異世界の力で奇跡の復活!日本一のシャッター街、”柳ケ瀬風雅商店街”が、異世界産の恵みと住民たちの力で、かつての活気溢れる商店街へと返り咲く!

たけ

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第六章 エルメス奴隷商会と獣人奴隷

第72話 子の刻の話し合い

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 夜の12時少し前、静寂が商店街を包み込む。ユリーとの待ち合わせ場所は、古びた暖簾ノレンが目印の”タコマンボウ”。

 昼間の賑わいが嘘のように、夜の商店街はひっそりと静まり返っている。風俗関連の店が無いためか、午前0時に差し掛かろうとする商店街は人影もまばら。街灯の淡い光が路面のアスファルトを照らし、遠くから聞こえる猫の鳴き声が静寂を一層際立たせる。

 ユリーとの待ち合わせ場所である”タコマンボウ”は、そんな商店街の一角にひっそりと佇んでいる。店内から漏れる暖かな光が、夜の冷たい空気を和らげているようだ。

 ガラガラガラ~

 ”閉店”と書かれた下げ札がぶら下がっている扉を気にせず、「岩ちゃん、こんばんわ~」と言いながら扉を開け、暖簾をくぐって中に入る。扉のキシむ音が静かな夜の空気に溶け込んでいく。

 この扉は友三爺さんが通い詰めた頃から変わらない。木目が擦り切れており、古びた取っ手が手に馴染む。

 友三爺さんが”タコマンボウ”に来た時も、こんな風に入って来たのかな...。

 この店には、友三さんが足しげく通っていた時代から変わらないものがたくさんある。友三さんとの思い出が詰まった場所だ。


◇◇◇◇◇◇◇◇◇

 天空と大五郎は、お袋が床に就いたのを確認してから、そっと俺の部屋に引き入れた。一人と一匹は、まるで長い旅路の果てにたどり着いた安住の地で身体を休めるかのように、ぐっすりと眠りについた。

 人間の身体になって初めて感じる”眠い”という感覚に、天空は心から喜んだ。そして、俺の部屋に着くなり、まるで重い荷物を下ろしたかのように、そっと瞼を閉じた。

 天空は、満面の笑顔を浮かべながら寝ている。その表情は、見ているこちらまで幸せな気持ちになる。大五郎も、まるで”だれパンダ”のように、無防備なうつ伏せで短い手足を伸ばして気持ちよさそうに寝息を立てている。

 たぶん...朝方前には帰って来れるとは思うが、何かあったら俺に念話で伝えてねと源さんに頼んで、タコマンボウに向かう。源さんは眠そうな目をこすりながらも、「あいだわん!」と元気よく返事をしてくれた。

 本当に頼りになる黒豆しばだ。


◇◇◇◇◇◇◇◇◇

 俺が”暖簾をくぐって”タコマンボウ”の店内に入ると、ユリーはすでにカウンター席でワインを楽しんでいた。

 ユリーは暖かそうなウールのクリームホワイトのタートルネックセーターを身にまとい、その上にキャメル色のロングコートを優雅に羽織っていた。

 そして、ダークグレーのスリムフィットパンツが彼女の引き締まったスタイルを一層際立たせ、足元にはブラックのレザーアンクルブーツがアクセントを加えていた。

 彼女のシックな装いは、美しい美貌をさらに引き立て、まるで一枚の高級な絵画のようだ。

 美人て奴は...何を着ても絵になるものだ。

 ユリーに見とれていると、「三代目、座って下さい」と、彼女が自分の横のカウンターチェアーを後ろに引いた。

 「太郎、なんか食べるか?」と、”タコマンボウ”の店長である岩ちゃんが気さくに話しかけてきた。岩ちゃんの声は温かく、まるで長年の友人のような親しみを感じさせる。こんな夜中に店を開けてくれていることなど、まったく気に留めていないようだ。

 「なんか余っていれば欲しいけど、わざわざ作るならいらないよ」と岩ちゃんに伝えた。

 店を空けてくれているだけでもありがたいことなのに、今から何か作ってもらうのは気が引ける。

 しかし、岩ちゃんは「余っている鮭とご飯でチャーハンなら作ってやるよ」と言ってくれた。そして、にっこりと笑いながら「俺も食いたいからな!」と付け加えた。

 「じゃあ、鮭チャーハンとビールを頼むよ」と伝えると、岩ちゃんは「あいよ!」と威勢よく応え、その声が店内に響いた。


◇◇◇◇◇◇◇◇◇

 そんな俺と岩ちゃんのやり取りを、チーズとハムをつまみにワインを飲みながら微笑んで見つめるユリー。

 少し傷んだテーブルと椅子、年季の入った店内。どことなくくすんだ雰囲気が漂う空間でも、ユリーの輝きは色あせない。本当に何度も言うけど、絵になるよな...。

 ユリーをまたまたぼーっと見つめていると、彼女がふと「さて、三代目...」と話しかけてきた。そうだった、ユリーに話があると呼ばれて、俺は“タコマンボウ”に来たんだ...。
 
 どんな話だ⁉怒られる内容でなければいいのだが...。心配が募るが、ユリーの柔らかな微笑みが俺の不安を少し和らげてくれた。

 しばらくしてから、ユリーは...。
 
 「三代目、この前のイベントお疲れさまでした。大盛況に終わりましたね。お見事でした」と優しく微笑みながら俺に伝えてきた。その声には、心からの称賛と尊敬が込められていた。

 「あ、あれはユリーや柴さん、それにみんなの協力があったからこそだよ...」

 まさか褒められると思っていなかったので、顔が赤くなり、余計に照れくさくなってしまう。

 「いえ、そんなことはございません。みんなさんの気持ちを一つにまとめたのは三代目の力があったからこそです。その証拠に、商店街の皆さんだけでなく、リンカさんや優ちゃん、ジョイフルの皆さんも、イベントが終わった今も変わらず商店街の力になって下さっています」

 ユリーは少し間を置いて、長い脚をゆっくりと組み直した。その仕草は優雅で、美しい舞を見ているかのようだった。

 ジョイフルは商店街から少し離れた場所にあるが、営業が終わった明け方には商店街の清掃を手伝ってくれる。以前は敬遠されがちだった古参のメンバーたちとも仲良くなり、えいさんや寅さんも、「初めておかまクラブってもんを体験したが、もっと若いうちから行っておけばよかった」と笑っていた。

 えいさんやマリーママの顔が頭に浮かぶ中、「はいよ、ビールだ!」と岩ちゃんがビールと枝豆を持ってきてくれた。その元気なかけ声に、現実世界へと引き戻された気がする。


◇◇◇◇◇◇◇◇◇

 ぼーとしていたのをごまかすために、ビールを一口飲んだ後、枝豆をつまんでいると、ユリーが話を再開させた。

 「さらに、山岩高度医療センターからは、"どすこい弁当"と"貴婦人弁当"の発注が毎日50食ずつあります。しかも向こうがわざわざお弁当を取りに来てくれるので、とても助かります」と言った。

 そう、優ちゃんがうちで働いている云々を抜きに、”どすこい弁当”を食べた山岩理事長が「大変美味しかった」と言って決まったらしい。何でも、職員の福利厚生の一環として半額補助を付けて販売しているらしく、飛ぶように売れているという。

 まあ、”どすこい弁当”を患者さんに販売したら、カロリーオーバーになるから絶対無理だろうな。

 ユリーの言葉を聞きながら、ビールの冷たさと枝豆のほのかな塩気を感じつつ、優ちゃんがパパとママにお弁当を勧めてくれたことに感謝した。

 本当にありがたい話で、毎日10時半になると根津精肉店前に配送車がやってくる。うちの商品以だけではなく、田中寿司のちらし弁当やベーカリーミンミンのパンも売店に並べてくれる。

 どれも好評らしい。

 リンカは自身のラジオ番組”Wonderful Day”の中で、”リンカの突撃、風雅商店街”というコーナーを立ち上げ、風雅商店街の魅力を紹介している。

 まあ、いわゆる街ロケだ。

 リンカは「風雅商店街、全部の店を制覇するんだ!」と意気込んで、放送ごとに1店舗ずつ詳しく紹介している。前回の放送では、寅さんのお店、”フルーツパーラー海老蔵”で楽しそうに果物の紹介をしていた。

 寅さんはリンカにデレデレとなり、店の高級な果物をお土産に持たせようとしたが、その様子を見ていた奥さんの”きりさん”と放送中にもかかわらず言い争いになっていた...。

 あの後、大丈夫だったのだろうか...。


◇◇◇◇◇◇◇◇◇

 確かに、リンカや山ちゃん、それに優ちゃんのパパやママ、さらにジョイフルの面々との絆がイベントを通して深まった。いや、もしかすると、自分が気づいていないだけで、もっと多くの人々との絆が増しているのかもしれない。

 様々な要素が重なり合って、商店街はこれまでに感じたことのない活気で満ち溢れている。

 瀬風雅商店街では、SMRから卸された新鮮で美味しい肉や魚を求める人々が増えており、その食材を使ったオリジナル料理を提供する店で楽しむお客様も増えている。

 また、”鍛冶職人、抜刀少女AYANO”のテナントショップも好評で、他県からも多くのファンが訪れる。

 これで廃ビルの跡地に複合型アミューズメントパークが建てば、一気に“柳ケ瀬風雅商店街”の復活に近づくだろう。

 だが...。

 確かに、商店街に活気が戻り、多くのお客が訪れるようになったのは嬉しいことだ。しかし、それに伴い大きな懸念材料が生じている。

 それは...深刻な働き手の不足だ。

 そんな俺の気持ちを見透かすように、ユリーは俺の目を見つめながら「商店街全体で働き手が足りていませんよね」と断言した。

 以前にもましてお客様が大勢訪れるようになり、対応する商店街全体の従業員が圧倒的に不足している。うちの店でも配達要員をもう一人雇いたいぐらいだ。

 寅さんのフルーツパーラーや喫茶まちなか、ベーカリーミンミン、それに田中寿司も従業員の補充を検討しているようだ。

 ただ、今は働き手を確保するのが非常に難しい時代。人材を集めるのは容易ではなく、切実な問題となっている。

 現状、商店街で働く人手が足りていない。今後、SMRが手掛けるアミューズメント施設が建設される予定だが、このままではもっと人手が足りなくなるだろう。

 だけどな...。

 俺たち...特にSMRや根津精肉店には秘密が多い。このため、お金を積んで解決する問題でも無いし、限度がある。

 信用できる、口の堅い人材をできるだけ多く集める必要がある。

 となると...どこから人材を集めてくるかが問題となってくる。

 お金を積んで、口止めをしても、情報が漏れるのは一瞬だしな。

 うーん...。

 当初の予定通り、商店街に来るお客さんの数は増えた。しかし、今度はそれを迎え入れる側の人手が足りなくなってしまった。皮肉なことに、商店街に活気が戻ったことで新たな問題が生まれてしまった。

 今まで軽快に食べていた枝豆を口に運ぶ手が、いつの間にか止まっていた。


◇◇◇◇◇◇◇◇◇

 そんな俺の様子を見て、ユリーが「SMRから人材を派遣する案も考えましたが、それよりももっと良い方法が見つかりました。三代目だからこそ可能な案です」と言ってきた。

 まるで、この展開を予測していたかのように話しかけてくる。

 ユリーの表情にはどこか余裕がある。岩ちゃんも同様だ。

 2人は今日、俺にこれから話す内容を提案するためにこの場を作ったのだろう。

 しかし、”俺だから可能な方法”とは何なのだろうか?

 だが、秘密を共有できる者たちを雇えば、もっと大胆な展開が可能となるはず...。

 それにしてもこの枝豆、本当に美味しいな...。これもサーマレント産なのかな?

 俺が枝豆に夢中になっていると、「お話は少し変わりますが、三代目は魚や豚や牛を生きたままアイテムボックスに入れて異世界から運んできますよね?」とユリーが確認するかのように尋ねてきた。

 「そうだよ。ユリー―や岩ちゃんだから言うけど、魔法で願えば大体のことはできるよ。壊れたモノの修復も可能だし」

 そう言ってビールを一口飲むと、岩ちゃんが「はいよ、鮭チャーハンお待ち!」とチャーハンを持ってきた。そしてテーブルに置くと同時に、「そうそう、この前太郎に壊れた椅子や皿、友三様が愛用していたひび割れたグラスまで直してもらって...。本当に嬉しかったよ」と満足そうに言った。

 岩ちゃんの言葉を聞いたユリーは、嬉しそうな表情を浮かべて「三代目、でしたら...回復魔法なども得意ですか?」と尋ねてきた。

 どこか体調のすぐれないところでもあるのかと思い、「どこか悪いところでもあるなら治そうか?」と尋ねた。するとユリーは「ありがとうございます、三代目。私は元気ですよ」とにこやかに微笑んで返してきた。その流れから、バロンの足を回復した時の話をした。

 俺がバロンの傷を治した話を聞いたユリーは、「それならぜひ、お話したいことがあります」と言ってきた。

 「三代目、人材確保において一ついい妙案がございます。この案が実現すれば、柳ヶ瀬風が商店街の人材確保の問題だけでなく、雇われる側の者たちにも希望や未来を与えることができます。ですから三代目、奴隷、犯罪奴隷をサーマレントで買いましょう!」

 はぁ...⁉ゲホ、ゲホゲホゲホ!

 驚きすぎて食べていた鮭チャーハンが気道に入ったのか、むせてしまった。

 しまった!むせた拍子に咳込んで、ユリーの近くに米粒を飛ばしてしまった...。

 し、しかし突然ユリーは...何てことを言い出すんだ...?

 なんか...とんでもない話になった。奴隷を買う...?しかも犯罪奴隷を...。  

 犯罪奴隷って、罪人...だよな?

 そんな奴隷を雇って大丈夫なのか?商店街の商品を根こそぎ持ってかれてしまわないか?

 いやいやその前に、突然襲い掛かってきそうだが...?

 ゴクの話し合いは...まだまだ続くようだ。
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