異世界の力で奇跡の復活!日本一のシャッター街、”柳ケ瀬風雅商店街”が、異世界産の恵みと住民たちの力で、かつての活気溢れる商店街へと返り咲く!

たけ

文字の大きさ
24 / 121
第二章 アーレントと友三爺さん

第24話 友三の頼み事

しおりを挟む
 バロンとエメリアから、”飲みつぶの教育係になった経緯は、友三爺さんに危ないところを救われたからだと教えてもらった。バロンとエメリアは”飲みつぶ”の前身である”葡萄酒が、お好きでしょう?”のメンバーだった。

 ”葡萄酒が、お好きでしょう?”は、猿族のランリー、サイ族のバラン、エルフのエメリアとユリー、そしてドワーフのバロンからなる5人組のグループだった。

 ”葡萄酒が、お好きでしょう?”、略して”葡萄酒好き”たちは、某貴族から「人国の教会内情を把握して欲しい」と依頼を受けた。しかし、それは”葡萄酒好き”内の二人のエルフを奴隷に陥れようとする卑劣な罠であった。

 まんまと罠にはまり、仲間が次々と捕まる中、バロンは自身の身をテイしてエメリアだけでも逃がそうとしたが、その思いも空しく捕まってしまった。全員が奴隷の首輪をはめられそうになったその時、窮地を救いに現れたのが友三爺さんであった。

「不届き者たちが、恥を知れー!」

 自分達とは面識のない人族の男性が、ラフな服装で突然目の前に現れた。その表情は怒りに満ち、鬼神そのものであった。

 友三爺さんは無理やり”葡萄酒好き”を捕まえた者たちに憤慨のこもった声で叫ぶと、疾風迅雷のごとく敵の真っただ中に駆け込んだ!

 そして友三爺さんは...たった一人で約30人の敵を全員叩きのめした。その姿は、友三爺さんと離れて久しいバロンとエメリアのまぶたに、今もしっかりと焼き付いている。


 ◇◇◇◇◇◇◇◇◇

 後で分かったことだが、エメリアとユリ―のあまりの美しさに私欲に走った教会幹部が、ある貴族に二人を手にいれる様にと依頼をした。その依頼を元に、悪徳奴隷商会が動いたものであった。

 サーマレントは相変わらず物騒だな。教会幹部って...。聖書読んで欲望抑え込めよ...。

 友三爺さんが見ず知らずの”葡萄酒好き”を救い出したことと、バロンが自身の身を挺してエメリアを救い、そこから恋が始まったことが、吟遊詩人の歌集”バランとエメリア、二人の愛の大全集”、13,14話に書かれているらしい...。

 ”バランとエメリア、二人の愛の大全集”のマニアと自称するカーシャ曰く、”葡萄酒好き”を助け出した時の友三爺さんは、エプロン一つで暴れまわったらしい。ああ、あの友三爺さんが愛用していたブッチャーエプロンだよね。防具ではないけどな。

 更にカーシャは、その当時の出来事を俺により詳しく教えたそうだったが、その話は、別の機会にしてもらった。

 するとカーシャは頬を赤く染め、「次もあって下さるのですね...」と可愛らしく呟いたのを、俺は聞き逃さなかった。

 本当に手を出しそうになる自分がいる。気を付けねば。相手は大人びた外見をしていても、まだ14歳...。


 ◇◇◇◇◇◇◇◇◇

 話を戻すと、二人のエルフが連れ去られそうになった事件以来、”葡萄酒好き”は友三爺さんを慕い、一緒に行動するようになったそうだ。

 その後、エメリアとバロンは友三爺さんから”もっと強くなれる器じゃ”と、このサーマレントの地でみっちりと指導を受けた。いわば友三爺さんと師弟関係となった。

 友三爺さんのお手伝いとして、オークやミノタウロスの狩りに行くのは勿論、時には魚や、松茸、岩山を登って岩ノリの採取まで行った。さらに、神への信仰心を忘れ私利私欲にかられた神父たちへの制裁にも一緒に出向いた。

 友三爺さんと共に過ごした時間は、二人にとって貴重な物であった。冒険だけではなく、日本の婚姻衣装である着物を仕立ててもらい、それを着て結婚式を挙げたこともの大切な思い出でとなった。

 結婚式で友三爺さんから撮ってもらった”写真”を、二人は大切にしまってあると教えてくれた。

 ただ、そんな優しくて大切な時間は、三人に取ってあっという間に過ぎてしまった。


 ◇◇◇◇◇◇◇◇◇

 友三爺さんがいよいよ狩りが困難となり、二度とこのサーマレントに戻って来ないと知らされた時、二人は友三爺さんから一つのお願い事を託された。

 「お前たちが嫌でなければ、アーレント一家の護衛と、護衛の育成を任されて欲しい。もちろんアーレント一家には内緒でな。予算は、わしがこちらの世界で得た財宝を全部お前らに渡す」と友三爺さんは二人に向かって深々と頭を下げた。

 以前の様にどんなに魔力で身体を補っても、オーク一匹倒すのがやっととなってしまった。そして、無理がたたり、これ以上魔力を体内で吸収できない体になってしまったようだ。

 どうやら太郎と違って、細胞の自動修復能力が乏しかったようだ。

 「もうこの世界には|来ないつもりじゃ」と寂しそうに二人に伝えた。

 だが友三爺さんとしたら、この世界で世話になったアーレント一家や孤児院の事がどうしても気になり、”葡萄酒好き”に頼んだようだ

 二人は「財宝はいらない。おっしゃられたことはきちんと守ります。ですから、私たちに頭を下げないで下さい!」と言ったが、それでも友三爺さんは、二人に頭を下げ、無理やり財宝を渡した。この財宝は二人の手によって孤児院や貧困層を支援する団体に、今でも”友三基金”として定期的に寄付をしている。

 そんな友三爺さんを今でも慕っているバロンとエメリアも、今回の件に対して、特別な思いがこみ上げていた。

 全滅の危機に現れた太郎は、友三の導きと感じ、友三に対する慈悲の心をより深く味わうことになった。

 そのため、カーシャとの仲を取り持ちつつも太郎に友三が地球でどんな人生を送ったか、どんな店を持っていたか、墓はどこか、などなど、会話の片隅で太郎にさり気なく聞いた。

 そんな話で盛り上がっている中、会場のドアが大きな音をたてて開いた。

 バタァァァァァァン!!

 何ごとかと思い全員が振り返ると、そこには執事と使用人に肩を支えられ、ドアの前で荒い息をしながら立っている男性がいた。

 ダイスさんであった...。
しおりを挟む
感想 14

あなたにおすすめの小説

異世界召喚でクラスの勇者達よりも強い俺は無能として追放処刑されたので自由に旅をします

Dakurai
ファンタジー
クラスで授業していた不動無限は突如と教室が光に包み込まれ気がつくと異世界に召喚されてしまった。神による儀式でとある神によってのスキルを得たがスキルが強すぎてスキル無しと勘違いされ更にはクラスメイトと王女による思惑で追放処刑に会ってしまうしかし最強スキルと聖獣のカワウソによって難を逃れと思ったらクラスの女子中野蒼花がついてきた。 相棒のカワウソとクラスの中野蒼花そして異世界の仲間と共にこの世界を自由に旅をします。 現在、第四章フェレスト王国ドワーフ編

【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜

一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m ✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。 【あらすじ】 神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!   そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!  事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます! カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。

ちっちゃくなった俺の異世界攻略

ちくわ
ファンタジー
あるとき神の采配により異世界へ行くことを決意した高校生の大輝は……ちっちゃくなってしまっていた! 精霊と神様からの贈り物、そして大輝の力が試される異世界の大冒険?が幕を開ける!

異世界転生特典『絶対安全領域(マイホーム)』~家の中にいれば神すら無効化、一歩も出ずに世界最強になりました~

夏見ナイ
ファンタジー
ブラック企業で過労死した俺が転生時に願ったのは、たった一つ。「誰にも邪魔されず、絶対に安全な家で引きこもりたい!」 その切実な願いを聞き入れた神は、ユニークスキル『絶対安全領域(マイホーム)』を授けてくれた。この家の中にいれば、神の干渉すら無効化する究極の無敵空間だ! 「これで理想の怠惰な生活が送れる!」と喜んだのも束の間、追われる王女様が俺の庭に逃げ込んできて……? 面倒だが仕方なく、庭いじりのついでに追手を撃退したら、なぜかここが「聖域」だと勘違いされ、獣人の娘やエルフの学者まで押しかけてきた! 俺は家から出ずに快適なスローライフを送りたいだけなのに! 知らぬ間に世界を救う、無自覚最強の引きこもりファンタジー、開幕!

『急所』を突いてドロップ率100%。魔物から奪ったSSRスキルと最強装備で、俺だけが規格外の冒険者になる

仙道
ファンタジー
 気がつくと、俺は森の中に立っていた。目の前には実体化した女神がいて、ここがステータスやスキルの存在する異世界だと告げてくる。女神は俺に特典として【鑑定】と、魔物の『ドロップ急所』が見える眼を与えて消えた。  この世界では、魔物は倒した際に稀にアイテムやスキルを落とす。俺の眼には、魔物の体に赤い光の点が見えた。そこを攻撃して倒せば、【鑑定】で表示されたレアアイテムが確実に手に入るのだ。  俺は実験のために、森でオークに襲われているエルフの少女を見つける。オークのドロップリストには『剛力の腕輪(攻撃力+500)』があった。俺はエルフを助けるというよりも、その腕輪が欲しくてオークの急所を剣で貫く。  オークは光となって消え、俺の手には強力な腕輪が残った。  腰を抜かしていたエルフの少女、リーナは俺の圧倒的な一撃と、伝説級の装備を平然と手に入れる姿を見て、俺に同行を申し出る。  俺は効率よく強くなるために、彼女を前衛の盾役として採用した。  こうして、欲しいドロップ品を狙って魔物を狩り続ける、俺の異世界冒険が始まる。

前世は最強の宝の持ち腐れ!?二度目の人生は創造神が書き換えた神級スキルで気ままに冒険者します!!

yoshikazu
ファンタジー
主人公クレイは幼い頃に両親を盗賊に殺され物心付いた時には孤児院にいた。このライリー孤児院は子供達に客の依頼仕事をさせ手間賃を稼ぐ商売を生業にしていた。しかしクレイは仕事も遅く何をやっても上手く出来なかった。そしてある日の夜、無実の罪で雪が積もる極寒の夜へと放り出されてしまう。そしてクレイは極寒の中一人寂しく路地裏で生涯を閉じた。 だがクレイの中には創造神アルフェリアが創造した神の称号とスキルが眠っていた。しかし創造神アルフェリアの手違いで神のスキルが使いたくても使えなかったのだ。  創造神アルフェリアはクレイの魂を呼び寄せお詫びに神の称号とスキルを書き換える。それは経験したスキルを自分のものに出来るものであった。  そしてクレイは元居た世界に転生しゼノアとして二度目の人生を始める。ここから前世での惨めな人生を振り払うように神級スキルを引っ提げて冒険者として突き進む少年ゼノアの物語が始まる。

外れスキル【アイテム錬成】でSランクパーティを追放された俺、実は神の素材で最強装備を創り放題だったので、辺境で気ままな工房を開きます

夏見ナイ
ファンタジー
Sランクパーティで「外れスキル」と蔑まれ、雑用係としてこき使われていた錬金術師のアルト。ある日、リーダーの身勝手な失敗の責任を全て押し付けられ、無一文でパーティから追放されてしまう。 絶望の中、流れ着いた辺境の町で、彼は偶然にも伝説の素材【神の涙】を発見。これまで役立たずと言われたスキル【アイテム錬成】が、実は神の素材を扱える唯一無二のチート能力だと知る。 辺境で小さな工房を開いたアルトの元には、彼の作る規格外のアイテムを求めて、なぜか聖女や竜王(美少女の姿)まで訪れるようになり、賑やかで幸せな日々が始まる。 一方、アルトを失った元パーティは没落の一途を辿り、今更になって彼に復帰を懇願してくるが――。「もう、遅いんです」 これは、不遇だった青年が本当の居場所を見つける、ほのぼの工房ライフ&ときどき追放ざまぁファンタジー!

処理中です...