような動きは、いつも、彼がセックスの時に好む責め方で、否応無しにユウゴの発情スイッチがオンになってしまう。
「ふふっ♡ 敵の手で感じてしまうのですか? 正義のヒーローさん?」
「んひぃいっ♡♡ あ、当たり前だッ、馬鹿野郎♡ ひ、久々に、可愛い恋人にカラダ触られて♡ 興奮しねえ男がいるかっつーの……ッ♡♡」
「おや、認めるのですか。まったく、とんだ淫乱ですねえ……♡」
「こ、こんな体にしたのはてめぇだろうがっ!! そっちこそ、余裕ぶってるがチンポビン勃ちだぜ? 俺にハメたくてたまんねぇってツラじゃねえか、早漏野郎!」
戦闘中にそうしてきたように挑発するも、タイチの仮面のような笑みは変わらない。
「挑発には乗りませんよ? 君を直接可愛がって差し上げたい気持ちはあるのですが……そちらに光の魔法がある以上、あまり、隙を見せるわけにもいきませんので」
(クソッ……! ヤッてる最中なら洗脳も緩むんじゃねえかと思ったが……そこまで甘くはねえ、か)
恋人とヤりたかったのも、ついつい挑発的な態度をとってしまうのもどちらも本心ではあったが、今のユウゴの最優先は恋人を闇の神から開放することだ。目論見を見透かされたことに内心舌打ちしていると、タイチが、それすらも計画通りだと言わんばかりに畳み掛ける。
「……とはいえ、私も鬼ではありません。君が私のモノになると誓い、サファイアの妖精をこちらに差し出してくれるならば、以前のように愛してさしあげますよ?」
「は……はぁあっ!? それとこれとは関係ねえだろッ、なんでノコを巻き込むんだ!?」
突然、相棒となった妖精の少女の名前を出され、ユウゴの声にも動揺が滲む。
「何故、と言われましても。あの御方からの御命令ですので……。妖精の力を奪い、あの御方が完全復活をなさるまでは、愛しい人と睦み合うことができない。それが、私に与えられた力のデメリット……あの御方との契約です」
「……なるほどな? どおりで、前回はさっぱり手ェ出してこなかったワケだ」
前回の監禁時、ユウゴが不思議に思い、ついでに不満に感じていたことが、タイチが一切性的接触を行ってこなかったことだった。それが闇の神との契約だとすれば納得だし、事実なら、そこを手がかりにして彼を正気に戻すきっかけが掴めるかもしれない。
荒っぽい態度で聡明さを隠して、彼は問う。
「で? こりゃどういうつもりだ。闇の神との約束破ってまで、俺とスケベなことがシたいってわけか?」
「いいえ? 禁じられているのは、私が君と繋がることのみです。君を責め立てるだけならば、それは、契約違反にはなりません。……あとは、わかりますよねえ?」
「……はぁ!? お、おまっ、まさか!?」
ニヤリとした笑顔に、察しの良い彼は気づいてしまう。タイチは、自身の欲を発散することなく、一方的に自分を快楽漬けにするつもりなのだと。これから自身を襲う責苦を思い、動揺を表に出した様子に、タイチは恍惚とした声を上げた。
「君が私を欲しがるまで……あんな妖精の小娘など捨てて、私にすがりついてくれるまで。たーっぷり可愛がってあげますよ♡ 覚悟してくださいね、ユウゴ……♡♡」
「……ハッ。相変わらず趣味が悪いこったぜ、闇の神とやらはよぉ……!」
相棒を取引に使われた以上、ここで引くという選択肢はユウゴになかった。ノコは、恋人を正気に戻したいという彼の願いを聞き、真摯に協力してくれた相手だ。それも、妖精ゆえに長生きとはいえ、人間に換算するならば十代半ばの少女である。そんな相手を犠牲にして、闇の神の思うつぼになってやるつもりはさらさらない。
「いいぜ……我慢比べといこうじゃねえか。抱かせてくれって泣きついてもしらねぇぞ?」
「フフフ。強気なところも愛くるしいですよ……♡ その余裕もいつまで持ちますかねえ?」
追い詰められた状況の中、挑発的に笑ったユウゴに対して、タイチもまた不敵な笑みを浮かべていた。
タイチがパチリと指を鳴らすと、どこからともなく、不気味に蠢く肉色の触手生物が現れた。うぞうぞと気味の悪い動きをしながら、ソレは、拘束されているユウゴの元へじわじわと距離を詰めていく。
「はっ、なんだよ、その気色悪いのは。んな道具に頼ってねえで、自分で来たらどうなんだ?」
ユウゴの虚勢めいた挑発に、タイチは一切動じることなく微笑む。
「君に触れるのは、全てが終わってからだと決めていますので♡ ああ……安心してください、これは私の鎖と同じ……私の魔法で生み出し、私の意思で動かせる第二の手のようなモノですから。たとえ人でないモノだとしても、他の男に君を触れさせるわけにはいきませんからねえ……♡」
「それをテメェが言うか? ったく、ムカついてんのは俺もだっつの――ッ、ひ、ぁああッ!?」
よくも他の男に洗脳されやがって――と、続けるはずだった言葉は、触手が襲ってきたことにより中断される。
なにやらぬらぬらとした粘液を垂らしたソレは、ユウゴのアナルめがけて触手を伸ばし、いとも簡単に侵入してしまった。
タイチが指揮をするように指を動かせば、それに合わせて、触手はユウゴのナカを蹂躙していく。
「ばッ、いきなり、やめ……っ♡♡ ぐぅうっ♡♡ バカ野郎ッ、そ、そこっ、弱ぇとこ……ッ♡♡」
「ふふふ♡ 君の弱点などお見通しですよ? ココ、優しく押されるのが好きですよねえ……♡」
「んひッ♡♡ ぁ♡ あぐぅうっ♡♡」
タイチの指が動くと同時に、触手が、ユウゴの前立腺をぐりぐりッ♡ と優しく捏ね回す。
目に見える指の動きと、内側で感じる触手の動きとが連動しているせいで、ユウゴは、間接的とはいえ恋人に犯されていることを否応なしに感じてしまった。
「久々だというのに、こんなにすんなり異物を受け入れるなんて……はしたない人だ。一人遊びでもしていましたか? それとも……まさか、他の男と……?」
「ッ、なわけ、ねぇ、だろーが……ッ♡♡」
「どうだか。君は昔から、多情な人でしたから……。……だからこそ、私がこうして捕まえてあげなくてはいけないんです。私を愛してくれるなら……許してくれますよねえ? ね、ユウゴ……♡♡」
「ひぎっ♡♡ ぁ、あぁッ♡ あがぁああ~~ッ♡♡♡」
次第に早くなる触手の動き。全身がビクビク震え、今にもイッてしまいそうになるが、アナルを犯すのとは別の触手がペニスにまとわりつき、コックリングのように根本を締め付けているせいで射精することは叶わない。
(クソッ♡ ケツマン犯されてるせいで♡ 意識が、トびかける……ッ♡♡ 馬鹿タイチっ♡ こんなときばっか丁寧にシやがって……!!)
このまま、彼のペースにのまれてはいけない。以前の監禁の二の舞だ。わかっているのに、ユウゴの体は抵抗する力を失い、タイチの与える快楽に溺れてしまう。
(ぐっ……♡ このままじゃあマズイ! なんとか、突破しねえと……!)
朦朧とする意識をなんとか保ちつつ、ユウゴは、苦しげに目を伏せた――。
0
あなたにおすすめの小説
番を拒み続けるΩと、執着を隠しきれないαが同じ学園で再会したら逃げ場がなくなった話 ――優等生αの過保護な束縛は恋か支配か
雪兎
BL
第二性が存在する世界。
Ωであることを隠し、平穏な学園生活を送ろうと決めていた転校生・湊。
しかし入学初日、彼の前に現れたのは――
幼い頃に「番になろう」と言ってきた幼馴染のα・蓮だった。
成績優秀、容姿端麗、生徒から絶大な信頼を集める完璧なα。
だが湊だけが知っている。
彼が異常なほど執着深いことを。
「大丈夫、全部管理してあげる」
「君が困らないようにしてるだけだよ」
座席、時間割、交友関係、体調管理。
いつの間にか整えられていく環境。
逃げ場のない距離。
番を拒みたいΩと、手放す気のないα。
これは保護か、それとも束縛か。
閉じた学園の中で、二人の関係は静かに歪み始める――。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
夫と息子に邪険にされたので王太子妃の座を譲ります~死に戻ってから溺愛されても今更遅い
青の雀
恋愛
夫婦喧嘩の末に置き去りにされた妻は、旦那が若い愛人とイチャついている間に盗賊に襲われ、命を落とした。
神様の温情により、10日間だけこの世に戻った妻と護衛の騎士は、その10日間の間に心残りを処分する。それは、娘の行く末と……もし、来世があるならば、今度は政略といえども夫以外の人の妻になるということ。
もう二度と夫と出会いたくない彼女は、彼女を蔑ろにしてきた息子とも縁を切ることを決意する。
生まれかわった妻は、新しい人生を強く生きることを決意。
過去世と同じ轍を踏みたくない……
お兄ちゃんができた!!
くものらくえん
BL
ある日お兄ちゃんができた悠は、そのかっこよさに胸を撃ち抜かれた。
お兄ちゃんは律といい、悠を過剰にかわいがる。
「悠くんはえらい子だね。」
「よしよ〜し。悠くん、いい子いい子♡」
「ふふ、かわいいね。」
律のお兄ちゃんな甘さに逃げたり、逃げられなかったりするあまあま義兄弟ラブコメ♡
「お兄ちゃん以外、見ないでね…♡」
ヤンデレ一途兄 律×人見知り純粋弟 悠の純愛ヤンデレラブ。
邪神の祭壇へ無垢な筋肉を生贄として捧ぐ
零
BL
鍛えられた肉体、高潔な魂――
それは選ばれし“供物”の条件。
山奥の男子校「平坂学園」で、新任教師・高尾雄一は静かに歪み始める。
見えない視線、執着する生徒、触れられる肉体。
誇り高き男は、何に屈し、何に縋るのか。
心と肉体が削がれていく“儀式”が、いま始まる。
初夜に暴言を吐いた夫は後悔し続ける──10年後の償い【完結】
星森 永羽(ほしもりとわ)
恋愛
王命により、辺境伯ロキアのもとへ嫁いだのは、金髪翠眼の美しき公爵令嬢スフィア。
だが、初夜に彼が告げたのは、愛も権限も与えないという冷酷な宣言だった。噂に踊らされ、彼女を「穢れた花嫁」と罵ったロキア。
しかし、わずか一日でスフィアは姿を消し、教会から届いたのは婚姻無効と慰謝料請求の書状──。
王と公爵の怒りを買ったロキアは、爵位も領地も名誉も奪われ、ただの補佐官として生きることに。
そして十年後、運命のいたずらか、彼は被災地で再びスフィアと出会う。
地位も捨て、娘を抱えて生きる彼女の姿に、ロキアの胸に去来するのは、悔恨と赦しを乞う想い──。
⚠️本作はAIの生成した文章を一部に使用しています。
上司、快楽に沈むまで
赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。
冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。
だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。
入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。
真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。
ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、
篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」
疲労で僅かに緩んだ榊の表情。
その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。
「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」
指先が榊のネクタイを掴む。
引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。
拒むことも、許すこともできないまま、
彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。
言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。
だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。
そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。
「俺、前から思ってたんです。
あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」
支配する側だったはずの男が、
支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。
上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。
秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。
快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。
――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる