異世界の力で奇跡の復活!日本一のシャッター街、”柳ケ瀬風雅商店街”が、異世界産の恵みと住民たちの力で、かつての活気溢れる商店街へと返り咲く!

たけ

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第八章 異世界での新たな出会い

第112話 旅立ち

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~ルミナ視点~

 太郎さんのおかげで、私は自信に満ちていた時の姿へと戻ることができた。
 
 ”すまほ”⁉に映る自分の姿を見て、はっきりと分かった。彼には確信があったのだ。私を元に戻せるという確信が...。だからこそ、迷いなく手を差し伸べてくれたんだ。

 「何もいらない」

 「何も求めない」

 あの時、あんなふうに言っていたけれど、この姿を見れば、きっと手のひらを返して求めてくるはず。だったらいいわ。抱きたいのなら好きなだけ抱いて。

 身体でしか返せない。それが私に残された唯一の手段。けれど、この男の着ている服や彼が語るもうひとつの国。そのすべてに、私は強く惹かれている。未知の世界。触れてみたい。知りたい。

 だから、私を抱き潰すがいいわ。その代わり、私も利用させてもらわ。これなら安心できる。少なくとも...理解できるもの。


◇◇◇◇◇◇◇◇◇

 私に対して、何も求めてこない。まさか...本当に?本当に何もいらないの?

 対価も、見返りも、欲望も...何も?

 私を抱きたいんじゃないの?

 そう思っていた。そうであるはずだとずっと信じていた。でも、この人は違う。こんな人見たことが無い。こんな人、見たことが...無い。

 何も求めてこないなんて、ユランとおかみさんぐらい。

 ううん、ユランやおかみさんは、私に対してどこか罪の意識を抱いている気がする。その気持ちが優しさに変わって、私に向けられている...そんなふうに感じる。

 けれど、この人からは...。太郎さんからは、そういったものがまるで感じられない。

 あんなにも、周りの人から後ろ指をさされていた私。

 その痛みも、恥も、悔しさも...。

 太郎さんとの出会いで、一瞬にして消え去ってしまった。

 何もなかったかのように、すべてが静かに溶けていった。まるで、私が最初から傷ついていなかったかのように...。そんな錯覚すら覚えるほどに。

 でも、この人と離れたら...。

 また、表面上の希薄な、下心丸出しの人たちに囲まれて私は過ごすの?

 太郎さんは損得勘定を抜きにして、私の回復だけを願って治してくれた。

 こんな人とは、もう二度と出会えないと思う。

 だから、だからこそ...。

 私は太郎さんに着いていきたい。

 私の知らない世界を知っている太郎さんに。損得勘定なしに接してくれるあなた。純粋に見返りを期待せずに助けてくれた...そんなあなたと一緒に歩きたい。

 同じ歩幅で同じ道を...。

 ここで太郎さんと離れたら、きっと後悔する。二度と出会えない。だから...。


◇◇◇◇◇◇◇◇◇

~太郎視点~

 俺はルミナを見た。どうしよう。すごく怯えた目で俺を見ている。何か間違えたかな...?どうしよう。

 「店長、ルミナさんが怯えているよ」

 俺を後ろから優しく抱きしめながらシュリンが口をはさんだ。

 「ダメだよ。ああいう時は『お前を治してあげたんだから、身体をさしだせ!股を開け!』って言うの。そうじゃなきゃ理解できないから。ねえ、カレン?」

 「その方が安心します」カレンは頷きながら、冷静に言葉を続ける。

 「あんなに綺麗な女性なんですから。見返りに身体を要求されることは、むしろ自然なことだと理解できると思います」

 ...そんなものなのか。それが、この世界サーマレントの常識なのか。でも、俺はいらない。本当に洋服を買いに来た時に、出会っただけだし。おかみさんの話を聞いたら、俺が勝手に助けてあげたいと思った。だだそれだけ。なのに、どうしてこんなことになってしまったんだ?

 彼女ももしかしたら...友三爺さんが言っていた俺に助けを求めていた者なのか...?

 俺が何も言わないでいると、カレンは咳払いをひとつした後...。

 「逆に何も見返りを求められない方が、心配になります。そんな人に会ったことが無いから。だからこそ、そのギャップで太郎様に惚れてしまうのです。見返りの世界に住んでいた者なら、住んでいた者ほど...」

 そう言いながら、カレンは俺の背中を人差し指で、ゆっくりと上から下へとなぞった。

 「一体、何人の妻をお作りになるおつもりですか?程々になさらないとベッドの上で、お亡くなりになりますよ?」

 妖艶な笑みを浮かべながら、俺の首筋に熱を帯びたキスを落としてきた。

 ...うーん、よく分からない。

 でも、早くここから離れよう。ジュード達も待たせてしまっているだろうし。


◇◇◇◇◇◇◇◇◇

~ルミナ視点~

 「ルミナさん。もう僕らは行くね。元の姿に戻ってよかったね。さようなら。おかみさんにもよろしく言っておいてね」

 太郎さんはそう私に言い残すと、待たせている仲間のもとへ向かって、迷いなく歩き出した。 彼の背中が遠ざかっていく。振り返ることもなく。

 ...嘘。

 本当に行っちゃうの?
 
 このまま何も言わなければ、彼はそのまま旅立ってしまう。

 傍にいたいって言わなきゃ! 一緒に違う世界を見せてって、言わなきゃ...!

 でも...迷惑じゃないのかしら?何も対価を求めないと言った人に、強引に「連れて行って!」なんて...。

 言いづらい。言えない...。迷惑をかけたくない...。

 好きだから...。好きになっちゃったから...。

 でも、言わなきゃ...!

 彼の背中が、涙で滲んで見えなくなっていく。声を出さなきゃ!言わなきゃ!言わないと絶対に後悔する。こうかい...する。

 ...ねぇ、待って! ねえぇ...!


◇◇◇◇◇◇◇◇◇

 ドスドスドスドスドス!

 地面を蹴る足音が、張り詰めた空気を一気にかき消した。振り返ると、夕日を背にしたおかみさんが大きな布を肩口に抱えて駆けてくる。

 額に汗を浮かべながら、おかみさんは太郎さんの足元に大きな袋を置いた。

 ガシャッ!

 「ちょっとおまち!あんな凄いことされて、手ぶらで帰すわけにはいかないよ!」

 息を弾ませながら、おかみさんは額に浮かんだ玉のような汗を、びたびたになった布で拭いている。

 「私に挨拶もなしに立ち去るなんて、寂しいったらありゃしないよ!さあ、これを持っていっておくれよ!」

 太郎さんは、差し出された袋の中身を見て首をかしげながら尋ねた。

 「...何これ?」

 袋の口が開かれ、中にはたくさんの貨幣が詰まっていた。太郎さんはすぐに「要らない」と言って返そうとしたけれど、おかみさんはその動きを読んでいたかのように、声を張り上げた。

 「ルミナ~!こっちにおいで!」

 呼ばれた理由は分からない。でも私は、太郎さんに治してもらった左腕で、溢れた涙をぬぐいながら慌てて二人のもとへと駆け寄った。

 あの袋の中身を私は知っていた。おかみさんがハイパーポーションを買うために、少しずつ貯めてくれていたお金。

 おかみさんは私の腕をしっかりと握り、太郎さんの前へと私を押し出した。

 「ハイパーポーションをルミナに買おうと思って、少しずつ貯めていたお金だよ。どうせあんたのことだ、その代金だって言ったって受け取ってくれないんだろ?」

 太郎さんは「うん、いらない」とだけ言い、静かに立ち去ろうとした。

 その態度に、少し苛立ったような表情を浮かべながら、おかみさんが声を上げた。

 「だから...ちょっとお待ちって!それでも足りないのは分かっているけど、ルミナを連れて行ってくれないかい?このは外の世界が見たいんだよ!」

 さらに私を太郎さんの前にぐっと押し出しながら、おかみさんは言葉を重ねた。お金は、私を押し付ける迷惑料...らしい。

 「こんな可愛い娘を一人旅なんかさせられないよ!もう怪我させるのはごめんだよ!あんたと一緒にいればすぐに治してくれるだろうし、安心なんだよ」

 おかみさんは私に、「ねえ、ルミナ♡」と言ってウィンクをしてきた。

 「で、でも、太郎さん、迷惑じゃないのかしら...」

 そう言いながら、おかみさんの顔をちらりと見た瞬間、空気がピンと張り詰めた。


 バチーン!


 「行きたいのかい、行きたくないのかい!はっきりしなよ!」

 おかみさんは私の背中を思い切り叩いた。い、痛い。痛いけど、いい流れになった...かも?もしかしたら、太郎さんとずっと一緒にいられるかもしれない...!

 ここで自分の思いを伝えなきゃ!!

 「行きたい!行きたい!太郎さん!私を連れて行って!何でも言うこと聞くから!外の世界が見たい。あなたと...一緒に旅がしたい!」

 私は...溜まっていた感情を一気に吐き出した。
 
 「だ...そうなんだよ。頼むよ。太郎さん」

 おかみさんは、太郎さんに向かって深々と頭を下げた。

 おかみさん...。私の為に、頭を下げてくれて...。

 太郎さんは、私とおかみさんのやり取りを静かに見つめていた。そして、深く頷きながら言った。

 「じゃあ、ルミナも一緒に行こうか。今晩は峠のお宿”カエン”に皆で泊まる予定だからね」

 太郎さんがそう言ってくれた瞬間、胸が熱くなった!嬉しくて、顔が自然とほころんでしまう。

 「荷物をまとめてきます!」と伝えて、私は急いで自分の部屋へと向かった。

 部屋に戻っても、心は落ち着かなかった。荷物といっても服くらいしかない。それでも、何度も確認してしまう。太郎さんと一緒に旅に出られるなんて、夢みたい!


◇◇◇◇◇◇◇◇◇

 戻ると、太郎さんは皆に向かって「新しく仲間に加わった、ルミナだ!仲良くしてあげてね」と声をかけていた。その言葉が、胸にじんわりと染みた。

 「荷物は洋服ぐらいなんで」と言って、私は太郎さんの元へ戻った。

 すると、おかみさんが私を端へ呼び寄せた。

 「ルミナ。本当に今までありがとうね。ごめんよう...本当にユランのことで、あんたには辛い思いをさせちまって...」

 おかみさんは、申し訳なさそうな顔で私を見つめていた。

 「でも、最後にあんたに恩返しができたよ。早く太郎さんの妻になっちまいなよ。まだまだ...狙ってる者もいるようだよ」

 そう言いながら、おかみさんは太郎さんのそばにいる人たちをじっと見つめた。

 「そんな...私なんて、そんな対象に見てもらえないよ。すごく綺麗な人ばっかりだもん...」

 「恋する乙女は弱気になるからね。あんたは本当に綺麗な子だよ。心も体も。身を挺してユランをかばってくれたんだから。自信をお持ちよ。今晩、襲っちまいなよ!」

 「ちょっと、おかみさんったら...!」

 思わず笑ってしまった。嬉しくて、照れくさくて、でも心の奥が温かくなった。

 そのままの笑顔で、私は太郎さんの元へ駆け寄った。

 「太郎さん、よろしくお願いします。そして皆さんも、どうぞよろしくお願いします!」

 これから始まる旅に、不安がないわけじゃない。 でも、それ以上に胸を満たしていたのは、期待だった。 抑えきれないほどの高鳴りが、私の胸の奥で脈打っていた。
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